めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています

体験記:シャルル=フランソワ・ドービニー展 バルビゾン派から印象派への架け橋(損保ジャパン日本興亜美術館)

体験記シリーズ。損保ジャパン日本興亜美術館の「ドービニー展」に行きました。
2019年春の企画展です。

1.鑑賞のきっかけ

 GW10連休は5つは美術館を回ろうという目標を立てており、その2つ目。まあ印象派ならなんとなくわかるだろうと。

2.内容

 シャルル=フランソワ・ドービニーは1817年生まれのフランスの画家。国内での本格的な展覧会は今回が初らしい。ドービニーは時期的には印象派の初期に属するらしい。印象派が深まってくると、よりイメージ重視で表現としては輪郭がぼやけた見た目の絵画が増える気がするが、ドービニーは風景を写実的にとらえつつ水や木々を美しく描写していて、単純に「綺麗だなー」と思いたくなる風景画が多い。
 バルビゾン派とは、フランス中部のバルビゾン村というところに住み着いて風光明媚な景色を描いた画家の一派を指すようである。ドービニーはアトリエを持つ船「ボタン号」を購入し、その船で川下りをしながら絵をかいていたといい、その時期と思われる作品は沢山あった。また、息子さんのカールも絵描きをやっていた、なんてところから、何となく裕福な生まれでお金にはそんなに苦労しなかったのだろうか…という印象を持つ。違ったらごめんなさい。1857年にフランスの最高勲章レジオンドヌールを授与されている。
 個人的には、1960年頃の作品がタッチが緻密で水の表現も美しくて好き。

 美術館常設のアイテムとして、ゴッホの「ひまわり」、セザンヌの「リンゴとナプキン(静物)」、ゴーギャンの「並木道、アルル」、東郷青児の諸作品があった。美術館はビルの高層階にあり、広くはない。新宿駅から雨に濡れず地下通路のみで到着できるアクセスの良さ魅力的。2020年に向け増築改修中。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 小さくて狭いところだけど、アクセスと人の少なさで高評価。次の企画展があったら行こうと思うし、改築後も興味あります。

4.どのような人に推奨するか

 印象派好きな人かなー。綺麗な風景画が好きな人にはハマる画家だと思います。

Ex.ギャラリー

ポスター。美術館内で唯一撮影可能。

こんな感じの高層階

体験記:へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで(府中市立美術館)

体験記シリーズ。府中市立美術館の「へそまがり日本美術」展に行きました。
2019年春の企画展です。

1.鑑賞のきっかけ

 同年3月、府中本町駅で本展示のポスターを見たのがきっかけ。地元の美術館だし、テーマは面白そうだし、絶対に行こうと思ってた。

2.内容

 時間を決めず適当に行ったのだが、折よく金子学芸員の展覧会講座が始まる頃だったので、館内回覧前に参加させてもらった。たっぷり1時間半の内容で企画の趣旨と代表的な作品などを語ってくれた。この企画展は府中市美術館史上トップクラスの集客を実現しているとのことで、企画者もびっくりとのことだが納得感はある。「へそまがり」「ヘタウマ」というキーワードはテーマが肩ひじ張らず単純に楽しめるものだ。実際金子学芸員の講座中も何度も笑いが起きていた。ありがとうございました。

 で、本編。Webサイトの以下のコンセプトに沿って振り返ってみる。

  • 日本初!「へそまがり」で美術史を俯瞰する展覧会。
     ヘタウマをコンセプトに集められた絵たちが笑いを誘う。いや、書いている本人は至って真剣なのだと思う(そうでないのもありそう)。西洋画としてアンリ・ルソーも取り上げられていたが、確かに氏もあンまりうまくはない…。確か、美術の教育とかは受けていなくて、独立展(アンデパンダン展)に出品してたんだよね。

  • 破壊力のある作品が勢ぞろい!
     キモイおっさん、よくわからないポーズで股下を除く鶴、へんなおっさん、とぼけたカエル…。ヤバいやつらしかおらんくて草。

  • 「奇想の画家」の作品も多数登場!
     「奇想の系譜」展で見た、伊藤若冲長澤芦雪・曽我蕭白らの絵が取り上げられていた。奇想の系譜展でも見てたから知ってたんだけど、長澤芦雪の「菊花子犬図」にはやられた。カワイすぎ。天才か?    

  • お殿様の絵画、集めました。
     金子学芸員の解説でも結構しっかり触れられていたが、徳川の3代家光と4代家綱による作品群。家光は参勤交代制や鎖国令なんかで日本史にも出てくるが、家綱は全然知らなかった。芸術肌であまり政治をしなかったのかわからないが、とにかくたくさんの絵を描いている。たくさん描いているが、一向にうまくなっている様子がない。でも、その「下手でも書くのが好き」感は何ともほほえましい。本人は下手とすら思っていなかったかもしれない。

 偶然聞けた解説講座も含め、非常に満足度の高い企画展だった。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 素晴らしかった。地元の美術館だし、今後は企画内容に関わらず毎回行こうと思った。 日本美術も勉強していきたい。

4.どのような人に推奨するか

 もう企画展は終わっちゃっているので、推奨とかはないです。興味持った人は、Webサイト見てみてください。やっぱりヘンテコで笑える美術って需要があると思うのだよ。またこういう企画があったら行きたい。

Ex.ギャラリー

ポスター。興味を持たざるを得ない。

会場の様子(内部は撮影禁止だった)

Butcher ABC / North of Hell

North of Hell

North of Hell

日本のデスメタルバンドButcher ABC / North of Hell をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 浅草デスフェストやObliteration Records等でお世話になっている関根氏のバンド、それも初のフルアルバムということで購入いたしました。これまではEP、Splitしかなかったらしい。

2.内容

 2017年、当然の如く自レーベルであるObliteration Recordsから現時点で唯一の1stフル。なぜ「肉屋さんABC」なんだろう。アルバムタイトルはSlayer "South of Heaven"の裏返したものだとどこかで見た。

 1994年位から活動しているということだが、その歴史にも納得の超オールドスクールデスメタル。浅学ながら手持ちで比較対象を挙げると、低音ドロドロデスメタル感はAutopsyの"Acts of Unspeakable"、またはCarcass "Reek of Putrefaction"を想起するが、一方でアルバム全体から感じられるノリの良さはEntombed "Clandestine"っぽいかなとも思った。

 ギターはダウンチューニング感のあるベロンとした太いディストーションサウンドで、オールドスクールでどことなくキャッチーな低音リフを紡ぐ。一般的に邪悪・荘厳・猟奇的と称されるようなデスメタルと比較すると、ストレートなヘヴィメタルあるいはスラッシュメタルっぽいリフのように感じられる。ドラムはブラスト多用せずスロー~ファストなビートをたたき出すが、一部の曲に見られる16分のノリを感じるリズムが印象に残る。「どっっどたっどっ、っどったっ」「どったどっどたっ」みたいなやつね。
   音もデスメタル的な圧力に優れていて、とてもよい。個人的にはベースがうねうねと良く聞こえるのが好き。あと新譜1,500円は安い。いつもありがとうございます。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 ライブで聞きたい音。

4.どのような人に推奨するか

 先に挙げたようなオールドスクールデスメタルが好きな人、ノリのよいデスメタルが好きな人に推奨。

吉越浩一郎 / 一流の上司、二流の上司

吉越浩一郎 / 一流の上司、二流の上司 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 本屋でタイトル買い。後輩も出来てきたし、何かしら仕事っぽい本を読もうと思ってみた。

2.内容

 2015年作。何も知らず手に取ったが、スイスに本社を置く女性用下着の会社トリンプ・インターナショナルで経験を積み、日本法人の社長やAMO'S STYLEの立ち上げを務めた方の書籍である。トリンプとTriumphが繋がらないんだよなー、トライアンフじゃないんかい。
 ここで語られている上司像は、管理者(マネージャ)という意味ではなく幅広い意味の上司なので、単純な先輩・後輩関係で当てはめてもいいでしょう。結論から言うと、結構自身の嗜好に合う本であった。参考にしようと思った(あるいはすでに実行していたこと)を見出しから挙げてみる。

  • 部下を育てるのは上司ではなく仕事そのもの。「最後は結局、自分でやる」はNG。
     自省もある。任せた仕事はちゃんと任せないといけないね。
  • 「締め切り(デッドライン)」を設けることは仕事力を高める。
     基本。締め切りがない仕事はないと思うが、その中でも細かく締め切りを区切ってやっている。
  • 健康が最も大事、体力を削って働くのは二流。
     まったくその通り。でもみんなあんまり帰らないね。
  • リスクは取らない。小さな判断とロジックを積み重ねてリスクを取り除く。
     必ずしもそううまくいかないときもあると思うが、そう思う。
  • 仕事はゲーム。だからこそこの仮想的な空間の中で知恵と戦略を絞って勝つべし。
     仕事は人生そのものではないのだ。私もそういう感覚でやっているが、参加する以上は力は注いでいるつもり。

 外資企業出身の方だからかしら、残業ゼロ・休暇・余暇と当然のものとして人生の充実をベースに置いてくれている。著者の他作品でも残業ゼロを謳うような著作が多いようで、共感できそうな予感がある。私は一平社員で上司というほどの立ち位置ではないが、部下の立場でも意識を持って働くのは必要だと思うし、よいと思う部分は実践していきたい。
 具体的な[How To本]ではない。ただ、How Toは手段なので、その手段が自身の環境にあっているかどうかは考えなければならない。この著作は考え方・習慣として汎化した内容になっているので、自身の環境に合わせて特化させることで活用できるものだと思う。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 適当に手に取った割にはいい本だった。妻がここの下着よく買っているし、そこでも縁を感じた。

4.どのような人に推奨するか

 所謂会社員として働いている人であれば、新入社員~中堅以上問わず(自身が上司でなくても)、広く読んでみていいと思う。単純に仕事術として応用できる部分がある。文章も極めてシンプルで装飾がなく、さっくり読めるよ。

Besieged / Victims Beyond All Help

Victims Beyond All Help

Victims Beyond All Help

カナダのデス/スラッシュメタルバンドBesiegedのVictims Beyond All Help をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 ジャケットとレーベル買い。Dark Descentのロゴがあったのでデスメタルだろうなと思った。あと安かった…。

2.内容

 2010年リリース、現時点で唯一の1stフル。発売元のUnspeakable Axe RecordsはDark Descent Recordsのスラッシュメタル特化のサブレーベルらしい。Besiegeは、「包囲する、取り囲む、襲う」などといった意味を持つ英単語。

 これは素晴らしいスラッシュメタルですな。1曲目の冒頭から高速低音刻みリフと、ツービート主体のスラッシュドラムでトップギア。ほぼデスヴォイスの吐き捨て系ボーカルといい、硬質で黒く研ぎ澄まされたギターサウンドといい、Sepulturaの"Beneath the Remains"やKreatorの"Pleasure To Kill"あたりを思い出すが、こっちの方がより、「終始突っ走っている」感が強いかな。ただし、ブラストビートはなし。物理的ではなく体感的なスピードを高めている。
 リフが非常に細かく刻まれていて、テクニカル。徹底して爆走する中、単純な刻みリフのみにとどまらずトレモロによる邪悪なメロディや、度々顔を出す速弾きギターソロでのバリエーションやリズムのアクセント(キメ)が変化をつけていてよい。部分的なスローパートはあるものの、全曲基本的に高速スラッシュ曲で駆け抜ける全32分の作品となっております。録音もよい。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 爆走スラッシュメタルとして非常に優れた出来。思わずいい作品に出合いました。

4.どのような人に推奨するか

 先に比較対象として挙げたバンドのような攻撃性とスピード感を持ったスラッシュメタルを聞きたい人におススメ。私の手持ちは7曲入り版だが、2017年に同レーベルからEP "Besieged"の内容を含んだ全9曲の再発版があるらしいので、そっちを買った方がいいかも。

体験記:「TBSテレビ 東大王」伊沢拓司に挑戦!(TBSハウジング渋谷)

体験記シリーズ。taxi氏のイベントに行ってきた。

1.鑑賞のきっかけ

 Twitterで見た。この時点では、東大王はちゃんと見たことなくて、むしろ東大しか見てなかった。渋谷なら行けるし、無料だったし、こんなんどうせ全然人来ないやろと思って参加したのだが…

2.内容

 めっちゃ人いた…。開始時刻(11時)ちょい過ぎくらいに現着したのだが、すでに回答者による長蛇の列が出来てた。ガチ勢多いぜ。
 イベント要項は以下の通り。  

[ルール]
回答用紙を受け取り、展示場内5箇所に掲示されるクイズを解く。
回答を記入できたら、ゴールに持っていく。
クイズは全5問中3問合っていればサイン色紙ゲット(先着150名)

 なのでついた時点で、サインは無理やな…と思っていた。とりあえず解答用紙を受け取りクイズを解いてみる。もう日も経ってるし、問題そのものは一般的な内容なので書いてもいいでしょう。

  1. なぞなぞ
    家の中で、歳をとってしまう場所は?⇒廊下(老化だから)、濁点をつけると踊りだす家具は?⇒たんす(ダンスになるから)、夜に活躍するキッチン用品は?⇒やかん(夜間だから)、といった問題だったと思う。
  2. 23区クロスワード
    その名の通り、23区名でクロスワードを組み立てる。
  3. ひらめき
    画像参照。1番大きいアルファベットは?数えてみたら29個しかなくて、そういうことかーと。頭固かった。
  4. 時計クイズ
    これはあんまり覚えてないんだが、時計の絵があって「九(く)時間」が答えだった。
  5. 四字熟語クイズ
    朝夕⇒2、日秋⇒1001みたいな数字が並んでいて、者様=??を回答するクイズ(確か)。一(1)日千(1000)秋と、四字熟語の数字を抜き出して右辺で足されているわけですね。というわけで、答えは6。

 どうせ150人のサイン枠は無理やろと思ってたのと、3問で持っていくのは悔しいので、全問解き終わってから氏のとこに持っていくことにした。雨も降ってきて寒かったが、本を読みながら待ち行列に並んだ(待ち時間相当長かった…)。待ちながら周りを見てたけど、参加者は中高生と大人のお姉さんが大半だったように思います。

 ようやくハウス内まで入ると東大王ガウンを着た氏がお出迎えで、「おお、試行錯誤の跡が!おめでとうございます」と回答用紙の正誤判定とサインをくれた。自分は400番目くらいだったようなのだが、色紙がなくなった後も回答用紙にサインをくれていたようだ。なんや、めっちゃいいやつやん…。 女子中高生とか、嬉しさのあまり泣いてる子とかいたわ。

 クリア後は二次クイズがあり、これが大分難しかった。上記5個のクイズをすべて組み合わせて、且つ文字列をアルファベット置換して…みたいな内容で、答えは「MYHOME」に。よく出来てるなあ。再度長蛇の列に並ぶと再び氏がお出迎えで、今度はツーショット写真がご褒美だったとさ。サンキュー。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 待ち時間めっちゃあって雨も降ってたからしんどかったけど、それは参加人数によるものだから仕方ない。お疲れ様でした。

4.どのような人に推奨するか

 氏は基本ファンに対して紳士で真摯なので、イベントに出て損はないと思うよ。(このイベントもう終わった話なので推奨したところで行けませんが)

Ex.ギャラリー

問3のやつ

taxiサイン

Deiphago / I, The Devil

I. The Devil

I. The Devil

フィリピン出身(活動拠点はコスタリカ)のブラック/ベスチャルメタルバンド DeiphagoのI, The Devilをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 ディスクユニオン新宿店でディスプレイされており、あのDeiphagoの新作ということで購入。当初買う気はなかったんだけど、この手のジャンルは多分入荷自体少ないから、入手可能な時に入手しておかないとなぁと思った次第。

2.内容

 Hells Headbangers Recordsから2019年リリースの5thフル。Sidapa[Gt]、Voltaire 666[Vo]はそのままに、ドラムが新メンバーになっている。挑発・サングラス・レザージャケット・ガンベルト二重たすき掛けの容貌は相変わらず!スペシャルサンクス欄…Deiphago的には「悪魔の敬礼(Satanic Salutes)」…には、2016年に夭逝したBlack WitcheryのTregenda氏にこのアルバムを捧げるとの記載あり。仲良かったのかな。アルバムタイトルは『ワイ、悪魔』。

 一聴して思ったことは、「Deiphagoなのに、各楽器が何を演奏しているか聞こえる」。
 やっている音楽は基本的に同じ。パワーコード主体でメロディのない低音リフを繰り出すギター、激しく歪んだ太い音で低音の圧力を出すベース、なんだかよくわからないがとりあえず突撃ブラストビートをしているドラム、怒気を孕んだ吐き捨て系のデスヴォイス。多分録音とミックスの効果だと思うが、各楽器音の分離が良くなっている(あくまでDeiphago比ね)。これまでだったらブラストしたら他の音はスネアとシンバルにかき消されていたようなところが、バランスよく聞こえてくるので、音質面では単純に聞きやすくなったと言っていいんじゃないだろうか。
   突拍子もなく崩壊的な曲展開とバカみたいに高いテンションは基本的に踏襲しつつも、ミドルパートの頻度上昇やドラムの速度低下により、ややスピード感が低下したようにも感じる。少なくとも、2nd "Philipino Antichrist"なんかは本気でノイズの塊と形容せざるを得ないサウンドだったので、それと比較した場合の話。ただ、これは音質が向上したから、均整が取れてそう聞こえているだけかもしれないし、「落ち着いてしまった」わけでは全くないので、そこはご安心ください。最後の楽曲 #8 "I, The Devil"のエンディングなんかの暴虐ぶりは凄まじい!

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 総じて良いと思う!

4.どのような人に推奨するか

 グラインドコアにも通じるメロディ不要の突撃サウンドが聞きたいエクストリームメタラーにおススメ。近いバンドはRevenge/Conquerorかしらと思う。

死んだ細胞の塊 / Saibogu

Saibogu

Saibogu

日本は東京のブルータルデスメタルバンド 死んだ細胞の塊よりSaiboguをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 はるまげ堂をフォローしていると度々TLに登場するので気にはしていたんだけど、新宿ディスクユニオンにてディスプレイされていたのでついに購入。あとやっぱ1500円と安いのは、手に取りやすいです。

2.内容

 2019年リリースの1stフル。2015年にKani Saibo[Gt]を中心に結成された若いバンドです。Obliteration Recordsからのリリースで、プロデュースにもオーナーの関根氏が関わっている。ジャケットは一見グロいようで、深海生物みたいな連中がボーリングを楽しんでいる様子が描かれており、コミカルで可愛いらしい。バンドロゴは全く読めないが、界隈にはよくあることなのでOK。

 オールドスクール感強いブルータルデスメタル。低音中心で粘度の高いネバついたディストーションサウンドで紡がれるのは、ズンズンとした刻みリフだったり、蠢くようなトレモロリフだったり、ピッキングハーモニクスやテクニカルな速弾フレーズを入れたりと多彩。ギターソロはない!
 ドラムはかなり複雑で様々なリズム・展開を見せており、変拍子も多い。短い曲の中でも、曲のテンポがどんどん変わり、それに合わせてドラムもフレーズを切り替えていく。超速スピードというわけではないのだが、速いパートも遅いパートも全編ノリがよく、聞いていて気持ちいいテンポ感になっている。緩急のつけ方とリフがうまい。
 ボーカルは超低音の咆哮で、バッチリよい。

 比較するバンドってなんだろう?この時一緒にCannibal Corpseのアルバム(The Wretched Spawn)を買ったのだが、リフのつくりや楽曲の複雑さは近いものがあるように感じた。こちらの方がよりフレーズの幅が広くテクニカルかもしれないが、あくまで「ブルータルデスメタルの範囲の中で」というもので、所謂プログレデスっぽい方向性にはなっていない。品質も全然劣っておらず、曲作りも音も素晴らしい。22分というランニングタイムも、この密度と濃度であればちょうど良いかもね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 気に入った~。ライブも見に行きたい。

4.どのような人に推奨するか

 オールドスクール味のあるブルータルデスメタルが好きな人におススメ。一緒に応援しましょう。

大野裕之 / 京都のおねだん

大野裕之 / 京都のおねだん のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻が図書館から借りてきたシリーズ。こういう妙な本をどこで見つけてくるんだろう。

2.内容

 2017年作の講談社現代新書。古都・京都の様々なものの値段をテーマに、京都人が何にお金を出すのか、ひいては何に重きを置くのかといった価値観に迫る随筆集。作者は出身は洛外だが、京都大学への進学以降ずっと京都住まいであることから、「外から見た京都」というコンセプトであるらしい。
 もちろん、ただ「これこれはいくらです」で終わる本ではない。『初めての抹茶パフェ』では京都で開発された経緯などが判るのだが、例えば『貸出地蔵』『仕出し』といった概念をそもそも知りもしなかった。貸出地蔵は、新興のマンションなどで祭をやるときに地蔵がないのでご近所から借り出すという仕組み。仕出しについては京都あまり関係ないような気もするが、端的には映画の端役もちゃんとした俳優さんを使うほうが素人使うより撮影時間も品質も良いですよ、というようなこと。『仕出し』とはそういった名もなき役を演じる俳優のことを指すらしい。
 京都はは老舗の歴史が深い。14代も続くお店が平気であったりする。そういった老舗のイメージは『伝統』『古めかしい』イメージがあったりするかもしれないが、結局その時代時代を生き抜いていかなければならない一自営業人なのであり、むしろ代々の店主はみんなベンチャー企業家のようなものであるとの言葉が印象深かった。

 著者の文章表現がなかなかに面白い。『日本人を語るときにサムライスピリットとは言われるが、クゲスピリット(公家ね)とは絶対に言われない』ってどんな発想やねんと思ったけど、確かに取り沙汰されるのは武士であることが多いですね。まあ世襲や血筋による(イメージ)ものよりは、自身の力に寄り成り上がる武士の方が多数を占める中流下流階級の共感を呼ぶということなのではないだろうか。騎士道精神という言葉もあるし。
 著者は大学を機に「上洛」したとのこと。正しく上洛なのだが、現代語でそのままの意味で使っているケースは初めて見たかも。これもちょっと笑った。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 私は大阪に住んでいたことがあったので、その点でも楽しめました。このへんの界隈の話かぁーみたいな。地図を見ながら読むと楽しいかも。

4.どのような人に推奨するか

 京都の文化を少し知ることができるお気軽な本として、生粋の京都人でない方におススメしましょう。

体験記:顔真卿 王羲之を超えた名筆(東京国立博物館)

体験記シリーズ。東京国立博物館顔真卿展に行きました。
2019年1月からの特別展です。

1.鑑賞のきっかけ

 大きく3点。1つめは奇跡的な面白さのこの動画。


【珍プレー】「トリオ神経衰弱」が難しすぎて東大生でも歯が立たなかった回【弱すぎ】
 2つめは、音声ガイドが関俊彦さん。
 3つめは、漫画『とめはねっ』で。

2.内容

 展示そのものは晋から唐(3~9世紀)が中心で、顔真卿はその一部。殷周や明清の作品もあったし、唐時代でも顔真卿以外の書家が多数紹介されている。章立ては以下だが、ハイライトであり個人的も時間をかけて回ったのは第1~第3章まで。

第1章 書体の変遷
第2章 唐時代の書 安史の乱まで
第3章 唐時代の書 顔真卿の活躍
第4章 日本における唐時代の書の受容
第5章 宋時代における顔真卿の評価
第6章 後世への影響

 表現の幅が広がっていく様と、媒体に適した文字が生まれていく様子は、特に漢~唐あたりの時代ならではと思える。紙という媒体そのものは蔡倫によって1世紀あたりに発明されていたが、書というのは紙に書かれるばかりではなく、木簡・竹簡に書かれたり、石に碑文として篆刻されたりしていたのだ。書簡はともかく、碑文は彫師の技術も重要だったのではないだろうか。葛飾北斎展で富嶽三十六景の『神奈川沖浪裏』を見たときにも、絵そのものに加え版画師の技術によって成り立っている部分は大きいと感じたものである。

 王義之に始まり、初唐の三大書家、虞世南・褚遂良・欧陽詢の書家たちはやはり大きくクローズアップされていた。私は褚遂良の『雁塔聖教序』が美しくて好き。後は『牛蕨像造記』などに見られるぶっとい線で力強く書かれる北魏楷書がお気に入り。
 そして、ハイライトである顔真卿『祭姪文稿』安史の乱で親戚の顔季明が命を落としたことを受け供養として書いた下書き文(稿は下書きの意)…では、平日昼間であるにも関わらず10分以上の行列が出来ていた。関俊彦さんの迫真の翻訳を聞きながら、鑑賞しておった。悲しみの極みである…。
 かなりのボリュームと情報量のある展示で、正直第3章まででかなりエネルギーを使っていたので、4章以降はやや流して鑑賞してしまった。懐素さんの酔っ払ってのたのたした文字表現などを楽しんだ。全作品を真剣に全部鑑賞すると、多分丸一日かかっても見切れないかもしれないレベル。お疲れ様でした。

 この『祭姪文稿』、中国国内ですら見れない代物らしく、日本公開されることで中国側では結構な話題になったとか。実際、大陸から見に来ていると思しき方が多かった。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 すごいボリュームで全量ちゃんとは見切れなかったけど、良かった。この展示に限らないけど、音声ガイドはつけて正解。当時の天皇陛下(今の上皇陛下)も鑑賞されたらしい!
 両陛下が「顔真卿展」を鑑賞 - 毎日新聞

4.どのような人に推奨するか

 顔真卿もそうだけど、この時代の書は政治や宗教と密接にかかわっていて、単なるアートではない。碑文の類は大抵何かしらの業績か人を称えるものだったり、政治的な記録の意味合いで作成されたりしている。書は知識人の一教養でもあり、書家たちもただの書家というわけではなく政治家としての側面を持つ(実際、顔真卿安史の乱に関わったりしているわけで)。そういうわけで、中国史に興味があるものなら、書の歴史はきっと楽しめるものだと思う。

Ex.ギャラリー

ポスター

唯一撮影可能だった作品

合山究 / 故事成語

故事成語 (講談社現代新書)

故事成語 (講談社現代新書)

合山究 / 故事成語 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻が図書館から借りてきたシリーズ。

2.内容

 1991年作。故事成語…中国には故事を含まない成語がないので単に成語と呼ばれる…は長い歴史の中で様々な人に共感され、だからこそ成語として今に至るまで残っている。そんな成語について、出典・意味・成立背景を詳細に教えてくれる本。文体はやや固めでキャッチーさは低い。故事を例に世相や現代日本の風潮についてややネガティブなコメントしている箇所が見当たるが、バブル崩壊とか湾岸戦争があった時期だからなのだろうか。
 読んでいるとその出典は紀元前が相当に多く、孔子老子等の儒家、春秋戦国の「史記」「呂氏春秋」や前漢あたりだけでかなりの数を占める。流石の歴史の長さである。紀元後は三国志、晋魏隋唐宋のあたりになってくると詩に由来するものが多くなる。出店が判るのはいいね。値千金って、宋の蘇軾さん(トンポーロウの人)だったのだね。
 取り上げられている成語は60件くらい。知っていたのは三分の一くらい…。全然知らない成語も「~というときに使われ有名である」みたいなこと書かれていた。知らなくても文章から意味を類推できるものもあり、一方でそこそこ知っているものも出典と由来をキチンと知っていたわけではないので、大変勉強になった。史書や詩の引用はやや飛ばして読んだ。すみません。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 坐擁百城=汗牛充棟=本がいっぱいあること。桃李もの言われども下自ずから路を成す=人となりがよければ宣伝せずとも慕う人が現れる。頑張ります。

4.どのような人に推奨するか

 ちょっと難しめの故事成語が入っていますので、興味がある人どうぞ。

Blasphemer / Ritual Theophagy

Ritual Theophagy

Ritual Theophagy

イタリアのデスメタルバンド BlasphemerのRitual Theophagyをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1stと一緒に購入。最初に表ジャケット見たときは小汚いベスチャルブラックかと思ったが、裏ジャケ見たら腕組み&煽り気味の典型的デスメタラーのメンバ写真で草。

2.内容

 2016年2ndフル、前作に続いてComatose Musicからのリリース。メンバーはちょっと変わっているが、基本的に1stの顔ぶれ。ドラマーがクレジットされておらず3人(The Unholy Trinity)ということになっている。
 前作ではオールドスクールな感触を感じたのだが、今回は細かいフレーズと不協和音なハーモニーがちょっと増えてテクニカル方面に近づいた印象がある。高速ブラストを中心とした音の詰め込み具合は前作譲りで、総論としてはテクニカル・ブルータルデスメタルの範疇にある音楽であることに変わりはない。サンプリング・SEが多めなのも、1曲1曲のランニングタイムが短め(2~3分)なのも相変わらず。
 ただ、どす黒いジャケットから想像するような荒々しいイメージからは遠く、前作と比較してもスッキリくっきりとクリアなテクデスっぽい音作りになっていると思う。よく言えばクリアだが、悪く言えば小ぢんまりとしている。メタルとしてのエキサイトメントは1stの方が強いと感じた。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 比較しちゃうと、ブルデス成分が強かった1stの方が好きかな。

4.どのような人に推奨するか

 前作よりテクデス寄りなので、1stのブルータルデス成分に惹かれていた人には合わない可能性あり。別に悪い作品ではないです。

Blasphemer / On the Inexistence of God

On the Inexistence of God

On the Inexistence of God

イタリアのデスメタルバンド BlasphemerのOn the Inexistence of Godをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 "Brutal Death-Metal Guidebook"で見た。Hour of Penanceでイタリアのデスメタルのレベルが高いなあと思ったのが動機の一つ。

2.内容

 2008年1stフル、Comatose Musicからのリリース。オールドスクールな感触を持った刻みギターリフや邪悪なトレモロを中心に、一瞬たりともじっとしていないドラムがブラスト中心に複雑なリズムをたたき出すブルータルデス。テンポを落としブレイクダウンするパートもちょっとあるが、曲そのものが2~3分と大抵短いので、突進している印象の方が圧倒的に勝る。ボーカルも低音ガテラルを中心に威厳ある感じで文句なし。
 演奏やサウンド機械的になりすぎず高水準なオールドスクールサウンド。ベースはかなりバキバキなサウンドで、且つよく動くフレーズを奏でるため、その点はかなり印象に残る。#4の最初、#6、#10にSE的な小品があるものの、変にプログレッシブな方向には行かず、ストレートに純度の高いブルータルデスメタルをやっている。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 いいぞー。#4 はゴッドファーザーのテーマ曲やね。

4.どのような人に推奨するか

 激烈なブルデス好きには推奨。Amazonだとやたら価格が高いが…自分は新宿ディスクユニオンで中古購入。1,200円くらいだったはず。

体験記:アジアに目覚めたら(東京国立近代美術館)

体験記シリーズ。国立西洋近代美術館の2018年秋冬の企画展、『アジアにめざめたら:アートが変わる、世界が変わる 1960 -1990年代』に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 企画展そのものは何も知らず、ただ美術館に行ってみようと思って行ってみただけ!行ったことない美術館だったので。

2.内容

 企画展は東南アジア、タイ・フィリピン・インドネシアあたりの作品が多かった印象。この時期の東南アジアといえば、戦後の植民地支配からの独立期にあり、各国で所謂独立運動や革命が起きているが、その中で表現されたアートになっている。ここで展示されているのは絵画だけではなく、モノを使った実験的な表現作品や映像作品もいろいろと並んでいる。
 個人的に覚えているのは、以下の作品群(写真不可だったので目録見ながら回想)。

  • FXハルソノ『くつろいだ鎖』
     ベッド・クッションに巻き付けられた鎖。それだけなんだが、タイトルも相まって可愛らしい雰囲気。
  • キムグリム『現象から痕跡まで~火と芝生のイベント』
     幾何学模様(三角形がこのように並んだ図:△△△△△)に芝生を燃やしていく、その過程を収めた映像作品。
  • オノヨーコ『Cut Piece』
     檀上のモデル(オノヨーコ自身)の衣服に観客がハサミで切れ込みを入れていくという観客が参加して初めて発生するアート(映像作品)。
  • タン・ダウ『彼らは犀を密漁し、角を切ってこのドリンクを作った』
     犀を模した?物体の周りを、犀のラベルが貼られた空き瓶が同心円状に無数に取り囲んでいる作品。

 フロアも広く大小数多くの作品があったのでおなか一杯になってしまったが、その後常設展の方にも行ってみて、1枚すごくカッコいい絵を見つけてしまった。それが和田三造の『南風』。2018年に新たに国の重要文化財に指定されたらしい。
 和田三造の油彩画《南風》が 新たに国の重要文化財に指定されることになりました。 | 東京国立近代美術館
 明治後期、洋画の影響を受けた油絵作品で、テーマとしては船で難破した船員達を描いているらしいのだが、とにかく中央に立つ男のマッチョ感が大好き。これが一番気に入ってしまった。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 企画展の方はプログレッシブさが強かったり、時代背景の知識が乏しかったりすると、あまり理解できない部分もあったが、刺激を受けました。常設も含めボリュームたっぷりだったので、そろそろまた行こうかな。

4.どのような人に推奨するか

 平日だからかもしれないけど、あまり人がいなかった。西洋画に比べて人気が低い気がする。見る側に解釈を求めるので鑑賞にエネルギーがいるが、その分面白いですよ。単に『なんだこりゃw』と思うだけでも別に良いと思うし。

Ex.ギャラリー

ポスター

和田三造『南風』。これは写真OKだった。

タイトルと躍動感で笑った。

休憩室からの眺望。休憩室も誰もいなかった。。。

三島由紀夫・東大全共闘 / 美と共同体と東大闘争

美と共同体と東大闘争 (角川文庫)

美と共同体と東大闘争 (角川文庫)

三島由紀夫・東大全共闘 / 美と共同体と東大闘争 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 本屋でタイトル買いに近い。

2.内容

 これに関しては発売日よりも背景を語ったほうがよい。1969年5月の学生運動期に東京大学で行われた三島由紀夫と東大全共闘の討論会の記録を書籍化したもので、当時の発言がそのまま収められている。
 なんだが、私にはまず全共闘がなんだかわからない。今頑張って調べてみたリンクを貼っておく。
 【学生運動とは何だったのか?】簡単にわかりやすく解説!!目的や背景・その後など | 日本史事典.com

 それはそれとして、ここで学生たちが吐く言葉は、彼らの主義主張と何の関連性があるのかわからない。というか、主義主張が何なのかさえわからない。それくらい観念的なことしか言っていないように思える。討論記録の後には、討論で語りつくせなかったことを双方が寄稿しているが、その寄稿文で以てさえ(いや、寄稿文の方がむしろ)何も伝わらなかった。思索して自身の哲学を持ち議論ができるということの熱量は評価できる。中身は分からない。
 討論の様子がYoutubeで見つかった。映像で見ると、想像したより和やかというか、楽しそうな雰囲気である。お祭りだね。もともとの発足当初の学生運動には成し遂げたい目的・野望があったのだと思うのだけれど、ここでやっていることは何だったのかわからない。理解できないだらけで申し訳ないが、本当にわからないから仕方ない。


三島由紀夫vs東大全共闘(長尺版)
 

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★---
 ある程度当時の世相・背景を認識したうえで読んで、それでも多分わからない。面白くはない。記録的な価値はあるかもしれない。

4.どのような人に推奨するか

 特にどうにも推奨しません。これを理解して推奨できる人は、頭脳明晰な人であるか、当事者だった人なんだろうなと思う。私はどちらでもないので…。