めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Skyfire / Timeles Departure

タイムレス・ディパーチャー

タイムレス・ディパーチャー

スウェーデンメロディックデスメタルバンド Skyfire / Timeles Departure をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 クサメロデスということと、Skyfireという愉快な名前で知ってたが、聞いたのは初めて。最近Fleshgod Apocalypseで華美なデスメタル聞いてたからいけるかと思って買ってみたよ。

2.内容

 2001年リリースの1stフルで、Hammmerheart Recordsからのリリースなのだが、手持ちはKing Recordsからのボーナストラック(デモ3曲)付き日本盤です。Abyss Studioって聞いたことあるような…。

 あれやね、2000年代前半の北欧っぽいサウンドやね。クリアでスッキリした綺麗めなメタルサウンドで、ボーカルこそデスメタルのそれだが、演奏はSonata Arctica(1st)やPowerquestとかのパワーメタル勢みたいではないか?キーボードが支配的で、流麗で壮大なメロディーを大量に配したメロディックデスメタル。ギターリフやドラムは軽めでスピードも遅めであるため、攻撃性よりメロディーと楽曲重視のドラマティックなスタイルのように感じられます!メロディーの質としては、Children of Bodom(1st~2nd)のようなクラシカルな雰囲気とは違って、もっと郷愁感だったり土着感を感じるメロディーですね。KALMAHまでは泥臭くはないにしても、Wintersunの1stみたいな感じはあるな。キラキラしてて実に結構。変則拍子やテンポチェンジなんかも交えつつで楽曲はいろいろ手が込んでいる。次作以降はプログレッシブな方向に向かいそうな雰囲気もあるね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 シンセキラキラのメロディックデスとして優秀!悪い意味ではないんだけど、バンド名含めこのB級感がいいよね。

4.どのような人に推奨するか

 シンセキラキラな明るいChildren of Bodomです。多分今ならお安く手に入ると思いますよ。これは500円くらいだったような…。

体験記:大観・春草・玉堂・龍子 ―日本画のパイオニア―(山種美術館)

体験記シリーズ。「大観・春草・玉堂・龍子 ―日本画のパイオニア―」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 先日円山応挙店に行ったことで、日本画への興味が湧いていた。展覧会予定で本展示を見つけ、会期ギリギリ(10/22)で行ってみた。あと、山種美術館に行ったことが無かったので、新しい美術館に行ってみたかった。

2.内容

 山種美術館って、山崎種二さんが作ったから山崎だったんですね…。それはさておき、やってきました山種美術館。当日は台風20号温帯低気圧になった)の接近によりかなりの雨模様だったが、バスを駆使してどうにか到着。昼ごはん食べてなかったのでカフェでご飯を食べようかと思ったけど、ご飯ものがにゅうめんしかなかった。

 タイトルの通り、19世紀~20世紀の日本画壇で活躍した横山大観菱田春草川合玉堂川端龍子の4名を中心に置いた企画展。多分だけど、もともとこの美術館が所蔵している作品も多かったと思う。大観・春草の"朦朧体"と呼ばれる筆致の作品群や、スケールの大きな屏風絵、西洋美術が日本に入り込んだ後の日本画の追求、といった要素を楽しんできた。
 玉堂のキャプションにあったんだが、日本画の不自由さに不満を覚えつつ、制限された世界の中で西洋美術の表現手法含め取り入れた作品を作っている感が良かった。『山雨一過』なんて色遣いや景色が印象派の風景画みたいだなと思いつつ、それでもやっぱり日本画として成り立っているなと。日本画ってどーも白黒・水墨みたいなイメージがあるんだが、今回の展示で見た絵はカラフル…と言っても、多色というわけではなくて、特定の一色に強い印象を残すものが多かった気がする。大観なら"緑青"や太陽の赤だったり、海の青だったり、紅葉だったり…その対比に美しさを感じた。
 しかし、太平洋戦争の時期も含むわけだが、この時期にのんびり絵を描いてられたんだろうか…?明治前半生まれのような人たちだから徴兵はされなかったかもしれないが、疎開とかしながら描いていたのかしら。

 美術館自体は地下1Fワンフロアで小さめ。1時間程度で回れるコンパクトな展示で、人も少なかったので快適に鑑賞できた。場所も渋谷・恵比寿からやや離れていてアクセスもいいとは言い難いのだが、それは仕方ないね。日本画の展示はもっと見てみたいですなー。勉強したい。ちなみに、音声ガイドは今回つけなかったのだが、特に不自由は感じなかったかな。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★ー
 ちょうど疲れない程度のボリューム感で、楽しく回れた!

4.どのような人に推奨するか

 会期が10/27で終わってしまうが、日本画に興味ある人は行ってみて。

Ex.ギャラリー

外観

唯一撮影可能だった作品

Adversarial / Death, Endless Nothing and the Black Knife of Nihilism

Death, Endless Nothing & the B

Death, Endless Nothing & the B

カナダのブラック/デスメタルバンド Adversarial / Death, Endless Nothing and the Black Knife of Nihilismをレビュー。 タイトル長いので当然iTunesからのコピペ。

1.作品を選んだ理由

 EPを2重買いしたことの反省。こっちは前から持ってた。Amazonにも登録があるということは、メジャーやな。

2.内容

 2015年リリースの2ndフルアルバムで、手持ちのはDark Decentからリリース。ランニングタイムは37分で、この界隈では一般的。別記事で紹介するEPが27分なので、やっぱりあんまり変わらないジャンというイメージ。聞き疲れするのでこのくらいがちょうどいい。

 音楽的にはEPとさして変わりません。ブラスト全開で勢いよく奏でられるダークな雰囲気を宿したブラッケンドデスメタル。ボーカルと攻撃性は確かにBlashpmey的なWar感もあるんだが、パワーコードをかき鳴らすだけでなくMorbid Angel/Incantation/Hate Eternal的な邪悪でリチュアル(儀式的な)雰囲気を持ったサウンドがやはり特徴である。刻みリフは少なめで、分散和音やトレモロによる怪しいリフが目立つので、ドラムはクソ速くて高速パートは多いものの、ブルータルさよりもリチュアルさが勝っている。そこが「ブラッケンド」と言われる部分でもあるかな。基本的には前作EPと同じ方向性なのだが、前作ではまだ荒々しかったサウンドに整合間が出てきたのと、ダークなリフがより一層目立つようになったというのがポイントかな。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 うーんどっちもいいけど。EPの方がイイかも。

4.どのような人に推奨するか

 どちらかと言えばブルータル派は前作、邪悪なデスメタル好きは本作かな。敢えて分けるならというだけのことで、49:51か51:49かくらいの差しかない気もするがね。

QuizKnock / QuizKnockファンブック

QuizKnockファンブック

QuizKnockファンブック

QuizKnockファンブックのレビューです。

1.作品を選んだ理由

 10/20のイベントにて入手したての新刊です。記事と動画は大半はカバーしてるつもりのいち視聴者。

2.内容

 2019年クラーケンさんからのリリース。以前のオフィシャルブックは"QuizKnockというwebメディア"にフォーカスした本であったと思うが、今回はYouTubeを通じてより明確に見えてきた"ライター個人"にフォーカスした書籍になっている。前回はオフィシャルブック、今回はファンブックということで、本当にファン向けの本となっている。

 まずはライター個人のプロフィール。身長、誕生日、靴のサイズなどのパーソナルデータが並ぶ。YouTubeメイン出演の7名プラス山森が大きめに紹介され、後には現ライター陣が続く。残念ながら載っているメンバーは限定的。"弾"の高橋、神話のyoshida、チョパンダース小林、ほんまかいな科捜研コジマなどはいない。ワイ、コジマファンなんだが…。以前記事を書いていた水上・鶴ちゃんもいない。あと多分卒業生も載っていない感じかな?そしてなぜかノースリーブの宮原先生…奈良は暑いということか?メンバー紹介の他にも写真はいっぱいでファンには嬉しい作り。ただ、個人的にはYouTubeメンツは別にYouTubeで見れるので、普段顔出ししないライター陣のことをもっと取り扱ってほしかった気もする。イベントによると「書きたい人が書く」という形式だったとか、yoshida氏が書いてないことにオグラくんが怒ってたとかなんとか。個人的には、そのあとに続くオフィス紹介が、2ページしかないわりに結構生活感が想像できてよかった。ちゃんとしたオフィスなんですねぇ。

 続いてはQuizKnock立ち上げの歴史と、YouTubeの全動画振り返り。歴史の方は、経緯もさることながらPV推移やチャンネル登録者数の推移が面白い。初めから高PV数を稼いでいるのが凄い…。動画振り返りについては、企画者演者の観点からのコメントが興味深い。ほんとに全動画コメントしてるから読むのが大変なボリューム。これはすげぇや。コメントしてるのは伊沢ふくら2名のみなんだけど、神(河村)のコメントも見たかった。

 あとは対談ページ。なぜか山本×渡辺対談…理由はほかのメンバーはオフィシャルブックで対談しててこの組み合わせがないから、というのと、2人の仲がいいから、らしい(イベントより)。まぁ対談してますね、という内容。私は渡辺氏(うじ)好きです。「まぁ日本人町作りましたからね。」
 続いては伊沢ふくら×はなおでんがんの対談。よくコラボしてるし、納得の人選ではある。12,000字及ぶ大ボリュームで、これもまじめにチャンネルのブランディングや動画のプロデュースについて語っていて面白い。この後、例の夏合宿をやったみたいだね。
 最後にカルタ(山本が罰ゲームで作った50万再生記念のあれ)がおまけに付いてます。切り取って遊ぼう。クイズは幕間に過去問ミニクイズと各ライターからの超難問がいくつかあるだけで、メインではない。そんな感じ。
   なお、イベント入手なので伊沢ふくらのサイン入り。本が本体価格1400円でイベント3000円なので、まぁお値打ちでしょう。イベントは過去のものに比べるとやや年齢層高めで落ち着いた感じで良かったとのこと。チケット転売禁止、本人認証等の効果かもしれない。チケットは倍率10倍という話も聞くが、よく当選したもんだ。なお、年末に読売ランドで1,000人規模での単独イベントを予定しているらしい。続報は追って。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★――
 スタンダードなファンブック。何度も読み返すタイプの本ではないかも知れないが、相応のボリュームだし公式故の情報がいっぱいで宜しいかと。ライター陣のプロフィール掲載はもう少しやってほしかった。

4.どのような人に推奨するか

 クイズファンというよりは、(特にYouTubeの)QuizKnockファン向け。極めてタイトル通り。

5.ギャラリー

ライブタオルっぽいやつ 今治

サイン

以前のイベントのことも書いてるよ

metal-metal-slime.hatenablog.jp

Adversarial / Prophetic Plain of Abyssal Revelation

Prophetic Plain of Abyssal Revelation

Prophetic Plain of Abyssal Revelation

カナダのブラック/デスメタルバンド Adversarial / Prophetic Plain of Abyssal Revelationをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 こないだこのバンドの作品買ったら、既に持ってるやつだった。反省として書く。

2.内容

 2011年リリースのEPで、手持ちのはDark Decentからリリースのデジパック盤。…MatallumにはEPとあるんだが、EPと言っても27分30分弱の内容。フルアルバムのランニングタイムが30分前後が平均的なこのジャンル界隈では、フルアルバムと呼んでもよさそうな内容だと思う。ここでいうジャンルというのは、BlashpemyやArchgoat系のノイジーでラウドな1st Wave Black Metalの流れを汲む小汚いブラック・デスメタルのことを指しています。

 実際、まさしくそのジャンルの枠内で語ってよさげな内容。RAWでややハイピッチなスネアドラムによる突撃高速ブラストに加えてクラッシュシンバルを鳴らしまくるドラムが曲を引っ張る。ブルータルデスメタル的なテクニカルさがあって、これが結構良い。ボーカルは汚い濁声型デスヴォイスで、やっぱりBlasphemyっぽい。まあ同郷のカナダですし。ギターリフはこの手の音楽にしては手が込んでいるというか、低音でゴリゴリノイズ発しているだけではなくて、メロディを紡いで見せたり分散和音を用いた怪しいリフを使ってみたり、結構作曲や雰囲気作りに気を使っている印象がある。そこが先に挙げたバンドとの違いかな。あとブラストが速い。スローパートは少なめ(最後の曲だけはスローでダークなIncantation的楽曲をやっているが)。というか、演奏上手いよね。
 音質こそ生々しい暗黒系のデスメタルのそれを感じさせるが、演奏やリフだけなら一種のブルータルデスメタルとして聞いてもおかしくないぞよ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 結構いいぞ。

4.どのような人に推奨するか

 ブラッケンドデスメタルと呼ばれるバンド好きは手に取ってみてくだされ。ブルデス好きにも推奨できる音だと思うよ。

Rush / 2112

2112

2112

カナダのロックバンド Rushの2112をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Rush全作シリーズ。表題曲はかなり聴いた。

2.内容

 1976年リリースの4th。Mercuryからのデジタルリマスター盤。「もっと売れる曲を書けや。売れなかったらこれで終わりやぞ。」と脅されたRushが、なぜか大作主義をさらに推し進めた結果出来てしまった20分の表題曲を含む彼らの出世作

 #1 "2112" は素晴らしい出来でめっちゃ聞いた。舞台は人類が宇宙で暮らすようになって久しい西暦2112年、主人公はRed Star Federationという連合国家の一惑星(多分これが地球)に住んでいて、そこでは「寺院」が絶対的な権力を持って領民を統治している。主人公たちは管理された社会に何も疑問を抱かず、ある意味平和に暮らしているのだが…というところから始まる7Partから成る組曲。うーん、これは全部解説してしまおう。

 Part1 "Overture"はインスト。ここから続くPart7までの組曲の各パートを構成するモチーフやリフを詰め込んだ、まさしく序曲の役割を果たす曲。ドライブ感のあるギターと、多くのキメで非常に盛り上がる。曲終盤の不思議なギターメロディはチャイコフスキーの"序曲1812年"から採られているらしい。インストと言ったが、ラストを飾る一説"and the Meek shall inherit the Earth(そして敬虔なものたちが地球を継承するだろう)"はPart1に含まれる。
 Part2 "Temples of Syrinx"は、寺院視点の曲で彼らによる「素晴らしく平等な」管理社会が語られる、ハイトーンシャウトとヘヴィなリフで構成されたハードロック曲。先にいっておくと、基本的に刺々しいハイトーンで歌うパートは寺院視点で、そうでない柔和なトーンのパートの場合は主人公視点である。
 Part3 "Discovery"はタイトルの通り、主人公が洞窟で「触れると音を出す不思議な未知の道具」を発見し、この道具が奏でる音色に魅了された主人公がみんなに自慢しよう!と思いいたるまでの話。まあ、この道具というのはギターです。ギターをチューニングし、弾き始め、弾き語りをするといったところを表現したアコースティックな楽曲。主人公ギター覚えるの早くない???ギターの音を初めて聞く主人公が語る音の表現が美しくてすごく好き。”notes that fall gently like rain..."。
 Part4 "Presentation"。続いて、主人公は寺院にてこのギターのすばらしさを力説するも、しかし神父たちはにべもなくこれを否定し「こんな余計なおもちゃのせいで昔の人類は滅んだ。馬鹿な考えは捨てろ。」と一蹴される。ここでは主人公視点と寺院視点が交互に登場し、その歌い分けは実に見事。2回目のコーラスが終わった後に、急なテンポチェンジにOvertureのリフと性急なギターソロと焦燥感を煽るパートが登場するのだが、寺院が「この痴れ者を追い出せ!」と兵士をけしかけ、主人公が抵抗するような雰囲気が感じられる。
 Part5 "The Oracle:Dream"。神託ですね。失意のうちに自宅に帰った主人公は、その夜夢を見る。ずっと以前に滅んだという昔の人類は、まだどこかで生きていて、地球を取り戻そうとしている。シンバルのチョークとキメ全開のリズミック且つメロディックなこのパート、私は大好きなんだが、なぜかライブ盤ではこのパートが飛ばされる…。"I stand a top of spiral stair, the oracle confronts me there"のところ、神託的な厳かさと前向きな希望と力強さが同居していてとても良い。
 Part6 "Soliloquy"ではちょっと時間が飛んだのか、おそらく反乱に失敗したと思われる主人公が、気づいてしまった管理社会の歪みを打ち倒せないまま、ベッドで静かに息を引き取ると思しき場面が描かれる。マイナーで悲しいメロディーを歌い上げるパート。自分としては主人公はここで死亡したと思っているのだが、どうなんでしょうか。"My life blood spills over..."だもの。
 そしてPart7 "Grand Finale"、これもインスト。Overtureにはなかったスピード感のあるリフとドラムフィルの嵐で大盛り上がりの中、楽曲はエンディングを迎える。最後の警告…"Attention All Planets of Solar Federation..We have assumed control"というのは、地球及び太陽系を取り返した旧人類のメッセ―ジなのだろうか。旧人類が連合国家支配下に置いたという警告であり、つまり、主人公の夢は果たされたということなのだろうか?

 …などとそこそこ語れるくらいには好きである。それぞれに繋がりが明確にありつつも、個々のリフやメロディは単体で見ても優れており非常にキャッチーさがある。素晴らしい完成度だと思うんだよなぁ。
 一方のB面は小粒な佳曲が揃っているが、特に”A Passage to bangkok"が好き。コロンビア・ジャマイカ・モロッコアフガニスタンカトマンズと様々な地名が出てくる歌詞と、怪しいオリエンタルなリフ・メロディーが特徴的。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 正直B面曲にはそんなに思い入れないんだけど、A面の2112だけでこの価値がある。

4.どのような人に推奨するか

 Rushを聞くなら、これは鉄板だし間違いない。1枚目に買ってもいいでしょう。歌詞も併せて楽しんでほしい。ドラマチック・プログレッシブなハードロック好きへ(ただし、複雑な展開や変拍子が多いわけではない。そういうのは次回作から)。

Rush / Caress of Steel

Caress of Steel

Caress of Steel

カナダのロックバンド RushのCaress of Steelをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Rush全作シリーズ。Progressiveタグをつけるならここからだと思うんだよね。

2.内容

 1975年リリースの3rd。Mercuryからのデジタルリマスター盤。前作Fly By Nightから半年ほどでのリリースってすごくない?このリリースペースが70年代っぽい。

 一気に大作主義に寄ったイメージのある3rd。5曲中2曲で、13分・20分といった長尺曲をやっている。#1 ”Bastille Day”は勢いのあるハードロックだが、コーラスのメロディとベースラインが妙にメロディアスでちょっと哀愁もある感じ。何度聞いても、3:50のところで強拍と弱拍がひっくり返る(Metallicaの"Fight Fire with Fire"現象やね)。歌詞はフランス革命を題材としており…タイトル見ればわかるか。
 #2や#3はミドルテンポでやや落ち着いたポップロックな曲。#2 "I Think I'm Going Bald"⇒禿げると思うよ、は草。邦題は『老いてゆくのか』だったと思う。そういえばアルバムの邦題にも触れていなかったが、これは『鋼の抱擁』だったかな?まぁ、そのまんまだね。   申し訳ないが、大作の2曲はちょっとあんまり印象に残っておらんのだよなぁ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 ということで、こんな感じ。

4.どのような人に推奨するか

 第1期の中では、"Fly By Night"・"2112"を買って気に入れば、その合間であるこの作品もご購入を検討ください。

Rush / Fly By Night

Fly By Night

Fly By Night

カナダのロックバンド RushのFly By Nightをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 全作やっていくぞー。ここから4thまでは、所謂"第1期"。

2.内容

 1975年リリースの2nd。基本的に"Counterparts"あたりまでの作品は、すべてMercuryからのデジタルリマスター盤で持っています。

 オーディションによりNeil Peartが加入し、3人が揃ったぞ!というアルバム。基本的な路線は前作を踏襲したロックンロールでありつつ、#1"Anthem"で既にタイト且つ手数の多いドラムが炸裂しており、これにはワイもニッコリ。楽曲もまだまだ3分~4分でシンプルな構成のものが多く、プログレ度はさほどでもない。むしろポップさが増したといってもいい。#5 ”Fly By Night”は歌詞も含め前向きでなんだか優しい楽曲で好きです。”#2, #6あたりは歌詞も含め1stの延長といった印象がややあるが、他はNeilが歌詞を担当するようになったことで全然感触が変わっている。"By-tor and the snow dog"では、急にHades(冥界)とかStyx(三途の川)とか言い出したぞ的な。まあ、この着想は2匹の犬の喧嘩であり、それをもとにファンタジーに発展させたということらしいのだが、70年代Neilの歌詞はファンタジー・歴史が多いイメージがあるね。中間のインタールードの不思議なギターメロディ・ドラムフィル・1音ずつ音を減らしていくブレイクと、次作以降の楽曲につながる雰囲気を感じさせる。

 変則拍子、組曲、歌詞の進化と、Rushのベースラインが一気に整った感がある作品となっております。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 やっぱドラムがイイね。アルバム全体で見ると、弱いというか、あんまり聞かない曲もある。でも、個人的には第1期はこれと"2112"が好み。

4.どのような人に推奨するか

 まだまだハードロックなので、複雑さ・プログレさを求める人はもう少し後の作品から入ってどうぞ。これも、Rushの中では、最初に買う作品でなくていいかな。でも優先順位は高いと思います。

Rush / (self-titled)

Rush

Rush

カナダのロックバンド Rushのデビュー作をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Dream Theaterから遡って知ったこのバンドは心の故郷みたいなところがある。

2.内容

 1974年リリースの1stで、手持ちのはMercuryからCD再発でDigital Remasteredって書いてあるヤツ。

 北米を中心に人気を博し、特にそのテクニカルスキルとライブ力からミュージシャンからの評価が高いRushであるが、まー日本では人気のないことないこと。まぁ理由は分からなくもないんだけど。同時期デビューのQueenみたいに所謂「顔がカッコイイ」バンドではないし、曲が特にラジオ向きでポップというわけでもなく、ボーカルも甲高く耳優しい声とは言いづらい等、理由はいくつか思い浮かぶ。でも、スゴイバンドなんだよ。

 この1stは、「前夜」といったところ。なぜならGeddy Lee<Vo, Ba>とAlex Lifesonの両輪は揃っているが、Neil Peart加入前であり、ドラムは彼らの友人であったというJohn Rutseyが担当しているため。Geddy/Alex/Neilの3人がRushだから仕方ないね。

 楽曲はもうアレです、ブルージーさを含んだ快活なロックンロールと言ってよいでしょう。初期Led Zeppelinのようなと形容されるのも判りみがある。"What You're Doing"とか、ちょっと"Heartbreaker"みたいじゃないですか?そんな中で高音のハイトーンシャウトをかましまくる若き日のGeddyのボーカルと、ブリブリと主張するベースは既に際立ったものがある。The WhoJohn EntwistleやYesのChris Squireが好きだったというGeddyのベース音は、よく動きアタック音が強い、真似したくなるようなサウンドで、既に後年の雰囲気がある。ギターもシンプルながら厚いコード感やウォームなソロの感触はAlexっぽさがある。ドラムはすまん、普通。Neilの手数に比べると、落ち着いて聞こえるね。曲にプログレ感がまだ少ないというのもそう思う要素の一つかな。

 70年代のライブでは、”In The Mood”は良く演奏していたイメージがある。明るくてアンコールっぽいからかな?あとは、後年でもよくプレイされていた"Working Man"と30周年記念メドレーの先頭に組み込まれた"Finding My Way"を抑えておきましょう。あと、Rushと言えば歌詞の面白さがよく取り沙汰されますが、ここでは「ヘイベイビー遊びにいこうよ」的な歌詞が多いので、こちらもあまり気にしなくてOK。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 ライブ盤で聞いた数曲以外は思い入れ度数は低いです。

4.どのような人に推奨するか

 Rushの名作を集めて、初期はどんなことやってたんだろう?と気になる人へ。Rushを聞こうと思って最初に買う作品ではないので注意。  

Incantation / Blasphemy

Blasphemy

Blasphemy

アメリカのデスメタルバンドIncantationのBlasphemyをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Incantation集め。タイトルがいいね。

2.内容

 2002年リリースの5th。またメンバーがJohn McEntee以外変わっとるやん。いうまでもなく音楽性に変化はないが、サウンドや曲は前作より3rdを髣髴とさせる。ギターの音色や曲のブルータルさ(ファストパートが増えた)などに、多少アンダーグラウンドへの揺り戻しが感じられる。#1~#11まではいつものデスメタルサウンドで何の問題もないのだが、#12, #13は計26分のアウトロとなっている。アルバム単位で聞くものとしては、こういうのがあるとリピートしづらい(飛ばせばいいんだけど)。#9なんかはほぼ全編通してハイスピードな曲で、ちょっと珍しい気がする。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 めんどくさいCDの仕様によりマイナス。楽曲単位ではとてもいいと思います。

4.どのような人に推奨するか

 Incantationでいえば3rdが気に入った方にお勧め。

Incantation / Dirges of Elysium

Dirges of Elysium

Dirges of Elysium

アメリカのデスメタルバンドIncantationのDirges of Elysiumをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Incantationを集めの一環。後追いです。

2.内容

 2014年リリースの10th。毎回変わらず安定のデスメタル。このバンドは地味だがリフと曲に非常にまがまがしい雰囲気が合って良い。どのアルバムも安定して素晴らしい。ジャケットも、ゴアではない絵画的な怖さで非常によろしい。

 音質はクリアで何の問題もなし(Edge of Sanity他のDan Swanoによるミックスであるようだ)。オールドスクールっぽく湿ってムチムチした太めのギターが不穏で暗いリフを紡ぎ、スローとブラストを行き来する展開は相変わらず。ブラストと言ってもいわゆるブルータルデス勢のようにクソ速いブラストではなく、ツービートの正統進化のようなリズムを感じられるブラストなのである。

 このアルバムの特徴としては、それが割と極端に表れている部分だろうか。前半の曲はのっけからハイスピードなブラストビートでドロドロしたリフを刻む曲が多く、ランニングタイムも短めになっている(2分の曲など)。一方で、物凄くテンポを落としたドゥームデスが印象的な部分もあり。特にアルバムラスト曲は16分を超える大曲では、ほぼ全編をスローテンポで雰囲気たっぷりに進んでいく。アルバムトータルでは10曲50分とそんなに長くない。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 形容詞のいらないデスメタル。安定している。前半に早い曲が並んでるからか、ちょっと他のアルバムとは違う印象を持つ。これも愛聴できそう。

4.どのような人に推奨するか

 勢いやブルータルさより、雰囲気とリフ・曲がよいデスメタルを聞きたい方へ。このバンドは「純粋なデスメタルってどういうもの?」って言う人に聞かせたいですね。

栗原道子 / これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識

これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識

これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識

栗原道子 / これだけは知っておきたい「レポート・報告書」の基本と常識 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 新入社員の時に買った模様。超久しぶりに目を通してみた。

2.内容

 2008年初版のフォレスト出版からのリリース。所謂ビジネス本の一種。まぁこの手の内容の書籍は、いつの時代もそう大きく変わりはしないので、今読んでも通じる内容だと思う。著者はビジネス関係の研修講師を長く務めた経歴の持ち主であるらしい。

 一般的な企業で求められるようなレポート・報告書を対象とした解説本(学術のそれではないぞ)。書籍の構成としては1~3章で、報告書・レポートとは何か、基本的な書き方・魅せ方を説明。多分この辺は、どの本を見ても似たような内容が書いてあるんだろうと思う。個人的に今でも一番意識してやっていることは、第3章の「一枚主義」。必要な内容を取捨選択して簡潔・端的にまとめるという意味での具体的な施策が、レポートの分量を1枚に抑える(つもりで書く)ということ。障害報告書や打合せ資料などを作成するケースは数多いが、1枚に収まる報告書というのは今でも気にしている。実際には、1枚という言葉には、1ページ・2ページ(両面1枚)・4ページ(2in1の両面)のケースを含ませているが、最大でも4ページまでかな…。後は「時間をかけずに即作る」も意識しているかな。
 書籍としてのアピールポイントは第4章~5章で、具体的なシチュエーションに応じた報告書・レポートの事例が載っている。日報・週報・月報・議事録といった一般的なケースから、障害報告・OJT報告・イベント実施報告といった具体的な活動に即した内容までをカバーしていて、ある程度そのまま参考にできる場合もあると思う。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 なんだかんだ、今の自分のレポートはこれが土台になっている気がする。

4.どのような人に推奨するか

 新入社員さんや、レポート・報告書が苦手な人へ。こういうのって、年次を重ねていてもヘタな人はヘタだよなぁ。

Cognitive / (Self-Titled)

cognitivenewjersey.bandcamp.com

アメリカのデスメタルバンド Cognitive から、バンド名と同タイトルのアルバムをレビュー。 AmazonないのでBandcamp貼っておく。

1.作品を選んだ理由

 安かった(380円)のと、見た目からして絶対デスメタルだろうなと思ったので。

2.内容

 2014年リリースの1stフルで、Pathologically Explicit Recordingsというところからのリリース。2011年結成だから、若いバンドだね。

 基本的な路線はテクニカルデスメタル。ベースはブラストビート頻出のSuffocation系のブルータルデスメタルであるともいえるのだが、このバンドの「テクニカル」の方向性としては、非人間的な高速フレーズではなく、展開の複雑さやフレーズの多彩さにより重点が置かれている。ディストーションがかったギターによる不協和音アルペジオや、休符を挟んだ刻みリフには、現代的なDjentを思わせる感覚があるのだが、リフやギターソロはメロディ感が結構ある。オールドスクール感のある重心の低いサウンドも相まって、無機質さは低い。ノルウェーのExtolとかの、そういう雰囲気もあるかな。変則拍子やリズムチェンジが多い。#6ではアコースティックギターとストリングスによる静謐な曲も披露している。

 とまあ、いろいろやってくれているのだが、なんというかトータルの印象としては余り面白くはないのだった。なんでだろうね。なんか煮え切らない感じ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 普通。いいところはあると思うが…。あと、音質は非常に好バランス。

4.どのような人に推奨するか

 スピード命ではなく、プログレデス的な雰囲気。そういった音楽が好きな人に推奨する。純デスメタルを求める人には合わない。

Sabaton / Heroes on Tour

Heroes On Tour

Heroes On Tour

スウェーデンのパワーメタルバンド Sabaton / The Great Warをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 旧作揃えるのが面倒なので、ベスト盤の代わりにライブアルバムを購入してみたよ

2.内容

 2016年リリースのライブアルバム、Nuclear Blastからのリリース。DVD付きのライブ作品もあるようだが、自分のはCD単体で購入。元は2015年ドイツWacken Open Airでのライブらしい。
 内容自体はライブをそのまま封入した感があり、特殊ギミックは感じられない。演奏が非常にウマイうえに演奏は原曲に忠実(コーラスも含め再現度はばっちり)、サウンドもクリアで、2016年時点におけるSabatonのベスト盤としての役割を果たしている。当時直近のスタジオアルバムである"Heroes"からの楽曲が6本あるが、それ以外は各作品から満遍なくといったところ。大半は"The Last Stand"のツアーでもやっていたので、ライブの試練を生き残った楽曲たちということなのだろう。”Swedish Pagans"なんかは観客が一緒に冒頭からシンガロングするところも含め、もはや定番やね。
 敢えて言えばクリアすぎるのでライブ的な臨場感に欠けるという指摘も可能だが、それはライブ盤に何を求めるかの志向性の話なので。私としては、ライブでも高レベルなSabatonの楽曲と演奏を楽しめるという意味で、とても価値があると思います。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 冒頭述べたように、ベスト盤として最適。

4.どのような人に推奨するか

 直近の作品(The last Stand以降)でSabatonを知った人は、過去作追うの面倒だったらこの作品を買うと、ライブの定番曲は結構網羅できるのでおススメ。で、気に入ったら以前のスタジオ盤も買っていこう。

Sabaton / The Great War

Great War

Great War

スウェーデンのパワーメタルバンド Sabaton / The Great Warをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Sabatonの新作だぞー。購入。

2.内容

 2019年リリースの9thフル、Nuclear Blastからのリリース。Ward Rebordsからの日本盤を買っています。ただし通常版。限定版の「ヒストリーエディション」って何だろう?今回は全編が第一次世界大戦がテーマとしているわけだが、日本盤の解説には歌詞の対訳だけでなく、各曲の題材となった戦いや人物の解説がついており、世界観を理解するうえで助けになる。

 楽曲の方は、相変わらずJoakim Brodenの野太く歌い上げるボーカルと分厚いコーラスワークを中心に据えた、キャッチーで純粋なミドルテンポ中心のヘヴィメタルとなっている。サウンドの品質、楽曲の出来ともに前作に劣らない出来。アルバムリリースに先駆けてYoutubeで公開されていた"Bismarck"は、やや地味なリードトラックだなぁと思っていたのだが、アルバムには収録されていない(フィットしなかったので収録しなかったが、もったいなかったのでYoutubeでリリースした、ということらしい)。そのあと投稿された"The Red Baron"の方がノリノリで、昨今のSabaton感がある。アルバムの楽曲イメージは後者の方が近く、全体的に勢いがある。

 メロディの充実度だけでいえば前作以上ではないでしょうか。というか、前曲Sabatonらしさを非常に感じることができ、曲の構成も似たようなもんなのに、各曲をちゃんと際立たせることが出来ているのは、偏に作曲と編曲のうまさだと思うんだ。リズムとアクセントのつけ方でメロディを強烈に印象付けてくる。好みのトラック"82nd All the Way"のコーラス後半、"Devil Dogs"の出だし(3連系のダサ曲でこれも最高)、"The Future of Warfare"のコーラス等、リズムと一体となったビッグなコーラスが素晴らしいデス。"The Great War"は前作にもこんなメロディなかったっけ?と思わせるが、いい曲なので構わんです。ギターソロやフレーズも前作以上に充実していて、おいしいギターが多い。ちょっとパワーメタルっぽさが増えたという印象。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 安定の超高品質なSabaton印の金太郎飴。

4.どのような人に推奨するか

 男臭くキャッチー&ポップなメタル好きに。前作"The Last Stand"を気に入った人なら絶対買って満足。