めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Decrepit Birth / Diminishing Between Worlds

Diminishing Between Worlds

Diminishing Between Worlds

アメリカのテクニカルデスメタルバンド Decrepit Birth の Diminishing Between Worldsをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1st "...And Time Begins"が名盤だったので、収集。

2.内容

 2008年にUnique Leader Recordsからリリースの2ndフル。ボーカル・ギターの2名以外はメンバーチェンジとなっている模様。

 1stのSuffocation或いはDeeds of Fleshスタイルのブルータルデスメタルとは、大分趣を異にしている。一言で言えば、ブルータルさが増した中期Death、またはCynicの1st "Focus"といった感じで、とにかくギターフレーズの感触が全く違う。
 前作はデスメタル直系でメロディ感のない低音ズンズン系のリフがほぼ全体を占めていたが、今作ではメロディアスなリードメロディと浮遊感のある音階で刻まれるハモりリフが非常に多く、流麗なギターソロも多数登場することから、ブルータルテクニカルプログレデスといった感じになっている。演奏のタイトさ、ディープなデスヴォイス、曲を引っ張る高速且つ手数の多いドラムは基本的にそのまま、リズムやメロディが雄大でどっしりと構えるようになった。
 なお、#9 "..And The Time Begins"は前作ラストに収録されていた曲の再録で、曲の構造はそのままっぽい。他の収録曲とのギャップが感じられるが、全体的に攻撃性は十分高いので、アルバムとしての一貫性は保たれていると思う。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 前作とは方向性が著しく異なるが、Death要素により個性化が進んだ。そして内容はとってもハイレヴェル。

4.どのような人に推奨するか

 演奏は激烈だが、リフの感触がかなり異なっているため、メロディ不要派の真正ブルータルデスメタルファンには推奨しない。広くエクストリームメタルあるいはテクニカルデスメタルが好きな人であれば、是非聞いてみてほしい。

Decrepit Birth / ... And Time Begins

& Time Begins

& Time Begins

アメリカのテクニカルデスメタルバンド Decrepit Birth の ... And Time Beginsをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 いつ買ったかは忘れたけど、どこかのレビューサイトで好意的な評価を受けていたので買ったんじゃなかったかな。

2.内容

 2003年にUnique Leader Recordsからリリースの1stフル。当該レーベルからのリリースも頷ける、SuffocationあるいはDeeds of Fleshタイプの無調/無慈悲なブルータルデスメタル。低音でズンズンとリズミックなリフを刻むギターと、バキバキとテクニカルなベース、そして通常のビートは全く刻まず作中延々とブラストorツーバス踏み鳴らしを続けるドラムで構成された、「いかにも」なサウンド。ボーカルは汚らしさよりカッコよさのある低音ガテラルで、ワンパターンだがとても良い。全体的にカッチリと硬質なサウンドで、演奏もタイトでハイクオリティ。ドラムはMorbid AngelやHate Eternalへの参加経験もあるTim Yeungだった!
 フレーズやリズムはかなりテクニカルで、細かいフレーズやキメ・リズムチェンジが、2~3分の楽曲の中に大量に詰め込まれている。ラストを飾るアルバムタイトル曲の#9 ”...And Time Begins"は9分と見せかけて実際の曲は4分弱で終わるので、残り5分はSE。基本的にどの曲も高速でテンション高いのと、ランニングタイムが実質25分ほどなので、飽きずに一気に聞ける。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 個性的かと言われるとそうではないと思うけど、ハイクオリティなので良し。

4.どのような人に推奨するか

 オリジナルであることにこだわらず真っ当で高品質なブルータルデスメタルを聞きたい人ならば、是非手に取ってもらいたい。先に挙げたSuffocationやDeeds of Fleshのようなバンドのファンであれば気に入ってもらえると思う。ちなみに、2nd以降は音楽性がやや変わるので、真正ブルデスファンはこの作品だけで留めておいても良い。

友清裕昭 / プルトニウム 超ウラン元素の正体

友清裕昭 / プルトニウム 超ウラン元素の正体のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 ブルーバックスいいよね。これはタイトル買い。元素的に知りたかった。

2.内容

 1995年、講談社ブルーバックスから。著者は大学で原子力工学科にいたが、その後は朝日新聞に勤めるなどしているため、研究者というわけではない。

 プルトニウムとはどのような研究のもとに発見されたどういう物質であるか・どのように原子炉に利用されるか・核兵器としてどのように利用されるか・発見から現代(1943年頃~執筆当時の1995年)までにおける原子力を取り巻く日本の情勢・そして世界の情勢について、と大きくは5章に渡って展開される。
 特に第1章は繰り返し読みたい。核分裂の起こし方や研究課程、アルファ線ベータ線ガンマ線の違い、放射能放射線半減期といった基本的な知識を平易に解説するのがよい。
 政治的な訴えなどはなく、全体的に事実と歴史を客観的に述べるよう努めていると思われ、好感度が高い。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 良本。何度か読み返して勉強したい。内容は1995年時点なので、最新の情勢も調べてみたい。

4.どのような人に推奨するか

 原子力発電やその問題点は度々ニュース等でも争点になるが、原子力が何であり・何に問題があるのか正しく理解できている人は少ないのでは。この本などを読み、内容を理解したうえで自分の意見を持ちたいものだ。

Cobalt / Gin

Gin

Gin

アメリカのドゥーム/ブラック/デスメタルバンド CobaltのGinをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1st "War Metal"で興味を持ったので本作も購入。GInってお酒ですか?

2.内容

 2009年リリースの3rdフルで、Profound Lore Recordsから。ジャケット写真はアメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイだそうで、アルバムそのものも彼に捧げられている。
 1st "War Metal"で見せたブラックメタル要素はかなり消え失せていて、ドゥーム系のテイストになっているといえばいいのか。スローで長尺の曲が多く、クリーントーンによる鬱々とした展開や、クリーンボーカルで朗々と歌い上げるパートの導入などが大きな違いと感じる。ブラックメタルっぽいパートは分厚いパワーコードをかき鳴らしつつ咆哮デスヴォイスで淡々と進行するパート。フレーズ個別には、ほんのりと抒情性を感じさせるものもあり。
 音質綺麗にまとまっていて、分厚いギターとドラム・ボーカルのバランスがよい。ベースもよく聞こえます。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 あまり聞いてこなかった音なのでなんとも評価しづらいんだが、よく聞くかというと聞かないんだなぁ。

4.どのような人に推奨するか

 ドゥームデスやデプレッシブブラックのように雰囲気のあるデスメタルサウンドを好んで聞く方向けではないかしら。スピード狂には全然おすすめしません。

Cobalt / War Metal

War Metal

War Metal

アメリカのブラック/デスメタルバンド CobaltのWar Metalをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 前情報は特にないが、”War Metal”というタイトルでWar/Bestial系のサウンドを期待した。

2.内容

 2005年リリースの1stフルで、手持ちはHammerheart Recordsからの再発。
 所謂War/Bestial系ではなく、結構ストレートなブラックメタル感が強いサウンドと言える。寒々しさや禍々しさといった雰囲気は強くないカラッとした音質だが、フレーズや作曲は少しだけMayhemの"De Mysteriis Dom Sathanas"っぽいかも。ファストにブラストするパートも多いけど、スロー~ミドルでパワーコードの動きでメロディ感を出していくようなパートも結構あり、1曲は5分前後とやや長め。ボーカルはブラックメタル系の歪んだ高音シャウトで、これがブラックメタル度を上げている。
 音質も綺麗にまとまっている。総じてアメリカのBlack Witchery的なWar/Bestial系サウンドを期待すると全然違うけど、これはこれで。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 そこそこかなー。

4.どのような人に推奨するか

 2ndでは大きく雰囲気が変わるので、暴虐的なブラックメタルとして聞けるのは、本作だけかなという気がする。先入観なく聞けば音もリフもよくできているので、余裕があれば聞いてみて。

Lecherous Nocturne / Age of Miracles Has Passed

Age of Miracles Has Passed

Age of Miracles Has Passed

アメリカのテクニカルデスメタルバンド Lecherous Nocturne / Age of Miracles Has Passedをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 3rdを先に買って慌ただしいテクデスやなぁと思っていたところ、この2ndが異様に安く叩き売りされていたので、拾い上げました。

2.内容

 2009年にUnique Leader Recordsからリリースの2ndフル。3rdは曲の大部分をブラストビートで高速に突進しつつも、ヘンテコなリフやリズムの緩急で非常にテクニカルデスメタルっぽい作風だったように思うのだけれど、この2ndではもうちょっとストレートなブルータルデスメタルをやっている気がする。

 サウンドはタイトでカッチりとしている。高速ブラストをかましつつ、オールドスクールな雰囲気のあるトレモロメロディを交えたリフで展開する様は、Hate EternalとかKrisiunとかの、元気なMorbid Angel的な趣のあるデスメタルバンド達に近しいものを感じる。Krisiunがマッチョイズムを感じる人力デスメタルとするなら、こちらは冷ややかでマシーナリーなデスメタルといった趣がある。ファストブラックの連中がやりそうな重層的な和音リフが印象的で、そういったメロディも冷ややかに感じる要因の1つかもしれない。

 #3, #5や#8なんか全編スローテンポで雰囲気重視のパートがあったりするが、基本的には全編通して攻撃性を高く保って駆け抜ける28分のデスメタルアルバムとなっている。音質も非常にデスメタルとしてはクリアで大変聞きやすい。3rdよりは多少アンダーグラウンド感あるかも。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 3rdよりはこっちの方が好み。個性的なのは3rdかもしれないけど、聞いてて気持ちいいのはこちら。

4.どのような人に推奨するか

 サウンドが高品質で、ブラストが速い近代的なデスメタルが好きな人へ。Marduk等のファストブラックも好む人にはさらに親和性が高いかも。

1349 / Massive Cauldron Of Chaos

Massive Cauldron of Chaos

Massive Cauldron of Chaos

ノルウェーのブラック/スラッシュメタルバンド1349のMassive Cauldron Of Chaosをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1349紹介の続き。5th "Demonoir"は持ってないのでスキップ。なんか2019年になって新譜出ているらしいですね、買わないと。

2.内容

 2014年リリースの6thフル、Seasons of Mistから。なんかいろんなバージョンがあるらしいが、手持ちのものは10曲目にPossessedのカバー『The Heretic』が収録されている。

 1349 is Backな作品。4th-5thでのスローでアンビエントな要素はさっぱりなくなり、1曲目から高速でスラッシーな曲が並ぶ。なのだが、荒々しかった1st~3rdとは異なり、サウンドは全体的に残響音が少ないというか、小綺麗にまとまった雰囲気になっている。ギターはささくれだったような高音の強いサウンドではなく、比較的刻みに芯のあるスラッシュ風サウンド。手数足数が多く暴れまわるドラムが大いに復活しているが、こちらもさっぱりとクリアな録音になっている。スネアとバスドラがうるさくない。1stあたりの「シパパパパパ」という擬音を当てたくなるようなサウンドではなく、こちらもオールドスクールなスラッシュ風というか、重心低めのドタドタした音になっている。

 パート1つ1つを見ると、和音やトレモロリフの使い方にブラックメタル味を感じるんだが、全体としてはやや刻みの印象が強く残るかな。ギターソロや単音ギターメロディが曲中のそこかしこで聞かれるようになったのも、その印象の変化に買っている。そんな流れにあって、Possessedのカバーは結構違和感なくハマっているように思える。原曲聞いたことないからかもしれないけど。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 リフも攻撃性も高くて、とても良い。思い入れ補正で★4なんだが、クオリティ高い。

4.どのような人に推奨するか

 1st~3rdのファンに推奨できるサウンドに戻った。ブラックメタル度は下がったというか、ブラックスラッシュなサウンド。ブラストがクソ速いAura Noirだと思って聞いてみるとかどうでしょうか。

1349 / Revelations of the Black Flame

Revelations Of The Black Flame

Revelations Of The Black Flame

ノルウェーのブラック/スラッシュメタルバンド1349のRevelations of the Black Flameをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1349紹介の続き。

2.内容

 2009年リリースの4thフル、Candlelight Recordsから。手持ちは2CDで『Works of Fire, Forces of Hell』と題されたライブ盤が付属している。

 端的に言って問題作の類。6分近いゆったりしたイントロ曲の時点で既に不穏な雰囲気なのだが、アルバム全編通して、スピードを落としたスローでドゥームっぽい曲展開が続く。超高速でしばきたおすようなドラムやスラッシーな刻みリフはほぼ影を潜めており、終始テンションが低い。厳密には、途中で思い出したような高速パートもなくはないんだが、そのパートにしてもサウンドの関係か籠ってこぢんまりとしていて、攻撃性がいまいち感じられない。#3, #5, #8あたりはそれぞれ3分強ある完全なアンビエント曲で、シンセサイザーのみが支配する、特に面白くないSE的なもの。
 「1349にダーク・アンビエントな要素は求めていない」「バンドの過去実績を度外視しても、作品単体で面白くない」という2点が問題だと思います。

 付属のライブ盤は2005年、スウェーデンストックホルムでのライブであるらしい。1st~3rdからいいところの選曲をしてくれていて、こちらは非常にテンション高くハイスピードな1349サウンドを披露してくれていて文句なし。演奏は非常にタイトだし、音のバランスも良く非常にクリアなので、1stアルバムからの曲なんかは、s類はこちらの方が曲の輪郭をつかみやすいかも知れない。ドラムは激烈。こちらは高得点やな。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 本編単品なら★1か2。ライブ盤込みでこの評価。

4.どのような人に推奨するか

 1st~3rdファンには全く推奨しない。ただ、1349のライブ盤というのは現時点でないはず(DVD作品はあるけど)なので、ライブ演奏に興味がある人がライブ盤目的で買うのなら、それはそれでいいと思う。ちなみに、次作5th "Demonoir"も引き続き近い作風らしいのだが、この作品のおかげで未購入。

1349 / Hellfire

HELLFIRE

HELLFIRE

ノルウェーのブラック/スラッシュメタルバンド1349のHellfireをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1349紹介の続き。

2.内容

 2005年リリースの3rdフル、Candlelight Recordsから。引き続きメンバーも変わらず短いスパンでのリリースであり、創作意欲が旺盛であることがうかがえる。
 相変わらずブラストビート全開の超ファストなブラックメタルサウンドはさらに分離が良くクリアになってきていて、ドラムが硬質でスッキリタイトなサウンド。ギターは2nd "Beyond the Apocalypse"に近いといってよいブ厚い歪みで、メロディアスな和音を用いたトレモロかき鳴らしリフがかなり顔を出すようになっているので、前回高まったスラッシュ成分が少しブラックメタル側に揺り戻しがあったかな?という感覚。全体的には2ndの延長にある、超高速なスピード感と良質なメロディを持ったリフに彩られた魅力度の高い作品になっている。

 冒頭からブラストビート全開に邪悪なメロディで展開するトレモロリフを被せた#1 "I Am Abomination"で掴みは非常によろしい。#3 "Sculptor of Flesh"は前作譲りのスラッシュリフ・スラッシュビートが聞ける押せ押せの曲。この辺は本当にこのバンドに求める部分であり、要求事項に対して素晴らしい回答を出してくれている。
 一方で#6 "From The Deeps”あたりからはスロー~ミドルでゆったり展開するようなパートを持つ、ランニングタイムが長めの曲が配されている(曲の途中でやっぱり高速パートは入るのだけど)。そしてラストを飾る #8 "Hellfire"は、きっと彼らとしてもアイデアとして浮かんだ以上やりたくてしかたなかったであろう、「13分49秒」の曲。といっても、前半2分はイントロだったり、その中身はそれまでの曲調から大きく外れるものでもないので、どちらかというとコンセプトありきでやってみたかったのでしょうな。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 個人的な好みとしては1st/2ndの方が僅差で好きだが、これもファストブラックの名盤!

4.どのような人に推奨するか

 ファストで暴虐的な熱いブラックメタルを聞きたい人。最初に1349に入る人が手に取るなら、2ndかこの3rdがいいと思うので、是非どうぞ。

1349 / Beyond the Apocalypse

BEYOND THE APOCALYPSE

BEYOND THE APOCALYPSE

ノルウェーのブラック/スラッシュメタルバンド1349のBeyond the Apocalypseをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1stを書いたので、しばらく1349を取り上げていくよ。

2.内容

 2004年リリースの2ndフル、Candlelight Recordsから。2003年の1st "Liberation"から極めて短いスパンでのリリースとなっており、メンバーにも変更はない。
 基本的な音楽性に変更はなく、ファストブラックである。ノイズの壁だったギターサウンドからうって変わって、リフのひとつひとつや刻み音がよく聞き取れるクリア度の高いディストーションサウンドになっていて、これが全体の印象を大きく変えている。すなわち、スラッシュ成分がより高くなったように感じる。あとは、低速パートでのゆったり感も出て、速度のメリハリがよく出てきた。

 とにかく#2 "Beyond the Apocalypse"が良い。前半はリフを様々に展開させながらも、頭打ちドラム⇒ツービート⇒ブラスト⇒フィルインの嵐とどんどんテンションを挙げていき…そこから2:05付近でキメを挟んでのスラッシュリフ/ビートへの切り返し!これがものすごくカッコイイのだよ。是非聞いてほしい。
 #5 "Perished in Pain"ではスラッシュ的な高速刻みリフのイントロから入って、音の壁のような和音リフに高速ブラストを被せるファストブラックのスタイルに移行。比較的長尺で8分弱の#7 "Internal Winter"でも、邪悪でスローなヘヴィメタル然とした雰囲気から入り、高速スラッシュリフにブラストビートとさらにスピードとテンションを上げ、中盤では非常にメロディアスで哀愁を感じさせるトレモロリフを披露するなど、いずれの楽曲もなかなか展開が凝っている。

 結果として前作のランニングタイムが9曲36分(除くボーナス)だったのが、今作では9曲48分になっているが、冗長さはなく、バンドの魅力であるスピード感はそのままに曲の良さとバリエーションが増えた印象。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 前作とはまた違う感触だけど、リフの良さとスピード感で満点です。聞く頻度高し。

4.どのような人に推奨するか

 引き続きファストなブラックメタル・ブラストビートを聞きたい人にはおススメ。1stよりメジャーなサウンドとも言えるので、ブラックメタルな音質に不慣れな人は2ndからが入りやすい。今作ではスラッシュ風のサウンドも増えているので、高速ザクザクな刻みが好きな人にもアピールすると思う!

1349 / Liberation

LIBERATION

LIBERATION

ノルウェーのブラック/スラッシュメタルバンド1349のLiberationをレビュー。1349はノルウェーでペストが流行した時の年号に由来する。

1.作品を選んだ理由

 好きだから(直球)。

2.内容

 2003年リリースの1stフル、Candlelight Recordsから。Satyricon等でご活躍のFrost[Dr]さんが参加していることで有名。といっても、コンスタントに作品を発表しながらすでにバンド自体が大物感があるが。このバンドでのFrostはとにかくアグレッシブで、超高速のブラストビートを披露してくれている。
 音楽性は、端的に言ってファストブラック。ギターはノイズが如く荒々しくチリチリとしたサウンドで、最初はリフの輪郭が聞き取りづらく感じるが、生々しい音でバカスカと強めのアタックで叩かれるドラムと合わさった時のスピード感と突撃感が素晴らしい。
 ギターサウンドがノイズの壁のようになっていてわかりづらいが、所謂ブラックメタルトレモロ和音リフは結構メロディアス。たまに刻みリフや邪悪な雰囲気を助長する分散和音も登場するが、全体的にはスラッシュ要素はあまり多くなく、とにかくブラスト・ツービートで押しまくる攻撃性の極めて高いファストブラックとなっている。全体の音質はエコーがかっているものの悪くはないし、ギターがノイジーさは暴虐性のアピールに一役買っているので、デメリットにはなっていない。

 高速ブラストとトレモロリフがストップ&ゴーを繰り返すまさにこのバンドの音楽性を主張する#1 "Manifest"、中盤でスラッシュビート等を交えつつやはり高速な#5 "Pitch Black"、邪悪なクリーントーンに導かれながらどんどんスピードとテンションを挙げていく雰囲気とスピードが合わさった#6 "Satanic Propaganda"あたりがお気に入り。ラスト#10"Buried By Time And Dust"はMayhemのカバーなわけだが、原曲3:36のところを3:06と30秒もショートカットしている。いかに高速かわかりますね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 ノイジーサウンドも含めて高評価。スピード感だけなら、この1stが一番強いかもしれない。好き。

4.どのような人に推奨するか

 とにかくファストなブラックメタル・ブラストビートを聞きたい人には超おススメ。ずーっとスタタタタタ…って言ってます。

佐藤優 / 40代でシフトする働き方の極意

佐藤優 / 40代でシフトする働き方の極意という知恵 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 偶々見かけて、なにも知らずタイトルのみで購入。私はまだまだ40代ではないけど、敢えて見てみようと思った。

2.内容

 2017年、青春新書インテリジェンスから(知らないレーベルだ…)。神学を納め、外務省で活躍したが、2002年に鈴木宗男関連で背任・偽計業務妨害容疑で逮捕された経歴を持つ。その後は執筆業に主に取り組んでいるようだ。

 自己啓発書の類。40代という年代にフォーカスして、働き方・リーダーシップ・人付き合いなどに触れる。対象層が40代ということもあってか、「老後」をテーマとした問題提起と取るべき対策が示されるのが特徴と言える。書いてあることは真っ当な内容が多いと思う。理論・学問的な書籍ではなく、筆者の経験則を語るもの。参考にできる部分だけ参考にすればよい。

 何冊かこの手の本を読んでいると、複数の本・作者に書かれる似通ったソリューションが出てくるのに気づく。そういった数多くの手法の中から、一般化できるもの、あるいは自分の環境・性格・志向に合うものを選べると良いね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 普通。

4.どのような人に推奨するか

 ビジネス系の自己啓発書を読む人向け。40代とあるが、20台・30代の人でも、会社勤めする人なら読んでみてもいいんじゃないかしら。

Sarcófago / Hate

Hate

Hate

ブラジルのブラック/デス/スラッシュメタルバンド SarcófagoのHateをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Sarcofago気に入ったのでこれも買ったよ。

2.内容

 1994年リリースの3rd。2005年Greyhaze Recordsからのリマスター再発版。Wagner[Vo, GT]とGerald[Ba]は継続しているが、ドラムはついにドラムマシンになってしまったようだ。
 ドラムがマシンであることによる変化がやはり大きいか。カチカチとした均一な打音による正確なツーバス連打やブラストビートは、EP以前のドタドタしたドラムとは全く印象を異にする。逆に言うとそれ以外は前作でデスメタルに接近した音楽性の延長線上にあるもの。
 ただし、前作のDeathっぽいソロやメロディ感は減退し、よりストレートなブルータリティを披露しているように思う。一方でリフはスラッシュ的な鋭さに寄ったかもしれず、硬質なサウンドで無慈悲にガツガツ刻んでいくデス/スラッシュ作品になっております。#5 "Orgy of Files"でMetallicaの”The Thing that should nou be"っぽいリフを持つゆっくり引きずるようなヘヴィ曲が聞けるよ。ラストは、#10"The Beggar's Uprising"ではヤケクソみたいなドラムの連打が聞けるSE的な楽曲でクローズ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 私はドラムがマシンなのは気にしないので、オッケーです。

4.どのような人に推奨するか

 ドラムマシンを気にしない人で、デスラッシュ的な音が好きな人。初期Sarcofagoが好きな人に勧めるサウンドではなくなっている。

Sarcófago / The Laws of Scourge

The Laws of Scourge

The Laws of Scourge

ブラジルのブラック/デス/スラッシュメタルバンド SarcófagoのThe Laws of Scourgeをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1st, EPときてこのバンドがお気に入りになっていたので、これも入手したよ。

2.内容

 1991年リリースの2nd。Greyhaze Recordsからの再発版。Wagner[Vo, GT]とGerald[Ba]以外のメンバーはまた変わっている。
 EPもすでに1stから変質していたが、この2ndはさらに大きく変化した。サウンドは端的にいって、よりデスメタルっぽく硬質なものになっている。デスメタルといっても、スラッシュメタルの延長戦上にあったごく初期のデスメタルであって、不協和音的な刻みリフの多用・邪悪なギターメロディやギターソロの増加・複雑なテンポチェンジといった種々の要素は、デスメタル黎明期の代表格"Death"のようでもある。ボーカルもちょっとそんな感じがする。Deathはブラストビートを基本的に使わなかったと思うが、このアルバムではブラストビートはそこそこ使われている。
 #6 "The Black Vomit"は#9 "Crash, Kill, Destroy"なんかは初期っぽい突撃曲と言える(例の素っ頓狂なハイトーンシャウトが聞けるのは嬉しい)。#3 "Midnight Queen"や#8 "Little Julie"ではクリーントーンシンセサイザーを交えたイントロから始まるミドル~スローな曲が配されている。前のめりで破壊的な勢いがやや失われ、その分曲の構築性やリフのバリエーションで魅せるデスメタルサウンドとなっている印象。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 Sarcofagのカタログとして見ると音楽性が結構違ってきているが、単品で見たときにはいい曲とリフが入った初期デスメタルとして高評価できるもの。

4.どのような人に推奨するか

 Deathのような初期デスメタルが好きな人に推奨できるサウンドになっている。1st "I.N.R.I"やデモ集を聞いてアンダーグラウンド性にほれ込んだ人にはちょっと違うかもしれない。EP "Rotting"の方向性が気に入った人は、このサウンドも行けると思う。

Sarcófago / Rotting

Rotting

Rotting

ブラジルのブラック/スラッシュ/デスメタルバンド SarcófagoのRottingをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 1stの次にゲット。

2.内容

 1989年リリースのEP。手持ちのはGreyhaze Recordsからのデジパック仕様。どう見てもキリストなおじさんがいる。Wagnerによるとこのバンドは1st "I.N.R.I"リリース後に一度解散していて、1989年に再結成して作成されたのが本作らしい。ドラムはD.D.CrazyからM.Jokerなるものに変わっている。
 6分~8分台のやや長尺な曲が並び、基本的には高速トレモロのデスメタリックなリフと前作譲りのブラストビートをかましつつも、変則拍子やテンポチェンジを交えた複雑な楽曲が見られるようになっている。前作でも"Nightmare"や"Last Slaughter"といった曲にはそういった雰囲気は感じ取れたと思うが、今回は単純に突っ走るだけの曲はなくなり、構築性がより向上している。実際#6は"Nightmare"の再録で、テンポのメリハリがより明確になっていたり、裏で冷ややかなシンセサイザーを鳴らしていたりと、前作とは違った印象になっている。ドラムはあんまりうまくも早くもなく、なんだかドタドタとしたビートになっているが、それが混沌性の演出に一役買っている。このバンドに演奏のうまさとかを求めるものでもないし、それでよいのである。
 総論としてはデスメタルともスラッシュメタルともブラックメタルとも言えそうな、アンダーグラウンドで激烈な音楽。リフがいちいち鋭くてカッコイイぞ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 EPとはいえ33分あり、曲もいいので、満足度は高い。

4.どのような人に推奨するか

 前作同様、スラッシュ・デスメタル等のエクストリームな音楽が好きな人は是非。今聞いても素晴らしいし、今こんな音楽やってる連中ってあまりいないのでは。