Adagio / Life
フランスのプログレッシブメタル、Adagio / Lifeをレビュー。
1.作品を選んだ理由
最近プログレメタラーなので、いろいろそれっぽいものに手を出しています。古き良きテクニカル・メロディアスを求めて、そういや昔Adagioの1st買ったけどあんまり聞いてはいなかったなぁというところが再聴のきっかけ。
2.内容
2017年にZeta Nemesis RecordsからリリースされたStephan Forte率いるフランスのバンドの第5作目。Zeta Nemesis Recordsってどこ?Metallum見ると本作とStephanのソロアルバムっぽいものしかないから、自身のレーベルなのかな。2021年現在バンドはON-HOLD…活動休止中とのことで、現時点の最終作です。
むかーし聞いた1st "Sanctus Ignis"の記憶は、こねくり回したアレンジとメロディを持ったネオクラシカルでシンフォニックなパワーメタルという感じです。今聞きなおしてもあんまりその印象は変わらず。
一方の本作。とにかくその1stとは全く別物と言えるサウンドになっております。シンフォニック・クラシカル・パワーメタルな要素に魅力を感じていた人からすると全然刺さらない内容かもしれません。
Djentっぽく変則的に刻むマシーナリーなリフからクリーンなアルペジオにメロディックなソロプレイやエキゾチックなフレーズと幅広いギターワークを中心に、抑制されたダークな雰囲気・歌メロと、様々に展開するリズムと変則拍子を持った、やや長尺でミドルテンポの楽曲が並びます。オールドスクールなメタルっぽさはかなり薄まっていて、モダンな雰囲気です。#3 "Subrahmanya"のイントロやコーラスのリフなんかは分かりやすくDjentリフだけど、暗く静謐なパートや、部分的に1stを思わせるイイ感じの歌メロ、ギターメロディの織り交ぜ方がこのバンドならではという感じがします。#9 "Torn"あたりは。強力なボーカルメロディにピアノとストリングスが絡む比較的わかりやすい楽曲と言えるかもしれない。
全体的に派手さはなく、寧ろ地味とも言える作風で、パワーメタル的な即効性は全然ないです。なんだけど、これがプログレメタル耳にはとても心地よい。怪しくも印象的なメロディが多く、1つ1つのフレーズが良く練られていると感じます。なんか繊細というか痛切というか、Fragile(壊れそう)な雰囲気と緊張感があって、それがとても気持ちいい。また、本作から加入のKelly Sundown Carpenterさんの太くよく伸びるヴォーカルワークが非常に素晴らしいというのも大きなセールスポイント。ヴォーカルが強力ってのはやはりいいことだ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
期待していたものと全然違うけど、それはそれとしてめちゃくちゃクオリティ高くて面白い内容なのでビビりました。凄いね。
4.どのような人に推奨するか
1stのシンフォニック・クラシカル・パワーメタルな要素に魅力を感じていた人には推奨しません。テクニカルというわけでもないです。しかしながら、暗く美しさメロディと構築力の高いヨーロピアンなプログレメタルな楽曲は非常に魅力的。Paradise Lost以降のSymphony Xをもっと繊細にした感じなので、そういうのが好きな人にはおススメできます。