めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

日経コンピュータ / みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

日経コンピュータ / みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 話題図書としてTwitterで見かけた。一応システムに従事する者として、読んでみた。

2.内容

 2020年に日経BPから出版の単行本。10回近いサービス利用制限と作業を経て、2019年にみずほ銀行はシステムの大規模移行を終えた。その初回には結構な注目が集まっていたことと、ATM等が一通り止まるということを認識していない客の騒ぎで結構盛り上がっていたように思う。ふたを開ければ何事もなく(内部的にはあったのかもしれないけど)移行作業は完了していて。2回目以降もシステム障害が特に騒ぎになるようなこともなく、気づけば全移行Shotが終わっていたように思う。自分はプロジェクトに参画していたわけではないので、あくまで外から見た感想です。
 さて、本書ではこのシステム統合にこぎつけるまでの長い歴史を描いた書籍となっている。基本的には雑誌に掲載された記事を単行本向けに改訂・再構成したものであるらしく、単記事が複数並んでいるような印象を受けた。内容が必ずしも時系列というわけでもない。「この話さっきの章でも見たな」というような文章に出合うこともある。記事そのものは内部の当事者が書いているわけではなく、あくまで外野から見えている内容として記者が書いているものであるため、その点は差し引いて読む必要がある。
 やはり目玉は2011年の東日本大震災直後のシステムトラブルと、みずほ合併直後の障害に関する分析だろうか。システムやサービスのことを考えず部門の利益で動く組織、囲い込みのためのベンダー戦略と取引上の都合で決まる「大企業病的」な開発推移といった点は、自分が勤める会社でも大いに当てはまる部分があると感じた。システム目線ではほんとに百害あって一利なしなんだよなぁ…と思ってます。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 衝撃の暴露!といった類のゴシップ本ではなく、結構真摯な本と言える。特に面白いのはやはりシステム障害の原因と経緯を追求する第二部・第三部だな。

4.どのような人に推奨するか

 システム担当(特に銀行システムに従事する方)は読んでみるといいよ。特に会社の方針に対してある程度の判断が出来るシステム部門の役付者は読んで、自社に当てはまる部分がないか反省した方がイイ。下っ端が読んでもこの反省は生かしにくいと思う。