アメリカのデスグラインドバンド Knoll / Metempiric をレビュー。
- アーティスト: Knoll
- 発売日: 2022/06/24
- レーベル: Self-Released(自主制作)
- メディア: CD
1. 作品を選んだ理由
前にデビュー作Intersticeをレビューしたとき、「将来性も含めてかなり期待できる」と書いた。その勢いのまま2ndのMetempiricまで一気に聴いてしまったので、カタログ順にちゃんとレビューを追いかけておこうと思って今回選んだ。1年半足らずでの2作目というハイペースぶりにも興味があった。
デビュー作の時点で完成度の高さに驚いたバンドが、次でどう転ぶか。素直に伸びるのか、変な方向にこじれるのか。そういう「次作を確かめたい」欲が今回の一番の動機。
2. 内容
2022年6月24日、レーベルを介さず自主制作でリリースされた2ndフルレングス。録音はIntersticeに続いてAndy NelsonがBricktop Recordingで手がけ、ミックスは今回もKurt Ballou(GodCity Studios)、マスタリングはBrad Boatright(Audiosiege)という布陣は前作から据え置き。この座組の安定感がそのまま音の説得力に直結している。
全13曲、尺は33分ほどとIntersticeよりやや長尺化。バンド編成はヴォーカル/ノイズのJames Eubanksを中心に、ギターがEvan Kubick・Drew Miller・Ryan Cookの3枚看板、ベースLukas Quartermaine、ドラムはこの作品が初スタジオ参加となるJack Anderson。ギターが3人という厚みが、Intersticeよりさらに重心の太いギターの壁を作っている。
音楽性としては前作の路線、デスメタルとグラインドの暴力性に不協和音・ノイズを練り込む方向をそのまま継承しつつ、輪をかけて曲展開が有機的になった印象。リード曲"Felled Plume"のように、非対称拍子のリフから急にドスンと重いブレイクダウンへ落ち、そこからまたグラインドの疾走へ戻るという「唐突なのに繋がって聴こえる」構成の巧さがKnollの武器だと改めて思った。ギタリストのRyan Cookがトランペットも兼任していて、インスト曲"Dislimned"や"Throe of Upheaval"の導入部でノイズに混じって鳴る場面があるのだが、これがまた不穏さに拍車をかけていて面白い。前作でもサックスらしきノイズが差し込まれる場面があったが、今回はより明確に「楽器としての管楽器」が効いてくる。
短尺で振り切れた"Marred Alb"の2分弱の狂騒、逆に8分近い尺でノイズと静寂を漂う締めの"Tome"まで、緩急の付け方がIntersticeよりこなれてきている。前作は「勢いで押し切る」瞬間もあったが、今作はカオスの中にもちゃんと「ここで一呼吸置く」設計意図が見えて、聴き手を置き去りにしない工夫を感じた。
3. 推し曲:Felled Plume
アルバム前半を引っ張るリード曲。まず出だしのリフからして、弦がふにゃっとよじれるような不協和なフレーズで始まって、そこに変拍子が絡んでくるので最初の数十秒だけで「あ、これは一筋縄じゃいかんやつだ」と身構えさせられる。
面白いのはそこからの展開で、蛇のようにうねるディソナントなリフが非対称の拍子の中を這い回ったかと思うと、いきなり単純で分厚いストンプ調のブレイクダウンに落ちて、さらにそこから王道のグラインドコアのグルーヴへと戻っていく。このジャンルを跨いだ横滑りが、まったく唐突に感じられないまま繋がっていくのが凄い。
ドラムのJack Andersonは初参加とは思えない安定感で、ブラストの速度域でも非対称なアクセントを崩さずに叩き切る。Eubanksのボーカルは絶叫と胃の中身を吐き出すようなガテラルを行き来していて、曲の温度をさらに上げてくる。ほかだと、多重ギターのタッピングが挟まる"Gild of Blotted Lucre"や、ベースのLukas Quartermaineがソロっぽいラインを聴かせる"Of Troth to Atom"あたりも印象に残った。
4. 感想/評価(★の5段階)
★★★★- Intersticeの完成度をさらに一段引き締めてきた印象で、2作目にしてバンドの個性がはっきり像を結んだと思う。混沌の中にちゃんと構築美があるのは前作からの美点そのままに、曲間の呼吸の付け方が明らかに上手くなっている。減点分は、トランペット/ノイズ要素がやや「実験のための実験」に寄る瞬間があって、そこだけ本編のグルーヴから浮いて聴こえること。とはいえこの路線を突き詰めていったらどこまで行くのか、次作も追いたくなる一枚。
5. どのような人に推奨するか
Full of Hell、Gorguts、Ulcerateのような不協和音・ディソナンス寄りの極端音楽が好きな人には引き続きドンピシャ。Intersticeが気に入った人なら間違いなく満足できるし、むしろ完成度は今作の方が高いとすら思う。カオティックな中に構築意図を感じたいタイプのリスナーにおすすめ。
逆に、ストレートに刻んで気持ちよくなりたいタイプのグラインド/デスメタルリスナーには、展開が忙しなすぎて疲れるかもしれない。トランペットやノイズパートを「面白い実験」と受け止められるか「余計な寄り道」と感じるかで評価が分かれそうなバンドでもある。不協和音への耐性がある前提で、ぜひIntersticeとセットで聴いてほしい一枚。












![Slowly We Rot (Remastered, Expanded Corpse Blue With Blood Splatter Vinyl Edition) (LP) (Ltd) [Analog] Slowly We Rot (Remastered, Expanded Corpse Blue With Blood Splatter Vinyl Edition) (LP) (Ltd) [Analog]](https://m.media-amazon.com/images/I/41MK1gBrfhL._SL500_.jpg)

