めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

谷崎潤一郎 / 陰翳礼讃

陰翳礼讃

陰翳礼讃

谷崎潤一郎 / 陰翳礼讃 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 谷崎である点と、タイトルで気になっていた。だって陰翳だぜ。暗そうでよいなと思ったのです。

2.内容

 小説だと思ってた!これはエッセイ集ですね。昭和5年~23年の間に文藝春秋婦人公論中央公論などの雑誌にて発表されたエッセイ7編をまとめたものです。文庫の初版は1975年。中公以外でも文庫が出ているようだが。
 表題の『陰翳礼讃』は一言でいうと食事・建築・文学等の様々な観点から東洋(日本)と西洋の美的感覚や趣向の際について述べたものです。 その他、懶惰(なまけ)、客嫌い、旅、厠(トイレ)など、テーマ別の論考が続いています。  谷崎のエッセイは初めて読んだけど、構成がわかりやすくて文章も面白い、それでいて谷崎の鋭い意見が入っている。というか、この捻くれた感じがとても良い。
 観光地として荒らされた宿や食事に旅情がないのでマイナーな隠れ宿を探したい、他の人に広まってほしくない(宿の経営的には広がったほうがいいに決まってるけど)、電車でのんびり揺られている移動そのものが気持ちいいぞ、といった旅に関するいろいろ。
 『客嫌い』では、昔は喋るのが得意だったはずだが会話嫌いを貫きとおして年を取った結果気づいたら全然喋れなくなってたとか、自分から会いたい時に会う友人以外の自分が望まない来客は全部お断りだし会話したくない、という客嫌いぶりは正直共感する。自分もわりとそんな感じだし…

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 エッセイのテーマ自体も卑近で面白いんだけど、やはり文章力・描写力があるなぁ。

4.どのような人に推奨するか

 芸術・恋愛・旅・交友・怠け・トイレと、テーマそのものは現代でも十分通用する、頷ける内容です。身近なテーマで気楽に読めます。暗いとか怖いとかもないので、気楽にフムフムと谷崎の考えを読みたい方におススメ。