めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Pain of Salvation / In the Passing Light of Day

In the Passing Light of Day

In the Passing Light of Day

スウェーデンプログレッシブメタルPain of Salvation / In the Passing Light of Dayをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 大ファンなので買わない理由がないです。発売日に新宿ディスクユニオンに行ったのに入荷してなかったので、仕方なく通販で買いました。

2.内容

 2017年、いつものInside Out Recordsからリリース。ボーナスCD付きの2枚組輸入盤で購入しました。その後リリースされた日本盤も購入。これはお布施。
 ちなみに、2CD盤はよっぽどのファンでなければ入手しなくていいと思います。ちょっとした曲解説(英語)と本作収録のデモバージョンが収録されています。デモの時点でかなりの部分が完成されているという印象で、逆に言えば本編の方が順当にブラッシュアップされているので本編聞けばいいかなって感じですわね。

 音楽的な特徴は、新ギタリストRangar Zolbergが大きくフィーチュアされている点、複雑でヘヴィメタリックでアグレッシブなサウンドが大いに戻ってきているという点の2点にあります。
 1点目について。本作の前に出た『Remedy Lane:ReLived』 でも素晴らしいボーカルワークで活躍をしていたRanger Zolberg君が、今回ボーカルと楽曲提供の両面で大いに貢献しています。#1 "On A Tuesday"の中間部、#3 "Meaningless"あたりはRangar君のペンによるもの。ボーカルも彼自身のものが使われています。これまでJohan Hallgrenがライブでセカンドボーカリストとして活躍していたけれども、スタジオアルバムでここまでセカンドボーカリストが明示的にアピールされたことはなかったと思う。その彼がめちゃくちゃいい声してるんですよね。もうバンド抜けちゃったけど…
 2点目については各曲の解説を通して。#1 "On A Tuesday"の複雑なリズムを持ったアクティブでライブ映えしそうなリフと、抑制されたメロから一気に目の前が広がるコーラス、ピアノと笛/弦楽器による静かでノスタルジックな中間パートと、荘厳なコーラスワークと、RoadSaltシリーズを通過したからこその新しいPain of Salvationサウンドが提示されている。#3 "Meaningless"はPVが作成されたリードトラックで、歌中心のシンプルでメランコリックな楽曲。#5 "Full Throttle Tribe"と#6 "Reason"はMesshugah的リズムトリックが効いた変則拍子厨が大いに喜びそうなヘヴィチューン。前者は5拍子(16分音符20個)を4で割って4拍子(16分音符5個×4)っぽく聞かせるFandango的リズムをさらに複雑怪奇に進化させたような楽曲。後者は7拍子を3連符で分割して妙なところで区切ったリズムがヘンテコながら軽快でノリがよい。後半4曲はどちらかと言えば抑制されたテンションの楽曲になっていきますが、#7 "Angels of Broen Things"のよくわからないリズムと曲後半のメロディックなギターソロはいい感じだし、#10 "In the Passing Light of Day"の静かでエピックで…窓辺から差し込む夕日のようなサウンドスケープは見事の一言。
 全体的に前向きでアクティブなサウンドになっているのは、Danielが人食いバクテリアで死にかけたという体験と関連性があるらしいですね。なんにせよロック/メタルのダイナミズムが十二分に感じられる快作です。

 

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 これは良かった。

4.どのような人に推奨するか

 RoadSaltシリーズで「あぁ、PoSがOpethみたいになっちゃったなぁ(レイドバックしたプログレロック的な意味で)」と思った人、アクティブで歌心のあるPoSが好きな人に激おススメ。しかしやっていることはあくまで昔とは違っていて、過去作を取りこんだ集大成的なサウンドであることもポイントですね。