Pain of Salvation / In the Passing Light of Day
- アーティスト:Pain Of Salvation
- 発売日: 2017/01/13
- メディア: CD
スウェーデンのプログレッシブメタル、Pain of Salvation / In the Passing Light of Dayをレビュー。
1.作品を選んだ理由
大ファンなので買わない理由がないです。発売日に新宿ディスクユニオンに行ったのに入荷してなかったので、仕方なく通販で買いました。
2.内容
2017年、いつものInside Out Recordsからリリース。ボーナスCD付きの2枚組輸入盤で購入しました。その後リリースされた日本盤も購入。これはお布施。
ちなみに、2CD盤はよっぽどのファンでなければ入手しなくていいと思います。ちょっとした曲解説(英語)と本作収録のデモバージョンが収録されています。デモの時点でかなりの部分が完成されているという印象で、逆に言えば本編の方が順当にブラッシュアップされているので本編聞けばいいかなって感じですわね。
音楽的な特徴は、新ギタリストRangar Zolbergが大きくフィーチュアされている点、複雑でヘヴィメタリックでアグレッシブなサウンドが大いに戻ってきているという点の2点にあります。
1点目について。本作の前に出た『Remedy Lane:ReLived』 でも素晴らしいボーカルワークで活躍をしていたRanger Zolberg君が、今回ボーカルと楽曲提供の両面で大いに貢献しています。#1 "On A Tuesday"の中間部、#3 "Meaningless"あたりはRangar君のペンによるもの。ボーカルも彼自身のものが使われています。これまでJohan Hallgrenがライブでセカンドボーカリストとして活躍していたけれども、スタジオアルバムでここまでセカンドボーカリストが明示的にアピールされたことはなかったと思う。その彼がめちゃくちゃいい声してるんですよね。もうバンド抜けちゃったけど…
2点目については各曲の解説を通して。#1 "On A Tuesday"の複雑なリズムを持ったアクティブでライブ映えしそうなリフと、抑制されたメロから一気に目の前が広がるコーラス、ピアノと笛/弦楽器による静かでノスタルジックな中間パートと、荘厳なコーラスワークと、RoadSaltシリーズを通過したからこその新しいPain of Salvationサウンドが提示されている。#3 "Meaningless"はPVが作成されたリードトラックで、歌中心のシンプルでメランコリックな楽曲。#5 "Full Throttle Tribe"と#6 "Reason"はMesshugah的リズムトリックが効いた変則拍子厨が大いに喜びそうなヘヴィチューン。前者は5拍子(16分音符20個)を4で割って4拍子(16分音符5個×4)っぽく聞かせるFandango的リズムをさらに複雑怪奇に進化させたような楽曲。後者は7拍子を3連符で分割して妙なところで区切ったリズムがヘンテコながら軽快でノリがよい。後半4曲はどちらかと言えば抑制されたテンションの楽曲になっていきますが、#7 "Angels of Broen Things"のよくわからないリズムと曲後半のメロディックなギターソロはいい感じだし、#10 "In the Passing Light of Day"の静かでエピックで…窓辺から差し込む夕日のようなサウンドスケープは見事の一言。
全体的に前向きでアクティブなサウンドになっているのは、Danielが人食いバクテリアで死にかけたという体験と関連性があるらしいですね。なんにせよロック/メタルのダイナミズムが十二分に感じられる快作です。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
これは良かった。
4.どのような人に推奨するか
RoadSaltシリーズで「あぁ、PoSがOpethみたいになっちゃったなぁ(レイドバックしたプログレロック的な意味で)」と思った人、アクティブで歌心のあるPoSが好きな人に激おススメ。しかしやっていることはあくまで昔とは違っていて、過去作を取りこんだ集大成的なサウンドであることもポイントですね。
清涼院流水 / コズミック・ゼロ 日本絶滅計画
清涼院流水 / コズミック・ゼロ 日本絶滅計画 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
漫画『バーナード嬢曰く』で、トンデモSFとして言及されていたのはデビュー作『コズミック』の方だったか。その紹介のされ方で興味を持ったよね。
2.内容
2009年の作品で、2012年に文春文庫からリリースされた。作者の後書きと、森博嗣の解説が付記されている。大本であるデビュー作の『コズミック』は1996年に出たのかな?結構な時を経て、類似テーマに再度挑戦したというところか。
タイトルの通り、人間がどんどん消えていきます。主な登場人物として、計画実行部隊のタクト他、一般人視点としての夫婦、某国外国人スパイのお二人が設定されていて、それぞれの謎の行方不明だったり、大規模な洪水による街単位の破壊だったりと、人間が消えていく過程が描写される。500ページ近くの長編である。
なんだろうね。わかりやすすぎる漫画的なキャラ付(常にピアノ弾いてる子やら、全く眠らない天才少年やら…)の問題なのか、情景描写の問題なのかわからんけど、淡々としていて恐怖感や迫真さをあまり感じることができなかった。幕間で「日本の人口 残りN人」が示されるが、どうも読んでいて( ´_ゝ`)フーンとなってしまいますね。森さんの解説ではリアリティの欠如という指摘に対して反駁・養護しているが、あまり同意はしなかったかな。フィクションに対してリアルであれとは言わないけど、説得力に欠け、それ故の緊張感も伴っていないという感想になってしまったんですよね。最終盤のたたみ方はまぁ良かったかな。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
印象には残ったけど、良いかというとそれほどでも。
4.どのような人に推奨するか
名古屋とか東京が全滅して楽しい!みたいな人におススメします。
アーサー・C・クラーク / 幼年期の終わり
- 作者:アーサー C クラーク,福島 正実
- 発売日: 2012/12/21
- メディア: Kindle版
アーサー・C・クラーク / 幼年期の終わり のレビューです。
1.作品を選んだ理由
SFマガジンのハヤカワ文庫50周年記念号で、柴田勝家さんがレコメンドしてたので。『2001年宇宙の旅』は読んだことあったけど、こっちはなかった。
2.内容
原作は1953年、翻訳は福島正美さんによるもので、解説も含め1969年。文庫化自体は1979年で、特に新訳版は出ないまま今に至っている模様。装丁の変更とかはあったと思うけどね。手持ちは2019年の41刷。ちな、Arthur.C.ClarkeのCはChralesらしいですね。
一言でいえば、オーバーテクノロジーを持つ宇宙人が来たぞ、です。ほんとにそれだけ。その宇宙人との関わり方と受け入れ方、時代の変遷、人類と地球の来し方行く末を描く壮大な作品である。柴田勝家さんの書評にあった「おっ、人類規模で見たら小せぇ悩みだったな」っていう感想がスゴイ好きなんだけど、他のSF作品ですら狭い世界に見えてしまうまでの理不尽さ・無常さ・スケールの大きさが凄い。作中の『宇宙は人類のためにあるのではない』という表現がこの作品を表しているような気がする。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
読物として冗長に感じるところはなくはないが、翻訳は古く感じないし、名作です。
4.どのような人に推奨するか
スケールの大きい、人間という種族の未来についての物語です。詩的なエンターテインメントでありながら、哲学的な示唆に富んだ作品をお求めの方に。
V.A / 銀河英雄伝説列伝1 晴れ上がる銀河
銀河英雄伝説列伝1 晴れ上がる銀河 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
銀河英雄伝説のトリビュート作品ということで、妻が絶対に買うと決めていたものです。私も原作+旧アニメは通っているので、読みました
2.内容
2020年、創元SF文庫から。野良の作品ではない。田中芳樹監修(といっても序文を読む限り殆ど手は入れていないと思うけど)、レーベルは創元SF、イラストも銀河英雄伝説原作文庫と同じ星野之宣さんということで、かなりの本気度を感じる作り。著者は全員知ってたわけではないけど、一線級の作家が6人参加している。調べればわかる話だし、各作品の冒頭で著者の略歴が載っているので、ここから各作家の作品に入るのもアリだね。以下、各作家さん毎の感想。
小川一水 ラインハルトが新婚旅行で釣りをする話。キャラクターの特徴をよく捉えているとともに、細かいディテールの積み重ねが好印象。フェザーンには海がないので魚類部門がなく、両生類部門が魚類の調査分析をしてるとか、そういうのがイイよね。
石持浅海 ヤンとキャゼルヌとその奥さんの話。会話が旧アニメのあの声で脳内再生される会話中心の一編。なんでオルタンスこんなに察しがいいんですか?
太田忠司 オーベルシュタインが探偵をやる話。著者がミステリー畑の方らしく、キャラを捉えつつミステリーの雰囲気になっていて、「オーベルシュタインに安楽椅子探偵をやらせたかった」の目論見通りになっている。
高島雄哉 ヤンがオリキャラと演劇をしている。これはよくわかんなかった。
藤井太洋 ルドルフの優生思想法施行前夜譚とフェザーン発祥。原作の登場人物は一人も出てこないが、舞台設定と時代の切り取り方が良かった。ルビンスキーは偽名?襲名制だった?と思わせる。
軍勢で分けると、帝国3、同盟3ではある。帝国側は双璧やキルヒアイス、その他の上級大将は出ません。同盟側はヤン・キャゼルヌあたりが中心で、なぜか出現率のやたら高いジャン・ロベール・ラップに笑う。役所として使いやすいんだろーね…。あとルビンスキーも良く名前が出てきたね。ユリアンはいません。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
素晴らしいトリビュート作品。もっとやってくれて構わんよ。タイトルに1とあるんだから、2も出るんだろうね。頼むぜ。
4.どのような人に推奨するか
基本的に原作ファンなら買って損なしかと。キャラ推し派には出てない人がいて物足りないかもしれないが、世界観推し(箱推し)の人には推奨します。
Andromeda / Chimera
スウェーデンのプログレッシブメタル、Andromeda / Chimeraをレビュー。
1.作品を選んだ理由
長らく1st/2ndで止まってて、しばらくしてからこの3rdを買った。
2.内容
事実、2ndから4年のスパンを空けて2006年にリリースされた模様。そりゃ忘れてるわ…若者の4年は長いからねぇ。日本のAvalonからリリースされた日本盤を持っています。
方向性は2nd譲りでその延長線上。どうかなー2ndより歌モノとしての洗練がされ、演奏やアレンジはよりストレートになったように感じるかな。印象に残る歌メロは増えたというか、単純に歌がよくなってきているね。複雑な拍子や性急なリフはさらに登場頻度を減らし、メロディックな感触が強くなった。いや、7/8拍子くらいは当然のように使われているんだけど、この手のバンドでは珍しい話ではないので。一方で、#4 "Going Under"や#7 "Innner Circle"では1stっぽいキラキラしたギターとキーボードのリードが聞けたりもするが、あくまで歌を中心としたポップな感触であります。そういう意味ではメリハリのあるアルバムと言えるかもしれないが、メリの方もハリの方も微妙に盛り上がり切らない、なんとなく起伏の薄い印象を受けてしまうのはなぜなのだろうね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
もーすこし聞きこんだら違う感想が出てきそうな気はする。好きなフレーズは結構あるし、歌もいいので。
4.どのような人に推奨するか
ヘヴィでテクニカルな歌モノプログレメタル好きな方に。1st,2ndのどっちに近いかと言われると完全に2ndだと思います。
遠田潤子 / 雪の鉄樹
- 作者:潤子, 遠田
- 発売日: 2016/04/12
- メディア: 文庫
遠田潤子 / 雪の鉄樹 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
先に『冬雷』を読んでいて、まぁ面白かったのと、帯タタキの「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10 第一位」に釣られクマ。
2.内容
2014年作品、2016年光文社文庫より文庫化。歪な家庭環境、愛と無関心、罪と贖罪の物語。冒頭から、主人公は他人の家に出入りしてそこの子供の面倒を見ながらも家の者には蛇蝎の如く嫌われるという理不尽なシチュエーションが示されるが、その理由は明かされない。話が進むにつれ、現在と過去を行き来しながら、なぜそうなったのかの経緯が語られていくというつくり。
なんだろう。感動とかではない。作中人物にも指摘されている通り、主人公の贖罪は押しつけがましく自己満足的、でもでもだっての態度と謝罪の連続に気が滅入る。ある意味友人原田のその指摘シーンが一番印象に残った。理解できた人物は、この原田と、作中では人非人のような扱いをされている主人公の祖父くらい。それ以外はみんなおかしい…その人生によって狂わされたと言った方がいいのか…連中に映った。事実そういう表現なんだろうから、その受け取り方でいいんだろうけど。あーでも、『他人に認めてもらえる、感心を持ってもらえることは嬉しい』というのは理解したし本作のキーワードなんやろな、ってのは思ったよ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
ストーリーテリングはおもしろい。キャラと話は嫌い。
4.どのような人に推奨するか
読んでいて嫌な気分になる人間ドラマを読みたい人に。
Andromeda / Ⅱ=Ⅰ
スウェーデンのプログレッシブメタル、Andromeda / Ⅱ=Ⅰをレビュー。
1.作品を選んだ理由
1stに引き続き。Andromedaの中ではこれを一番最初に買ったので、結構思い入れはある。高校の頃によく聞いてたなぁ。
2.内容
2002年に日本のAvalonからリリースされた日本盤を持っています。日本リリースが先行したってことなんだろうか?その後Cenruty Mediaからもリリースされた2ndアルバム。前作ではゲストボーカルを迎えての制作でしたが、本作では正式にボーカルが加入しています。ミドルトーンに魅力を持った感情的で艶がある声をしていますね。アルバムタイトルは#4の楽曲タイトルにもなっている通り"Two is One"と読むらしいですよ。意味は知りません…。
1stからの比較と言う意味では、あるいはがっかりした人が多いのかもしれませんねぇ。前作の透明感あふれるテクニカルフレーズ満載の勢いあるプログレメタルから、リフオリエンテッドで重厚なサウンドに変化しているのだから。もちろん、ちゃんとAndromedaっぽい…というかJohan Reinhortzっぽいと言ったほうがいいのか?...冷ややかでメカニカルなフレーズはそこかしこで聞けるし、変拍子満載の複雑な楽曲構成は健在なんだけど、全体の印象と地味ではあるよね。派手なテクニカルさを求める人は、インストの#5 "Morphing Into Nothing"をリピートすることになるでしょう。私がそうでした。一方で、歌メロは圧倒的に印象的に残るようになったというか、ちゃんと歌モノとして楽曲が作られるようになったなという印象があるよね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
前作とは方向性は変わったけど、Andromeda印のプログレメタルです。まぁ思い出補正もあるかも。
4.どのような人に推奨するか
前作はテクニカルインスト派におススメでしたが、こっちは地味でリフ中心のより内省的なサウンドになっていますね。好きなんだけど、似てるバンドを挙げにくいし、リコメンドしづらいな。
Deceptionist / Initializing Irreversible Process
- アーティスト:DECEPTIONIST
- 発売日: 2016/06/24
- メディア: CD
イタリアのデスメタルバンド Deceptionist / Initializing Irreversible Processをレビュー。
1.作品を選んだ理由
イタリアのブルータルデスメタルって高品質でいいイメージがあるじゃないですか。これもイタリアのバンドらしくて、Unique Leaderからのリリースということですので、買ってみたのだ。
2.内容
2016年にUnique Leader Recordsからリリースされたバンド唯一のフルアルバム。なぜ唯一かというと、今見たら既にバンドが解散しているから…。本バンドは2013年に元Hideous Divinity(同イタリアのブルータルデスメタルバンドですね!)のAntonioくんによって設立されたらしい。
内容はまぁ極めて想定通りの真っ当なブルータルデスメタル。Hideous Divinityや同じく同郷のHour of Penanceと比較すると、装飾性がなくすっきりと研ぎ澄まされた感じのデスメタルですね。カッチリと作り上げられたマシーナリーなサウンドに、クッソ高速にメカニカルなフレーズを刻みまくり、ツーバス・ブラストビートが舞い踊る。そこかしこにフックとなる分かりやすいリフ/メロディ、ちょっとしたギターソロを配しており、総じてすごーく聞きやすい。荒々しさや暴虐性は強調されておらず、あくまでミュージシャンシップで聞かせるデスメタルといった所か。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
これはあたりの部類だと思います。
4.どのような人に推奨するか
Originっぽい、あるいはThe Facelessのデスメタル部分に特化した感じという感じですかね。メカニカルでテクニカルでデスメタル好きにお勧めします。ぐちゃぐちゃドロドロの猟奇的デスメタルとは真逆です。
Andromeda / Extension of the Wish
- アーティスト:Andromeda
- 発売日: 2001/05/29
- メディア: CD
スウェーデンのプログレッシブメタル、Andromeda / Extension of the Wishをレビュー。
1.作品を選んだ理由
PoSの新作を買ってからと言うもの、プログレメタル熱が来ているんですよね。
2.内容
2001年にCenruty Mediaからリリースされたデビューアルバム。後年正式加入したボーカルDavidくんと一緒に再録した『Final Extension』というのもあるんですが、私は持っていないので本稿は原盤のレビューとお考え下さい。
いかにもプログレメタル然としたブルーを基調としたジャケットも、音楽を印象付けてくれている。テクニカルで細かいフレーズのギターを中心としたインストゥルメンタルプレイが支配的なプログレメタル。この時はゲストボーカルが歌っていて、クセがなくストレートに伸びやかな声ではあるんだが、メロの弱さもあって歌は殆ど印象に残ってない。
一方でインストパートの充実ぶりはかなりのものがある。#1 "Words Unspoken"のイントロの透明感に溢れた高音ギターによる7/8拍子のリフが早速耳を引く。#3 "In the Deepest of Waters"も性急な7/8拍子のメロディーと慌ただしいドラムが印象的。キーボードのふにょふにょしたリードサウンド(なんていうんですか?あの音、Moogの音みたいな…)も、ユニゾン・ハモリと印象的な活躍を見せる。ヘヴィさもテクニカルさも十二分に備えているが、それ以上にマイナー調で冷ややかなメロディーが良い感じです。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
歌は弱いが、それを補ってあまりあるインストパートでこの評価ですわ。
4.どのような人に推奨するか
Dream Theaterが比較対象に挙げやすいと思うんだけど、この1stに関して言えば、Liquid Tension Experimentを北欧っぽくした、という方が近いかなぁ(歌が目立ってないという意味も込めて)。テクニカルインスト派にもおススメできる。
伊藤計劃 + 円城塔 / 屍者の帝国
1.作品を選んだ理由
『虐殺器官』『ハーモニー』が大変よかったので、こちらも是非にと。
2.内容
早世した伊藤計劃氏の遺稿がプロローグ、それを引き継ぐ形で残りを円城塔が書いた、異例の長編。プロローグは20ページほどの短いものであり、トータル500ページほどあるので、ほぼ全体が円城塔の手によるものと言って差し支えない。これ河出文庫から出てたんだね。なんでハヤカワ文庫じゃなかったんだろ。企画が河出だったのかな?2014年に河出文庫から文庫リリース。
屍者を操る技術が発達した世界、というアイデアから始まる大作エンターテインメント。歴史上あるいはフィクション上の著名人物が勢ぞろいする様、屍者を操るという世界観、大英帝国という舞台設定に、平野耕太の『ヘルシング』『ドリフターズ』を思い出してしまいますねぇ。ヘルシング卿出てくるし…。円城塔は短編集しか読んだことないんだけど、「なるほど分からん」な感想が多かった短編集に比べれば、書いてあることは大分理解できるし読みやすい方に感じる。長編故の書き方なのか、伊藤計劃の引継ぎといいう意識が強かったのか…とはいえ、それでも円城塔味が強い。本編の9割以上を担当しているのだから当たり前か。本筋に加えて知的好奇心を刺激する言葉遊びやうんちくの数々がそれっぽいなあと思いましたまる。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
でも、よく書いてくれたよね。ありがとうございます。
4.どのような人に推奨するか
SF的な要素を期待すると、ちょっと違うと思います。あくまで歴史改変モノのエンターテインメントとしてお読みください。
バリントン・J・ベイリー / カエアンの聖衣[新訳版]
- 作者:バリントン J ベイリー
- 発売日: 2016/03/31
- メディア: Kindle版
バリントン・J・ベイリー / カエアンの聖衣[新訳版] のレビューです。
1.作品を選んだ理由
SFマガジンのハヤカワ文庫50周年記念号での書評で。「アホやこのひと…」とまでの最高の賛辞を送られていた本書がとても気になっていたのだ。
2.内容
原作は1976年で、元は1983年に冬川亘訳で出ていたものが、この度の新版では大森望訳となって2016年にハヤカワ文庫SFから再登場。この作品を表現する「ワイドスクリーン・バロックSF」というジャンルが理解できたとは思っていないが、バカSFと言われるほどスケールが大きく荒唐無稽な設定がたくさん出てくるユーモラスな作品。テーマは「着る人を支配する、力ある着衣」…衣服と言う生物と言ってもいいのかもしれないが、とにかくその生命体と服飾屋を巡る壮大な宇宙の話。設定とアイデアの奔流が物凄いという点は極めて同意するけれども、別に陳腐だったり子供騙しだったりするわけではない。エンターテインメントとしての質は非常に高いし、想像を超えるような情景でありながらなんとなく絵が頭に浮かぶ絶妙なアイデアなんだよね。これは確かに面白い。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
書評を信じて良かった。
4.どのような人に推奨するか
『天元突破グレンラガン』『キルラキル』はこの作品がベースらしい。その2作品は見たことないけど、解説の設定を読むと確かに納得できる。アニメ視聴者におススメするのと、そうでなくても映画的でエンターテインメントな作品を読みたい人に普通におススメ。おもしろい映像が頭に浮かびます。
本間浩輔 / 残業の9割はいらない
残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方 (光文社新書)
- 作者:本間浩輔
- 発売日: 2018/07/18
- メディア: 新書
本間浩輔 / 残業の9割はいらない のレビューです。
1.作品を選んだ理由
しばらく前に買った新書。著者がヤフーの役員ってとこと、まぁタイトルに釣られたところと、働き方改革が叫ばれる昨今なので。
2.内容
2018年、光文社新書から。一言でいえば、ヤフーの役員が「働き方」及び働き方改革について述べる本である。刺激的なタイトルは耳目を集めるためのものであるが、当然ながら内容は一社員の視点ではなく、働かせ方・人事制度・評価制度・コミュニケーション・組織運営と言った、上位レイヤーの役職員が実践出来得る内容となっている。生産性が低いのはそもそも社員の問題ではなく、生産性の低い環境やプロセスにあるというのは、結構その通りだと思うんだよなぁ…。生産性低下の一連として挙げられているおもてなし精神の高いメールは、最近はやめるようにした。通勤距離の問題やリモートワークの拡大についても触れられていて、なんというかコロナ禍以前からちゃんとやる会社はやってるんだな、と。自分の実績と経験だから悪いようには書かない者なのかもしれないが、頷ける話が多かったなという印象。管理職レベルになったら再読してみたい。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
面白いです。全部が都合よく取り入れられるとは思わないけど。
4.どのような人に推奨するか
所謂企業に所属して会社員として働く人であれば、読む価値はあると思います。大企業の人の方が共感度は高いんじゃないかな。
Hammerfall / Legacy of Kings
- アーティスト:Hammerfall
- 発売日: 2012/09/10
- メディア: CD
スウェーデンのパワーメタル Hammerfall / Legacy of Kings をレビュー。
1.作品を選んだ理由
1st『Glory to the Brave』と共にお安くお買い求め。
2.内容
1998年にNuclear Blastからリリースされたという2ndアルバム。リリース速いっすね。手持ちはVictorから出た日本盤。こちらも20周年記念デラックスバージョンが出ているらしい。 あぁ、一聴して質は向上したと感じますね。サウンドもボーカルも太くなった。わかりやすいコーラスをより多く配した力強い楽曲もより磨かれている。音楽性は全くもって同じで、シンプルで勇壮なメロディックメタルです。装飾性がマジで全然ないんですね。ギター・ドラム・ベース・ボーカルの編成をそのまま閉じ込めたような、剥き出しの楽曲。なんか、バラードっぽい曲をやってもこの人たちは基本的にあまり湿っぽくないね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
1stよりこっちのほうが良いな!
4.どのような人に推奨するか
前作同様、シンプルでわかりやすいメロディアスなヘヴィメタルを聞きたい人に推奨。1stが好きな人ならこっちも間違いないと思いますよ。
Hammerfall / Glory to the Brave
- アーティスト:ハンマーフォール
- 発売日: 1997/09/22
- メディア: CD
スウェーデンのパワーメタル Hammerfall / Glory to the Brave をレビュー。
1.作品を選んだ理由
安く売ってた。パワーメタルでよく聞く名前だよねーってことで一つ。
2.内容
1997年にNuclear Blastからリリースされたというデビュー盤。手持ちはVictorから出た日本盤(安かった)。今では20周年記念デラックスバージョンが出ているらしいが、当然こちらはそんなんではない初期盤。
なんというか、HelloweenとかGamma Rayとか…いやもっとさかのぼってAccept(ただしこっちは歌い上げる感じでより聞きやすい)とか…とにかくボーカルオリエンテッドなパワーメタルをエッセンスのみを抽出して作ったような、超シンプルでポジティブで力強いメロディックメタル。確かにいそうでいないわね、こういうバンドは。悪く言えば予定調和的な普通のリフ・普通のメロディー・普通のギターソロといってしまえる内容なんだけど、アレンジが上手いというか、聞かせ所を分かっているなと。
…でもなんか、こういうのをピュアなヘヴィメタルって呼んでいいのだろうか?っていう違和感はある。ライブは楽しいと思う。パワーバラードっぽい#4なんかもあるんだけど、全体的に心にキュンと来る感じはしないんすよね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
歌心のあるシンプルなヘヴィメタル。別に悪いところはないんだけど、どうも、あまりいい印象にならない。プロダクションがややショボいというのもあるかもしれない。
4.どのような人に推奨するか
Heaven Shall Burn / Iconoclast
Iconoclast (Part One: The Final Resistance)
- アーティスト:Heaven Shall Burn
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: CD
ドイツのメロディックメタルコアバンド Heaven Shall Burn / Deaf To Our Prayers をレビュー。
1.作品を選んだ理由
4th『Deaf to Our Prayers』とまとめ買い。
2.内容
2008年にCentury Mediaからリリースの5thアルバム。前作から2年でのリリース。どうも安定して新作を出している元気なバンドらしい。 基本的な音楽性は前作譲りですね。甘すぎない程度にメロディーを振りまく激しいリフとボーカル、ドラムで構成されたデスメタリックでアグレッシブなヘヴィメタル。どうだろ?先に聞いた4thとそんなに違いは感じないので、前作が好きな人なら安定して聞けるんじゃないでしょうか。結構このバンドは安定した音楽性を持っているのかもしれないね。#3 のリフってCarcassの『Heartwork』に似たようなのなかったっけ?
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
この音楽性で16曲67分は長い気がする。わりと同じテンションが続くし…そんなことない?
4.どのような人に推奨するか
前作4thが好きな人なら安定して買ってよさそう。逆に、そうでもないなって人は多分このアルバムを聞いても同じ感想になると思うよ。1作も持ってない人がいた場合、少なくとも4thとこの5thはどっちを先に買ってもいいと思います。