めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

世界遺産検定事務局 / 世界遺産検定公式過去問題集1・2級<2019年度版>

世界遺産検定公式過去問題集1・2級<2019年度版>

世界遺産検定公式過去問題集1・2級<2019年度版>

公式テキストに引き続き、問題集の紹介。

1.作品を選んだ理由

 世界遺産検定2級の試験を2020年2月に受けようと思い、その試験対策で購入。

2.内容

 こちらも、検定の元締めである世界遺産検定事務局が出している公式本。2級については、2018年3月/7月/9月/12月の4回分の過去問が載っている。やってないけど、1級の問題も7月/12月の2回分が載っている。過去問に触れても仕方ないので、自分がやった試験対策を示す。

<前提>
 ベースとして以下を持っていたことは試験の上で役に立った。  ・中学で習う程度の日本史・世界史知識と用語がなんとなくだが一通り頭に入っている
 ・ある程度の言語感覚がある(これはドイツ語っぽいとかスペイン語っぽいとか)
 世界遺産を知らなくても、これだけで解ける、あるいは回答の選択肢を消せるような問題が多かった。

<勉強時間>
 1.5か月。テキスト購入が1月だった。

<勉強方法>
 ・テキストをなんとなく通読。試験の比重が明らかに基礎知識・日本の遺産に偏っているので、そちらを中心に。世界の遺産パートは1周直前に読んだ程度。
 ・Androidアプリの「世界遺産検定 2級問題集」を有料版(700円)で購入し、ひたすら数をこなす。全400問弱を3周は回した。特に、基礎知識と日本の遺産は5周くらい回したと思う。
 ・最後の2週間で過去問4回分に挑戦。この時点で70~80点安定して取れていたが、消去法や勘で当てた問題(本来的には理解できていない問題)や間違えた問題については、テキストに戻って理解を深める。この工程は非常に重要。

 2020年2月に試験を受け、自己採点は79点。マークミスとかなければ受かっているはず。世界遺産の登録区分(i)~(x)や、建築様式の名前は、覚えておいた方がイイね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 普通の過去問題集なので可も不可もなく。しいて言えば自己採点がめんどくさかった。

4.どのような人に推奨するか

 世界遺産検定2級を受ける人向け。純粋に問題・回答のみで解説は皆無なので、この本だけで勉強を進めることは難しい。副読本を設けることを推奨。

世界遺産検定事務局 / くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト<第3版>

くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト<第3版>

くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト<第3版>

ちょっと趣向を変えて…世界遺産検定2級を受けた(合格)ので、買ったテキストを紹介。

1.作品を選んだ理由

 世界遺産検定2級の試験を2020年2月に受けようと思い、その試験対策で購入。

2.内容

 検定の元締めである世界遺産検定事務局が出している公式本。出版はマイナビ出版(マイナビか…。 )
 本書の趣旨は書籍名が全て。世界遺産検定は試験級が上がるごとに覚えるべき遺産が増えるわけだが、2級では300件相当の世界遺産が試験範囲に含まれる。2019年3月出版なので、掲載されているのは2018年の世界遺産まで。2019年に新規登録された世界遺産(百舌鳥・古市の古墳群とか)は載っていないので、そこは注意が必要。

 単純に世界遺産のことを知るための本としてみたときに、世界遺産条約の成立過程や登録基準の考え方などといった基礎知識、日本から登録されている世界遺産18件(本書刊行時点)、及び日本以外の世界遺産を加えた300件がジャンル別・カラー写真付き、且つ地図とセットで載っているというのは、テスト対策を抜きにしても読んでいて楽しい。各パートの詳細さは試験の6割を占める基礎知識と日本の世界遺産にかなりのページが割かれている一方、残りの世界遺産はかなりコンパクトな説明にとどめられている(1ページあたり3件詰めて掲載されている場合もある)。まぁこの辺は詳細は興味を持ったら調べていく、でいいと思う。
 試験抜きにしても箸休め的にチラ見して楽しめる本ではないでしょうか。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 まぁ、さすがにこの本はないと合格はできなかったかな。特に日本の遺産は、結構細かいところまで聞かれる。

4.どのような人に推奨するか

 当然ながら世界遺産検定2級を受ける人向け。だが、代表的な世界遺産を知りたい人が手に取ってみてもいいと思う。

Cynic / Kindly Bent To Free Us

Kindly Bent to Free Us

Kindly Bent to Free Us

  • アーティスト:Cynic
  • 発売日: 2014/02/18
  • メディア: CD

アメリカのプログレッシブメタルバンド Cynic / Kindly Bent To Free Usをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 追悼Sean Reitertで、残りの作品もレビューしていきます。これでフルアルバム全部です。

2.内容

 2014年にSeason of Mistからリリースされた3rdのフルアルバム。いくつかのEP等を挟んで2008年の2ndから数年ぶりにリリースされたが、メンバーは一緒。いよいよ「メタル」成分が弱くなってきた。いや、演奏しているメロディの質や、リフが紡ぎだす雰囲気はちゃんとCynicらしさというか、過去作との連続性を感じるのですよ。ただ、さらにギターの歪みは抑えめになり、わかりやすい手数とスピード感はより減退し、その分メロディの充実がギター・ボーカル共に図られている…そんな感じ。ポストロック的な軽めで裏声多用のクリーンボーカルがかなり楽曲の中で支配的になっている。演奏そのものは全く以てCynicであるといえるが、メタリックなアグレッションはいよいよ乏しくなってきた。これがいいか悪いかは、このバンドに何を求めるかによるかな。私はメタルであることが好きな音楽の必須要件ではないと思うので全然アリなんだけど、ちょっとエキサイトメントに欠けるかなぁとどうしても思ってしまうのでした。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 これはこれで、という感じ。

4.どのような人に推奨するか

 Cynicというバンドを知りたい人は、普通に1stから順に買うことをお勧めします。ここまでくると、ちょっとジャンルが違う感じ。

坂口安吾 / 白痴

白痴 (新潮文庫)

白痴 (新潮文庫)

坂口安吾 / 白痴のレビュー。

1.作品を選んだ理由

 府中市美術館で叩き売られていた。作者名は知っていたけど、読んだことないので買った。

2.内容

 1948年に新潮文庫から発刊。7編を収めた短編集。坂口安吾は初めて読んだが、なんとも暗くてつかみどころがない。エンターテインメント的に面白いかということもなく、ただただ退廃的。あと、人間の不合理で理不尽で首尾一貫しない様子や、社会に対してMisfitsな人間が書かれているような気がした。個々のエピソードでどれがというのはないのだけれど、太平洋戦争を背景とする中で「日本などどうなってもいい」「負けて蹂躙されてもいい」「空襲は美しい」というような感情を吐くというのはやや衝撃だった。いや、もちろんそういう思いを持つ人は当然いくらでもいただろうけれども。あからさまに作品テーマの中で示すという意味で。この辺の表現は良かった。そういう意味では、『戦争と一人の女』『青鬼の褌を洗う女』の2編が好きかな。作者の「女」観はあまり納得感がないので肉欲・堕落がテーマっぽい部分は感じ入るものが少なかった。
 解説はシェイクスピアでもお馴染みの福田恆存さん。また難しいこと書いてる…   

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 坂口安吾ってこんな感じの作風なんですね

4.どのような人に推奨するか

 なかなかにハードで精神的・観念的、そして全編に立ち込める閉塞感。ハマる人にはハマりそうな雰囲気です。

Dripping / Disintegration Of Thought Patterns During A Synthetic Mind Traveling Bliss

www.discogs.com

アメリカのデスメタルバンドDripping / Disintegration Of Thought Patterns During A Synthetic Mind Traveling Blissをレビュー。タイトル長すぎて草。

1.作品を選んだ理由

 久しぶりに目に留まった。なんで買ったんだっけ?覚えてない。

2.内容

 2002年にMacabre Mementos Recordsからリリースされた唯一のフルアルバム(リリース後、ほどなく解散している)。要素としては、強力なビートダウンを持つスラム要素あり高速ブラストありのブルータルデスメタル…なのだが、そこかしこにExperimental/Avandgardeな要素が詰め込まれているのがポイント。完全なるブルータルデスメタルによる暴力的な空間と、ピアノや電子音・アコースティックギターを用いた空間とを行き来する。リフは分かりやすくキャッチーで、且つ単なるスラムリフに堕すことなく個性的な内容となっている。全体的にクリアでカラっと乾燥しているというか、猟奇的な湿っぽさがなくスポーティーな感じがいたしますね。Experimental要素はどの曲にもちょっとずつあるウワモノ・添え物といったところで、曲の半分以上を静かなパートを占めるとかではないので、デスメタルを期待して買っても問題なし。しかし、8曲22分は短いね。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 Experimental要素が面白いかというと別にだが、まあアクセントにはなっているのと、デスメタルパートは文句なくよく出来ている。

4.どのような人に推奨するか

 ブルータルデスメタルの中でもちょっと変なことやってるバンドを聞いてみたい人におススメ。あくまでブルータルデスメタルなので、Experimentalに期待しすぎないことがポイント。

下田徹 / 板前修業

板前修業 (集英社新書)

板前修業 (集英社新書)

  • 作者:下田 徹
  • 発売日: 2001/02/16
  • メディア: 新書

下田徹 / 板前修業のレビュー。板前さんの本です。

1.作品を選んだ理由

 妻のおススメシリーズ。「これ読んでると寿司が食べたくならんか?」とのこと。

2.内容

 2001年集英社文庫から発刊。作者は作家さんではなく、執筆時点で45年の活動履歴を持つ生粋の料理人で、銀座に自分の店(銀座しも田)を構えている。板前修業と題打った本書は、作者が読者を紙の上で市場や調理場にお連れし、魚の目利きや調理方法をご紹介するという内容になっている。カウンター越しに親父さんの話を聞いているかのような、優しい語り口で読者に話しかけてくれる。すぐ横道に逸れて別の話をしだしたりしょうもないオヤジギャグが入るのも愉快な点。とにかく本人が語っている感が満載で、単純に文章を読んで面白い。この手の本に期待するうんちくもいっぱいあり大変勉強になる。   

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 昆布と鰹節で出汁を取りたくなる本

4.どのような人に推奨するか

 和食・魚・海鮮が好きな人、料理が好きな人、そういった類のうんちくが好きな人におススメします。

Voivod / The Outer Limits

Outer Limits

Outer Limits

  • アーティスト:Voivod
  • 発売日: 1993/08/03
  • メディア: CD

カナダのプログレッシブメタルバンド Voivod / The Outer Limitsをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 買ったのは大昔に中古で500円。久しぶりに聞いてみた。

2.内容

 1993年リリースの7thフルで、MCA Recordsからのリリース。なんに使えばいいのかよくわからないが、3Dフィルムメガネが入っていたなぁ…。
初期はスラッシュメタルだったけど、この7thに至ってはスラッシュ要素は殆どなく、ストレートなヘヴィメタルあるいはハードロック的なサウンド。ストレートというのが正しいか分からないが…所謂テクニカル系のプログレッシブメタルとは全然違うという意味で。何が違うかというと、不協和音や浮遊感のあるコードを縦横無尽に駆使したヘンテコなギタリフですよ。宇宙をテーマにした楽曲で占められている(タイトルのOuterlimits…外側限界もそんな感じ)わけだが、その宇宙っぽさをリフをはじめとした演奏が雄弁に表現していると思う。もちろん変拍子や複雑な楽曲展開は多用されるが、彼らば別にテクニカルであることがアイデンティティではないのだ。
 好きな曲。シンコペーションを多用したドライブ感を持つ眩惑的なリフを持つロック曲 "Moonbeam Rider"、クリーントーンと怪しいメロディで盛り上がる"Le Pont Noir"(楽曲後半の浮遊感を伴って疾走するパートが最高)、7拍子のとぼけたヘンテコなリフが頭に残る"The Lost Machine"、コロコロと展開を変えながらも宇宙ポさ満点の大曲 "Jack Luminous"…特に5:26~の妖しいリフが非常に素晴らしい。これは実にイヤーワームになる。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 これはねぇ、スゴイですよ。自分はこの作品からVoivodに入ったので、そもそもスラッシュバンドと思っていない。

4.どのような人に推奨するか

 スラッシュ要素は期待してはダメ(ボーカルはスラッシュ由来を思わせる、あまり歌い上げない感じだけど)。リフや展開は天才的。不協和音やプログレッシブメタルが好きな方へ。  

日経コンピュータ / みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

日経コンピュータ / みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 話題図書としてTwitterで見かけた。一応システムに従事する者として、読んでみた。

2.内容

 2020年に日経BPから出版の単行本。10回近いサービス利用制限と作業を経て、2019年にみずほ銀行はシステムの大規模移行を終えた。その初回には結構な注目が集まっていたことと、ATM等が一通り止まるということを認識していない客の騒ぎで結構盛り上がっていたように思う。ふたを開ければ何事もなく(内部的にはあったのかもしれないけど)移行作業は完了していて。2回目以降もシステム障害が特に騒ぎになるようなこともなく、気づけば全移行Shotが終わっていたように思う。自分はプロジェクトに参画していたわけではないので、あくまで外から見た感想です。
 さて、本書ではこのシステム統合にこぎつけるまでの長い歴史を描いた書籍となっている。基本的には雑誌に掲載された記事を単行本向けに改訂・再構成したものであるらしく、単記事が複数並んでいるような印象を受けた。内容が必ずしも時系列というわけでもない。「この話さっきの章でも見たな」というような文章に出合うこともある。記事そのものは内部の当事者が書いているわけではなく、あくまで外野から見えている内容として記者が書いているものであるため、その点は差し引いて読む必要がある。
 やはり目玉は2011年の東日本大震災直後のシステムトラブルと、みずほ合併直後の障害に関する分析だろうか。システムやサービスのことを考えず部門の利益で動く組織、囲い込みのためのベンダー戦略と取引上の都合で決まる「大企業病的」な開発推移といった点は、自分が勤める会社でも大いに当てはまる部分があると感じた。システム目線ではほんとに百害あって一利なしなんだよなぁ…と思ってます。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 衝撃の暴露!といった類のゴシップ本ではなく、結構真摯な本と言える。特に面白いのはやはりシステム障害の原因と経緯を追求する第二部・第三部だな。

4.どのような人に推奨するか

 システム担当(特に銀行システムに従事する方)は読んでみるといいよ。特に会社の方針に対してある程度の判断が出来るシステム部門の役付者は読んで、自社に当てはまる部分がないか反省した方がイイ。下っ端が読んでもこの反省は生かしにくいと思う。

W・シェイクスピア / マクベス

マクベス (新潮文庫)

マクベス (新潮文庫)

シェイクスピア / マクベスのレビュー。新潮の福田さん訳。

1.作品を選んだ理由

 ハムレットリア王の次に読んだ。

2.内容

 1969年新潮文庫からの訳本。四代悲劇の中で最も遅く書かれたといわれる本作は、武将マクベスが魔女の予言を受けてダンカン王を弑逆し、自分自身がスコットランド王になってしまうという話。ハムレットの亡霊といい、本作の魔女と言い、人ならざるものが人間を脅かすのは定番なんだろうか。本人の愚かさによって没落するリアとも、叔父によって実父を殺されているハムレットとも違って、魔女の教唆があったにせよマクベスくんはあくまで自分の意思で「悪事」を行っている。つかの間の治世を得るが、最終的には夫人(この夫人も暗殺に前のめり過ぎて、マクベスくんもドン引いている…)ともども死ぬことになり、王位は元の系譜に戻るわけだが…。夫人に言われないと殺人もそもそも実行しなさそうだったし、罪を着せるために王の側近を斬殺した際の言訳(王への忠義あればこそ怒りで耐えきれなかっただのなんだの)といい、罪の意識と恐怖のためにバンクォーやその息子フリーアンスを殺そうとしてみたり、フリーアンスを取り逃がして超ビビッてたりと、なんとも言えない小物ムーブが目立つのがマクベスくんの特徴。そこが人間らしいということなのかもしれない。
 四代悲劇の中では短い作品で、ハムレットの半分ちょっと。話の筋もシンプルなので、入りやすいかもね。解説は難解だった…すまん。   

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 悲劇か?と言われるとどうだろう。

4.どのような人に推奨するか

 まぁ教養として読んでみてはいかがか。短いので読みやすいけど、自分はリアとハムレットのが好きかな?

ジョージ・オーウェル / 動物農場

ジョージ・オーウェル / 動物農場のレビュー。

1.作品を選んだ理由

 10年以上前に読んだことがある。その際は多分、開高健版で読んだ。本屋でこの「新訳版」を見かけたので買ってみた。

2.内容

 2016年、早川書房からの新訳版。オーウェルによる作品が書かれたのは1943年だが、内容がまんまソ連の体制批判だったこと・出版側がビビッてどこも発行したがらなかったことなどから、実際の発行は遅れたらしい。解説にも書かれている通り、登場人物は全て動物であり寓話的に描かれているものの、ロシア革命からスターリン体制をそのまま描いたような内容になっている。
 指導者側であるブタたちの恐怖政治以上に、自分たちが苦しい状況にある中でその指導者たちに対して何も言えない市民たちに身をつまされる。この「何も言えない」にはいろいろあるんですよ。凶暴なイヌが暴力装置として存在するから言えない、スクィーラーの喧伝する内容が正しい(誤っていると反証するすべがない)から言えない、指導者が正しいと信じ何も考えないから言わない(働きづめのロバ、シュプレヒコールのみを繰り返す羊さんたち)、言ってもどうしようもないとあきらめているから言えない、何より「何かおかしい」と違和感は覚えているけどそれを語る言葉や知識を持たないから言えない…。哀れな被害者として描かれているわけではない。被支配層に甘んじた動物たちの無力さにも警鐘を鳴らされているように思える。
 寓話的に描かれているが、現代の人間社会に所属しているものなら、必ず何かしら感じるものがあるのではなかろうか。別に自分の住んでいる国が社会主義体制でないにしても、例えば会社や学校のような組織の中においても当てはまる部分があると思うのだ。我々も動物農場の一員なのだ(自分はどの動物の位置づけかな?とか考えてみるといい)。

 確か開高健版にはなかったような気がするが…本書では序文が2編付いている(通常の序文と、ウクライナ語版の序文)。オーウェルの略歴、本作を書くにあたっての動機・着想の源、当時の時代背景が本人の言葉でよく理解できるので合わせて読むことを大変おススメする。   

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 ストーリー自体は短いしテンポもよいが、内容は深く考えさせられる。作者自身の序文も含め、とても価値ある作品。

4.どのような人に推奨するか

 先に書いた通り、人間社会に所属する者なら誰にでも。まあ敢えて言えば、冒頭挙げたようなロシアの歴史もセットで学ぶことに前向きになれる人におススメかしら。

W・シェイクスピア / リア王

リア王 (新潮文庫)

リア王 (新潮文庫)

シェイクスピア / リア王のレビュー。ハムレット同様、新潮の福田さん訳。

1.作品を選んだ理由

 ハムレットを読んだので、続きで四大悲劇の本作を読むことに。一回ディズニーシーでなくして、買いなおした…。最近『ファイアーエムブレム風花雪月』やってるけど、金鹿学級における同名貴族のファミリーネームはこちらが元ネタなんですねー。

2.内容

 1967年新潮文庫からの訳本。ストーリーは恒例の王リアが3人の娘に領地を分け与えるために、どれだけ自分を愛しているかを宣言させるというところから始まる。長女次女のゴネリルとリーガンは巧言令色で答えるが、末女のコーデリアは繕って答えることをしなかったため王は激怒して、領地を与えないようにしてしまう。…冒頭からわけが判らないというか、リア王耄碌しすぎで納得しがたい筋書きだと思うが、元ネタであるところの『原リア』はまだ説明のつく理由であったらしいので、これはシェイクスピアによる意図的な改変と言われている。その後嵐の中を彷徨することになり、フランスとの戦争の方で王は自国兵に捕らえられ最終的には死んでしまうという…ただ、この悲劇性については何とも言えない。長女次女は悪女として描かれているとは思うものの、リア王の愚かしさも大概なので。まぁ、その愚かしさゆえの悲劇ということなのかもね。グロスター伯はちょっとかわいそうだったかな。今作で初めて知ったのだが、ローマの時代より王には「道化」という奇抜な格好をした付き人がいて、結構な放言が許されていたという。本作でも王を慰めるような位置づけで重要な役割を果たしているようだが…全体的にセリフ回しや詩の表現が難しかったという印象。
 好きなセリフは、「人は常に泣きながら生まれてくる。この阿呆だらけの世界に産み落とされたことがあまりに悲しいからだ。」みたいなやつです。   

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 解説込みで。

4.どのような人に推奨するか

 個人的には『ハムレット』の方が入りやすいと思うが、一般的には四代悲劇では『マクベス』を最初に読むのがおススメらしいね(短いから)。これはハムレットよりは短く、マクベスよりは長い。お話の筋や道化の難解さがあるので、これを読むなら2冊目以降にしたほうがいいのではないかな。あと、FE風花雪月の元ネタとして読んでみるというのも趣があっていいですよ(ちょっとした関連性を見つけられるかも)。

Necroexophilia / Frantic Visions of a Xenogod

necroexophilia.bandcamp.com

アメリカのデスメタルバンドNecroexophilia / Frantic Visions of a Xenogodをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 これなんで持ってるんだっけ?全然記憶にない。多分何年か前のはるまげ堂の福袋だと思うんだが…

2.内容

 2014年にCDNというところからリリースされた1stフルアルバム。自分の手持ちがCDNだったかは自信なし。2014年結成の若いバンドだが、もう解散済みの模様。
 一言でいえばスラミングブルータルデスかな。超低音のガテラルヴォイスと、ズンズンとシンプルなリフとピッキングハーモニクスを組み合わせた「いかにも」なスタイルで音割れしそうな圧迫感で以てお送りするデスメタルサウンド。リフや展開は結構工夫しているように思う。特徴的なのは、まずドラムで…多分これはマシンドラムだと思うんだよね。ツーバス連打やスネアはまぁいいとして、シンバルに抑揚がないのでどうにも平坦な感じ。うまい打ち込みはもっと抑揚を感じさせるが、これはベタ打ちという感じがするよ。デスメタルはドラムが魅力の割合の多くを占めるので、ここに聞きごたえがないのはツラいかな。あと、バンドメンバーの担当楽器に「Sampling」があるが、オマケ的な使われ方であって音楽性を決めるようなものではない(あってもなくてもいい)です。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★---
 別にマシンドラムが全てが悪いとは思っていないのだけど、この作品でのマシンドラムは良くなかった。

4.どのような人に推奨するか

 ボーカルとギターはちゃんとしたスラムデスをやってるので、そこに加わるドラムが平坦でも良ければどうぞ。

Deeds of Flesh / Mark of The Legion

Mark of the Legion

Mark of the Legion

  • アーティスト:Deeds of Flesh
  • 発売日: 2001/08/28
  • メディア: CD

アメリカのデスメタルバンドDeeds of Flesh /Mark of The Legionをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 一通りDeeds of Fleshを聞いていくシリーズ。

2.内容

 2001年にUnique Leader Recordsからリリースされた4thフルアルバム。安定しすぎてて語ることがない。鋭い刻みと怪しいメロディに彩られたデスメタルリフが千変万化しながら高速ブラストで突進する様は、全く以て3rdの延長線上であるといえるブルータルデスメタル。やっぱりドロドロしてた1st~2ndよりはシャープな印象を覚え、聞きやすい。サウンドの方向性も含め、大きな変化はないです。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 うーん。安定してよい。どれ聞いても同じと言われると反論できないけど、聞いていて気持ちいいからいいと思っている。

4.どのような人に推奨するか

 とりあえず3rd聞いた人にはこれもおススメ。逆もしかりで互換性アリ。ファストでブラストしっぱなし&リフだらけのデスメタルが好きな人はこのバンドを聞こう。

Deeds of Flesh / Path of the Weakening

Path of the Weakening

Path of the Weakening

  • アーティスト:Deeds Of Flesh
  • 発売日: 2006/01/24
  • メディア: CD

アメリカのデスメタルバンドDeeds of Flesh / Path of the Weakeningをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 最近自分の中でリバイバルが来ているので、一通り手持ちを聞いていく。

2.内容

 1999年にUnique Leader Recordsからリリースされた3rdフルアルバム。これが自身のレーベルであるUnique Leaderを立ち上げてからの1作目なんだろうか?品番がULE-001だね。
音楽性は不変で複雑なリフとリズムにブラストビートで押しまくるという、ブルータルデスメタルの典型。前作までの違いとしては、カニバリズム的なおどろおどろしい側面が音質の向上やリフの変化(低音でズンズンやるよーなりリフより、高速刻みやメロディを追えるようなリフが増えている印象)により、邪悪でありながらも切れ味の鋭いメジャーなブルータルデスメタルになっている…気がする。メジャーといっても、アンダーグラウンドの中でのメジャーであり、基本的な路線は前作までと一緒なので、無理やり違いを述べるならというレベル。音の要素だけ取り出せば、全くいつものDeeds of Fleshです。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 安定してよい。

4.どのような人に推奨するか

 1st~2ndよりやや鋭さに寄ったデスメタルなので、初めての方はこの3rd~5thあたりから入るのもいいかもしれないですな。ブルータルデスメタル好きなら取り敢えず持っておいていいと思います。

Entrapment / Lamentations of the Flesh

Lamentations of the Flesh

Lamentations of the Flesh

  • アーティスト:Entrapment
  • 発売日: 2014/06/03
  • メディア: CD

オランダのデスメタルバンド Entrapment / Lamentations of the Fleshをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 先日デスメタル闇鍋で知った作品の2ndを見かけたので入手。

2.内容

 2014年リリースの2ndフルで、1st同様にSoulseller Recordsからリリース。Opeth的なエキゾチシズムを感じるイントロに導かれるは、前作譲りのスウェディッシュ系のオールドスクールデスメタル。ドライブ感のある疾走パートと、スローで邪悪なパートが入り混じる雰囲気は、やっぱりスラッシュメタルの延長戦上にある音楽であると感じられる。
 音質は前作より向上している。前作は南米ベスチャルスラッシュ的な生っぽさのあるサウンドだったが、今回は硬質で作りこまれたサウンドになっている。と思って調べてみると、前作1stは全楽器を中心人物のMichel Jonkerが担当したのに対し、今作ではちゃんとバンドメンバーがいて各楽器を担当してもらった模様。なるほど。ギターの真っ黒なサウンドは不変だし、音質の向上でて勢いが削がれているワケでもないので、まぁ正統進化なんじゃないかしら。メロディラインが放つ若干の湿っぽさも特徴的。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 普通に良い。特に悪い点とかはないです。

4.どのような人に推奨するか

 スラッシュ延長の邪悪でオールドスクールデスメタルが好きな人、スウェディッシュデスが好きな人。