めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

宮内悠介 / 月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿

宮内悠介 / 月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 先に『ヨハネスブルクの天使たち』『カブールの園』を読んで、その読み味に好感を覚え、他作品も読んでみたいと思った所でした。読むのは2作目。(コンピレーションで『スペース金融道』を読んでいたので、それを含めると4作目か)

2.内容

 2019年に光文社文庫からリリースされた碁と碁盤を中心とした連作ミステリ。といいつつ、ミステリ要素の部分は丁寧ながら地味というか、驚愕のトリックがどうこう言う感じではないです。表題作を除いては1編40~50ページくらいなのですが、その中でキャラクターとストーリーを丁寧に魅せていて、うまいなぁと思います。本格的に事件を取り扱うのは表題作のみですが、ちゃんと各編にミステリ的な謎と回答が用意されています。渋いというかじんわりとした読み味というか。
 主人公(のわりにあまり出てこない)の碁盤師・吉井利仙と、ライバル的である贋作師の安斎の関係は、『ブラックジャック』のBJとキリコを思い起こさせる。碁盤作りに対するスタンスは違うが、根底にある情熱や信念は近いというか。そして実際に物語を回すという意味での主人公、愼と蛍衣の10代棋士二人。この辺のキャラクターが短い中でよく表現されていて、もっとこのキャラクターで読みたいなと思わされました。
 碁盤や碁にまつわるうんちくも、知的好奇心を刺激されてGoodです。深草少将知らんかったわ…

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 良いじゃん。この作者はウマが合いそうな気がしてきた。

4.どのような人に推奨するか

 『ヨハネスブルクの天使たち』よりカジュアルで読みやすい。タイトルはすごくミステリっぽいですが、ミステリはあくまで1つの要素といった感じ。メインはキャラクターと人間ドラマだと思います。