清水潔 / 殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐事件
清水潔 / 殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐事件 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
ブックオフをウロウロしていた時に特価コーナーで見かけて、タイトルとノンフィクションものということで魅かれました。作者やこの本のことは知らなかったです。
2.内容
2014年、新潮文庫からの作品です。2016年頃にどこだかの書店が作者名もタイトルも隠して『文庫X』として売り出した書籍。あれが本作だったということは、読み終わった後に知りました。
確かにこれは凄く心に残る本だった。メディアや報道・警察・裁判所・弁護士・検事の役割や職業倫理というものを考えさせられます。誤りを認めることができない巨大組織の問題というのもなんとなく分かる気がします。DNA型調査の信頼性にケチが付いた場合、これを根拠に行われた調査の信頼性が損なわれる。それだけなら再検査でも再調査でもすればよくて、費用面はあるにせよ組織にとってはまぁどうにかなる話で。それよりも 、DNA型導入を決めた上役の責任問題になるとか、これを守るための嘘や隠蔽が追求されるとか、そっちの方がイヤだったりするんじゃないですかね。すべての官公庁で一事が万事こんな問題を抱えてるまでは考えないが、大小はあれど類似した話は「巨大組織の問題」としてどこにでもありそうだな。
警察発表や政府発表を一次ソースとしてそのまま報道するのも、低リスクで楽だし、(公式発表通りという意味では)間違いがないからなんだろうな、と思いました。自分が新聞社にいて、そういう仕事の仕方をしない自信はない。
などなど。あとは、単純にこの清水さんという人の信念と行動力が凄いなぁと。文章にも「その思い」が詰まっていて、ぐいぐいと引っ張られる。劇的なノンフィクションである。この人は週刊誌報道やテレビ報道畑の人ということであり、ちょっとメディアの見方が変わりますね。単純と言われそうだけど。
後書きにあった調査報道のカテゴリ分類。放っておいてもいずれ明らかになる「エゴスクープ」は、報道側は第一報を競って争うが、いずれ分かる視聴者にとってはなんら価値のない競争であり価値のない報道だという。確かにそんなニュース速報が多い気がしてきたよ…。もっと本書のような発掘型・思考型のスクープが増えるといいですね。最近は大手新聞社やテレビは全然で、文春あたりが独自ネタをつかんでいるイメージがあるわ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
『文庫X』での推され方も頷ける素晴らしい本でした。
4.どのような人に推奨するか
上記に挙げたような報道・警察・裁判所・弁護士・検事の問題などに興味がある人。例えば自殺者や天災の被害者に群がるマスコミに嫌悪を感じたことがあるとか、裁判所のクソ判決に納得できなかったり、警察の不祥事に怒りを感じたりとか、そういったレベルのことです。そういった思いを少しでも持ったことがある人は、この本を間違いなく興味深く読めると思います。