めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

遠田潤子 / 雪の鉄樹

雪の鉄樹 (光文社文庫)

雪の鉄樹 (光文社文庫)

遠田潤子 / 雪の鉄樹 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 先に『冬雷』を読んでいて、まぁ面白かったのと、帯タタキの「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10 第一位」に釣られクマ。

2.内容

 2014年作品、2016年光文社文庫より文庫化。歪な家庭環境、愛と無関心、罪と贖罪の物語。冒頭から、主人公は他人の家に出入りしてそこの子供の面倒を見ながらも家の者には蛇蝎の如く嫌われるという理不尽なシチュエーションが示されるが、その理由は明かされない。話が進むにつれ、現在と過去を行き来しながら、なぜそうなったのかの経緯が語られていくというつくり。
 なんだろう。感動とかではない。作中人物にも指摘されている通り、主人公の贖罪は押しつけがましく自己満足的、でもでもだっての態度と謝罪の連続に気が滅入る。ある意味友人原田のその指摘シーンが一番印象に残った。理解できた人物は、この原田と、作中では人非人のような扱いをされている主人公の祖父くらい。それ以外はみんなおかしい…その人生によって狂わされたと言った方がいいのか…連中に映った。事実そういう表現なんだろうから、その受け取り方でいいんだろうけど。あーでも、『他人に認めてもらえる、感心を持ってもらえることは嬉しい』というのは理解したし本作のキーワードなんやろな、ってのは思ったよ。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 ストーリーテリングはおもしろい。キャラと話は嫌い。

4.どのような人に推奨するか

 読んでいて嫌な気分になる人間ドラマを読みたい人に。