めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

体験記:安藤忠雄初期建築原図展 個の自立と対話(国立近代建築資料館)

体験記シリーズ。「安藤忠雄初期建築原図展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 地中美術館大山崎山荘美術館光の教会なんかは見たことがあって、縁があるように思ったから。あと、実質無料だったから。建築そのものは全くの素人です。

2.内容

 場所は、三菱を創設した岩崎彌太郎の一族が住んでいたという「旧岩崎邸庭園」内にある国立近代建築資料館。国(文化庁)が運営する施設だからか展示そのものは無料なのだが、入場に工夫がいる。平日は合同庁舎正門から費用ナシで入場可能。土日は合同庁舎正門は閉まっているため、休日に行った私は庭園側から400円の入場料を支払って入場した。2012年竣工ということで綺麗な建物です。

 タイトル通り、後年制作する美術館等の大きな建物物ではなく、主に氏が初期(80年代まで)に手掛けた個人邸宅・教会・アトリエの図面や模型を展示されている。正直図面は読めないので、解説や写真・模型を主に見てました。解説は建築物ごとの由来や設計思想が丁寧に書かれているのと、3次元の模型がセットになっていることで、どういう思想で以て設計されているかを理解することができた。撮影も自由。

 広さは1.2フロア(0.2はロフト分)で見るだけならアッという間に回れてしまう。ただ、この展示会の凄いところは、70ページを超える本会のフルカラー図録が無料で入手可能なこと。事務所に行って一声かければもらえます。展示の内容がほぼ収録されているので、これがもらえるというだけでも非常な価値があると思います。2,000円くらいとっても良さそうなものなのに、これが無料とは…。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 展示そのものは★3くらいの印象なんだけど、400円で旧岩崎庭園まで入園・観覧できること、フルカラー図録が無料でもらえるという付加価値により★5。

4.どのような人に推奨するか

 建築に興味がある人は是非どうぞ。土曜の午後でも全然混雑してなかった。これ単品で見るのが憚られる人は、近接する上野の各美術館とハシゴするのもおススメ(疲れると思うけど)。

Ex.ギャラリー

外観

全体像(そんな広くない)

大淀のアトリエ模型 高所恐怖症にはキツイ?

光の教会 中に入ったことはない

体験記:特別展 三国志(東京国立博物館:平成館)

体験記シリーズ。「特別展 三国志」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 三国志演義は好きです。横山光輝の漫画や吉川英治の小説、KOEIテクモの各種ゲームソフトで一般的な知識はあるつもりなので、行ってみたよ。基本的には「演義(小説)」としての三国志に馴染んでいるので、陳寿の歴史書の方は全然知らん。

2.内容

 雨もなく気持ちよい夏らしい暑さの中、上野の東京国立博物館へ。2019年初頭に『顔真卿展』に来て以来となる(↓こちら↓)

 チケットアプリ:イープラスの「スマチケ」機能によりチケット購入も入場もスマホで完結するのは大変手軽でよろしい。もっと対応する美術館・企画展が増えて欲しい。

 まずは音声ガイド。三国志ならある程度知っているからガイドはいらないかな?とも思ったのだが、通常の音声ガイド(吉川晃司さん担当)の他、三國無双コラボの音声ガイドがあるではないか!三國無双から曹操曹丕・夏候惇・関羽の4名を担当する声優さんがキャラクターを演じるもので、通常の音声ガイドより300円高い800円だったが、無双ファンとしてはこちらを選択。結果的には非常に良かった(しかし、なぜこの魏の面々に関羽?魏にいた時期があるからかな?)。ガイドは各キャラクターが展示を一緒に回ってくれているような構成で、「フッ、この展示までたどり着いたか…(曹丕)」みたいなノリが聞いていて楽しい。

 展示本体の話。基本的に写真撮影は全作品自由。後は展示品の圧倒的な物量。展示対象は所謂三国時代のみではなく、「黄巾の乱」に始まり「晋による中華統一」までの小説等でもお馴染みの範囲。これらの発掘や研究は近年でも進んでおり、呉の武将朱然の墓だったり、曹操の墓だったりから出土した副葬品が今回かなり展示されている。
 各展示品は魏呉蜀の各国単位で展示されているケースが多く、展示の設営彩色はどことなく三國無双カラー、すなわち魏/晋=青、蜀=緑、呉=赤と色分けされているようであった。しかし、副葬品とは言え、1,800年も前の品がこれだけ綺麗に残っているというのはスゴイことだ。これでも散々盗掘にあった後らしいが…。数々の埇(ヨウ;人形)からは、当時の風俗が感じられる。プロローグで展示されていた明・清期に描かれた三国志はあくまで「物語」だけど、こちらは「史実」。曹操の墓であることを確定する決定打となった石牌に書かれた漢文「魏武王…」を見て、あぁ曹操って実在したんだな…といった不思議な感慨があった。
 曹操墓所は今回の目玉コンテンツの1つであり、墓所を実物大で再現した一画もあり。従来6世紀頃から発達したと考えられていた「白磁」が3世紀の曹操の墓から出土したというのは、先ごろニュースにもなっていたと思う。最新の研究成果が反映されていると感じた。
 あるエリアでは、演義のエピソードとして有名な「十万本の矢」のモニュメントが大胆にも天井いっぱいに張り巡らしてあり、見た目のインパクトがあってよろしい。

 顔真卿展でも思ったことだが、平成館の展示はとにかく物量がスゴイね。同チケットで常設展や東洋館にも行けるわけだが、そんな気力はなく企画展鑑賞だけでおなか一杯。平日午前であるにもかかわらず、結構な人で賑わっていたように思う。疲れた~。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 史実の観点から三国志を調べたことはなかったので、大変勉強になった。ラストトラックでの「また会おう…我々はいつでもここで待っている」的なセリフには感傷を覚えた。あぁ、できればもう1周したいね。

4.どのような人に推奨するか

 三国志ファンは行こう。無双ファンは、無双コラボの音声ガイドを必ずつけよう。

Ex.ギャラリー

関羽ゥーーー!

副葬品。よくこんなの綺麗に残ってたね。

十万本の矢!

よくわからんが、犬

曹操の墓からの出土品

曹植の庭にいた?カワイイ

三国時代の終焉を示す石碑

体験記:水戸徳川家名宝展―創造―(水戸徳川ミュージアム)

体験記シリーズ。「水戸徳川家名宝展―創造―」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 茨城県に旅行に行ったので、妻の要件で寄ってみた。

2.内容

 茨城県水戸市にある博物館。旧名は「彰考館徳川博物館」で2011年に改名されたらしい。最寄り駅は偕楽園駅なのだが駅自体が臨時駅であり、夏時期は閉場している。バスで偕楽園まで言って、そこから歩いた。結構な丘の上にあり、徒歩でいくのはそこそこにしんどい。アクセスは良くないね。本館で主として扱われる徳川の人物は、第2代水戸藩主で5代将軍綱吉の右腕として活躍した徳川光圀水戸黄門さま)、第9代水戸藩主の徳川斉昭、そして15代/最後の将軍である徳川慶喜と、水戸にゆかりのある3名。

 入場料は大人一名1,200円。展示フロアは全3フロア。展示の1つは、関東大震災で失われた刀剣を現代に再現するというコンセプトの「刀剣プロジェクト」。伊達政宗が使ったという「燭台切光忠」など、鎌倉時代の刀匠が拵えた名作と、それを現代の刀匠が再現制作した刀などが並べて展示されていた。「刀剣乱舞」とのコラボもあり、キャラクター(燭台切光忠さん)のパネルも展示されていた。
 続いては、主に文化的な蒐集品の展示。フォーカスされているのは、幕末に活躍した水戸藩9代目藩主:徳川斉昭。彼は学問に重きを置いたようで、同水戸市内にある「弘道館」を開設し広く人材を求めたという彼の取り組みが見えるような展示が数多く並んでいる。世界地図や望遠鏡など、世界に目を向けていたことがわかる。
 最終フロアは先に挙げたような関連人物のアイテムが様々に展示。着物、旅行鞄、鎧などなど。基本的に、各展示は撮影自由だった。また、フロア間の廊下には説明パネルで冒頭に述べた3名等の略歴や写真などが掲示されていて、前知識として勉強になる。併設カフェやミュージアムショップは余り見ませんでした。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 ボリュームや内容に比べると、ちょっと入場料が高いかなと感じた。

4.どのような人に推奨するか

  江戸~幕末が好きな人には良いと思います。近くにある偕楽園弘道館もセットで回る方がより楽しめると思う。それぞれ健脚なら十分歩いて回れる距離。

Ex.ギャラリー

入口

燭台切光忠(真品)

燭台切光忠(模造品)

展示コーナー

体験記:府中市制施行65周年記念 棟方志功展(府中市美術館)

体験記シリーズ。「棟方志功展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 府中市美術館は近いので、展示に関わらず行こうという心意気で行ってみた。なお、会期を間違え開催前に行ってしまい、扉の前でしょんぼりした模様。

2.内容

  棟方志功1903年生まれの日本版画家。「わだばゴッホになる」と画家を志して青森から上京し、その活動を通じて国際的な版画賞も受賞している世界的巨匠とのこと。私はこの展覧会で初めて知りました…。美術史上、志功はどのような位置づけなんだろう?

  この展示では志功の作品を幅広く展示しているが、特に連作・大作を取り上げて展示しているとのことで、壁いっぱい使った大きな版画作品が非常に多い。12枚から成る連作『二菩薩釈迦十大弟子』や、岡山県の倉敷国際ホテルのために制作され縦2m×横13mと世界最大の版画作品と言われる『大世界の柵 坤 人類から神々へ』の展示もあった。よくこんなの持ってきたね。比較的年代別に順を追って展示されていることもあり、作品の変節が見て取れる。後年の作品は人体の切り取り方というか表現の仕方に、キュビズム感(ピカソ感)があるなーと思った。同時代の人だし、影響は受けたんじゃないかな。

 解説はやや少なめに感じた。自分にあまり知識がなかったのでもう少し解説があってもよかったかなぁという気もする。でも700円でこれだけ見られれば良いでしょう。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★ー
 絵の背景などがあんまりわからなかったというのが事実だが、部分部分で感銘を受けた。

4.どのような人に推奨するか

 版画や日本絵画に興味がある人、かなぁ。

Ex.ギャラリー

撮影は全編禁止。看板だけ…

体験記:横山 宏のマシーネンクリーガー展(八王子夢美術館)

体験記シリーズ。「横山 宏のマシーネンクリーガー展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 23区エリアに行くのに飽きた&めんどくさいので、近場にある八王子美術館に行ってみようとおもった、それだけ。展示の内容はなんにも知らなかった。

2.内容

 JR八王子/京王八王子駅からしばらく歩いた先にある美術館。まさしくローカル美術館といった感じで、美術館専用の建物ではなく、一角が展示室になっているというもの。

 横山宏は北九州出身のイラストレーター・造形師。第四次世界大戦後、荒廃した29世紀という未来で繰り広げる宇宙戦争を描いたSF作品「マシーネンクリーガー(独語で"機械の戦士")」という作品で1980年代前半に人気を博す。ポイントは、月刊誌で氏がオリジナルの造型とストーリーを、ジオラマ写真と小説文で展開するというスタイル。これを月刊誌でやっていたとは、物凄いクリエイティビティだ。

 とにかく緻密でリアリティの感じられる世界観と機械の造型に感動した。空想上の物体のはずなのに、今にも動き出しそうなというか、実際に機械工学的にも動くんじゃないかと思わせるような詳細までこだわった描写。永い戦争を感じさせるウェザリング(汚し)。どことなく「生き物」味があるのは、丸っこく曲線的なデザインによる部分もあるかもしれない。
 あとわかったけど、自分は「機械生命体」みたいな概念に弱い。いや、このマシーネンクリーガーでは、あくまでこの機械たちは「道具」だと思うんだけど、同展示内にあった「竜の時代」の作品はまさしく機械生命体という感じだった。PS4ゲーム「Nier:Automata」とか超大好きなんだが、あれは自我を持った機械生命体の生き方や苦悩みたいなものを感じられて悲しみを覚える。

 フロアはそんなに広くなく、入場料も700円と安い。図録(パンフレット的な小冊子、1,500円)とプラモデルが入ったカプセルトイも買ったよ。写真撮影はALL自由だったので、写真撮っている人がたくさんいた。
 しかし、アニメや漫画のような大規模媒体とのメディアミックスもされないまま造型の魅力でカルト的な人気を30年保持し続けているというのは、とんでもないですな。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 思いがけず感動した。スゴイ。

4.どのような人に推奨するか

 氏のファンでなくても、ガンダムとかマクロスとかのロボットアニメが好きな方向けならきっと共感するものがあると思う。そうでなくても、単純に空想機械の美しいモデリングを楽しむだけでも良いと思う。

Ex.ギャラリー

入口

このディテール感よ

イラストも雰囲気がある

AFS(Armored Fighting Suit)

機械生命体くん…(;ω;)

体験記:information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美(サントリー美術館)

体験記シリーズ。「information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」展に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 同日に行ったウィーンモダン展とのハシゴありきで、徒歩で行ける近さだったので行ってみたよ。一般的でないタイトルと謎めいたコンセプトに魅かれたこともきっかけの一つ。

2.内容

 国立新美術館から10分も歩けば到着するサントリー美術館東京ミッドタウン内の施設であり、広さはさほどでもない。この企画展では、ある展示品を「inspiration(黒)」ルートと「information(白)」ルートから体験・鑑賞するという実験的な試みに挑戦している。展示品そのものは主として近代(江戸時代)の日本美術品であり、作品数だけで言えば20点強と少なめなのだが、その展示方法がとにかく独特であり、これを楽しむ展示。

 どちらのルートを進むは最初に選択可能。周回前提なのでどちらから入ってもいいのだが、自分は黒⇒白⇒黒の順番で3周した。結果的にはこれが良かったと思う。所要時間は周回込みで1時間程度。
 1周目黒ルートでは、提示される情報が非常に限定的で、時には展示品そのものですらない。キャプションは一切なし。限定された視界から見える作品の一部分であったり、作品の文様を模した全然別の物体であったり、作品の形だけを模したプラ製品だったり、作品を要素に分解して見せていたり、と様々な切り取り方で展示してある。…と書いたが、こう書けるのは2周目を回ったからであり、1周目では「それがなんであるか」の想像すらつかないものが大半。いや、出品リストがあるから正確には作品番号で洞察はできるのだが、それでも名前と展示が一致しない。疑問を抱えたまま1周目を終える。
 2周目の白ルートは、作品を生のままで見ることができ、黒ルートを補うかのような過剰とも言える大量のキャプションが設けられている。1作品あたりの説明文がものすごく多くて、読むのが大変だった。ここでようやく、黒ルートで見た作品が何であったのかが理解出来てくる。
 そして3周目、再度の黒ルート。再度黒ルートの視点で展示を見たときに、なぜ黒ルートでこのような展示方法を採ったのかがアハ体験のように見えてくる。#2『朱漆塗瓶子』は黒ルートで赤いフィルムを貼られて色が判らないが、それは作品そのものの朱に重ねていたということ。#15『菊蒔絵煙草盆』で煙草とライターが並べて配置されていた(これも美術品の一部なのかと思った)が、煙草盆であるが故の配置であること。#17『蓮下絵百人一首和歌管断簡』では帯状に壁に貼られた和紙の間から作品を覗く仕組みだったが、これはこの作品が複数枚から成る作品の一部を切り取ったものだから。この3周目で、頭の中で展示が完成したように思えた。
 

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★ー
 とにかくコンセプトありきの企画展だと思う。作品そのものにはあまり集中できなかったし作者や作品名もあまり印象に残っているわけではないのだが、そのコンセプトの面白みが評価できる。写真撮影も原則すべて自由なので、撮った写真との比較でも理解を促進できるんだけど、敢えて周回した方が楽しいと思う。

4.どのような人に推奨するか

 「美術品の展示」ではなく、「デザインやトリックアートの世界」だと思って鑑賞するのがよい。そう思える人にはきっと楽しめる企画展。

Ex.ギャラリー

2つのルート

黒ルートでは不明なものが

白ルートで理解できる

体験記:ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道(国立新美術館)

体験記シリーズ。「ウィーン・モダン」展に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 ちょっと別のとこにある美術館に行ってみたかった。これは乃木坂・六本木にある。同時期にクリムト展をやってたが、めちゃ混雑していたらしいね。

2.内容

 1700年頃のハプスブルク家から1900年頃に流行した「世紀末芸術」を中心に据え、舞台をオーストリアはウィーンに設定した比較的幅広な企画展。タイトルにあるグスタフ・クリムトエゴン・シーレが中心というわけではない。というか、そもそも展示品が絵画に限られておらず、当時の家具・調度品、衣服、建築などにも大いにスペースが割かれているのがポイント。

 クリムトに関して言えば、「ウィーン分離派」と呼ばれる新しい芸術を目指す集団を結成するあたりがやはりクロースアップされるわけだが、一番センスを感じたのは分離派展のポスターデザインだったりする。フォントやデザイン、空間の構成、いずれも非常にモダンで洗練されているように感じる。『第1回ウィーン分離派展ポスター』とかいいよね。原則この展示は撮影不可だったのだが、唯一撮影可能だった『エミーリエ・フレーゲの肖像』…結婚こそしなかったものの長らくクリムトの公私ともに気の置けないパートナーであったという彼女の肖像画があった。実物は凄く大きいんですね。フレーゲ自身はこの絵を気に入ってなかったというエピソード込みで良かった。
 エゴン・シーレは『自画像』の展示があったが、これは美術の教科書かなんかで見たことあったな。独特な塗りと、「そうはならんやろ」というジョジョの奇妙な冒険的な左手のポーズが、印象に残っていた。結構若くして亡くなってしまったんやな。

 ちなみに、音声ガイドは城田優さん。(こんな説明では不本意かもしれんが、)初代『テニスの王子様 ミュージカル』で手塚国光役を務めた彼です。いい声。内容は可もなく不可もなくでした。
 

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★ーー
 先に書いたように、展示品は絵画にとどまらず幅広いという点が、自分にとっては余りいい方向に働かなかったような感じ。個人的にはハプスブルク家及び周辺知識がもっとあれば楽しめたような気もするので、勉強したいと思います。

4.どのような人に推奨するか

 特定の作者・作品の企画展ではないので、「ウィーンの世紀末文化をモダニズムへの過程としてとらえる」というコンセプトに魅かれるものがあるならば行ってみよう。

Ex.ギャラリー

美術館の様子

エミーリエ・フレーゲの肖像

体験記:印象派への旅 海運王の夢(Bunkamuraミュージアム)

https://burrell.jp/outline/

体験記シリーズ。渋谷Bunkamuraミュージアム印象派への旅 海運王の夢」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 GW10連休で美術館に結構行ったので、その続きでなんかないかなーと思って突撃。初めてのBunkamuraミュージアム

2.内容

 19世紀イギリスで海運業で財を成したウィリアム・バレルが、収集した作品を1944年にグラスゴー市に寄贈したことで誕生したバレルコレクション。産業革命の最中にあって都会での保存は絵画を痛めると考えたとのことで、「郊外に展示すること」「英国外に持ち出さないこと」を条件としてこのコレクションは成立している。
 …日本で展示をやるのは2つめの要件に反することになるのだが、美術館がここ数年で改修するため、貸し出し可能になっているために今回限りで実現した展示であるという。

 バレルが集めてコレクションであり、特定の作家にフォーカスしたものではないのだが、エドガー・ドガのバレエ練習風景の絵がひときわ大きく取り扱われていた印象。ドガさんはバレエを見るのが好きで、なんかの権限を活かしてバレエの練習をよく見に行っていたらしいですね。バ少女たちのバレエを日々眺めるおっさんと考えるとイカン気がするが、そういったフェティシズムが生んだ名作って多分多いんだろうな。

 展覧会後半では撮影可能エリアがあり、いくつか写真を撮ってみた。ギュスターヴ・クールベが描いた保養地の美女とか、知らなかったけど海辺や船をえらく奇麗に描写するヴィジェーヌ・ブーダンの絵が気に入った。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★ー
 バレルさんの歴史はわかったけど、絵画そのものは「綺麗だなー」の鑑賞で終わってしまった感があるぜ。

4.どのような人に推奨するか

 バレルさんのコレクションなんでなんとも言えないが、タイトルの通り印象派の画家による作品が多いと思うので、印象派好きにはいいのではないでしょうか。

Ex.ギャラリー

ポスター

クールベ

ブーダン

バレルさん

須貝 駿貴 / 東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

須貝 駿貴 / 東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 ↓このイベントでもらったよ~。

2.内容

 2019年にKADOKAWAから出版された、インテリジェントな東大生YouTuber集団"QuizKnock"のメンバー、須貝駿貴氏の書籍。本品は「実験を通じて科学を楽しむ書籍」であり、且つ「QuizKnockのファンブック」であるという2つの性格を持っているため、この観点から感想を述べる。

①科学本として

 極めて真っ当に科学を解説しており、且つハイレベルな内容を含んでいる(この書籍の内容を諳んじて完全に説明できる人がいるなら、相当物理/化学に長けた人だと思う)。
 しかしながら、1つ1つの実験そのものは感覚的に理解できるもの・身近なものを用いて平易に再現可能なものが多く、三段論法的に「なぜ?」と「~~だから」を丁寧に重ねていく解説は、フルカラーの長所を生かした数多くのカラー図/写真も相まって、非常にわかりやすい。各章の実験は氏が巻末で解説する「レポート術」のフォーマットを踏襲したものになっており、導入・方法・結果・考察・要約の5パートから成り立っているため、読み味も均一で流れが理解しやすい。一方で、考察パート(特に[解説]や[もっと知りたい])は先に書いたように高度な内容を含むため、物理/化学が苦手だったり未履修の人は、最初は考察部分を飛ばして通読するのもアリかと思う。
 また、クイズプレイヤーが作成に絡んでいるからか、科学からは少し外れたトリビア的知識も入っていて、これがまた知的好奇心を満足させる。ルービックキューブの由来、魚の形をした醤油さしの名前、尊敬する科学者紹介コラム等で得られる内容も確かな満足。
   ちなみに、「科学(Science)」とは物理・生物・化学・地学等を総合した自然科学という広い概念を指すのだが、「化学(Chemistry)」は物質の結びつきや反応を研究する自然科学の一領域でありより狭い概念。本書が扱うのは前者だよ。

②ファンブックとして

 扱われる実験は、YouTube動画で既出のものがほとんど。所謂LABシリーズではない個別ネタも含まれており、元素でお買い物・一段ルービックキューブなんかはこれに相当する。ただ、それはマイナスポイントにはなっておらず、より深い解説に加えて、それぞれの実験が本書作成のために再度実施されていて、その過程写真はすべて新規撮りおろしと思われる。メインは須貝・山本・こう・ふくら・伊沢の5名(敬称略)。メンバーの写真は相当な分量になっていて、ほぼ全ページに1枚以上の表情豊かなメンバーの姿が映っていると言っていい。元素でお買い物はもう1回やったのだろうか…?動画でも参加していた三守くんも再登場。
 巻末にはメンバ5人での座談会もあり。写真量やその魅せ方といった点から、ファンブックとしての目的も大いに果たす内容になっている。その他ライター陣も参加しているが、個別コラム等はないので少し残念。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 科学書籍としての面白さもあると思うが、個人的に「レポートとしてまとめる方法」にまで追求し、その方法を踏襲した構成になっていることを評価したい。

4.どのような人に推奨するか

 メインターゲットは中高大の学生層と思われ、まさしくそのターゲットに向けておススメ可能な本。もちろん科学に興味がある人、単なるファンで科学はあんまり…な人も買ってよいでしょう。
 推しポイントであるレポート術については、「人に何かを説明するうえでの守るべき基本的な仕組み」といってもいい内容。巷にあるレポートや報告書の指南書と類似する内容とも言えるが、それだけに、科学に限らずきっと役に立つことになるはず。(会社の報告書とかでも、こういう流れを意識して書けない人なんかいっぱいいるんだから…)

体験記:生誕90周年記念 手塚治虫展(茨城県近代美術館)

体験記シリーズ。「生誕90周年記念 手塚治虫展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 茨城県に旅行に行ったので、近くにある美術館に行ってみようと思い。企画展自体を目的にしていった訳ではないのだが、結果的には大変楽しめた。

2.内容

 茨城県水戸市にある美術館で駅から歩ける好立地。漫画家:手塚治虫の誕生から漫画家を志すきっかけ、デビュー~種々の漫画作品と生原稿、アニメーションへの夢と虫プロの設立、氏の愛用品など、網羅的な展示になっている。
 作品「陽だまりの樹」に登場する手塚良庵の父・良仙が常陸府中藩の藩医であったことから、茨城ゆかりの作品として「陽だまりの樹」が特別にフォーカスされている、ということだが、この作品は読んだことないんだなぁ。フォーカスと言いつつも、企画展の一角(1/10くらい)が割かれているくらい。全体的にフロアが広く取られていて、展示がとても見やすかった。これは評価ポイント。
 しかし、今更ながら、治虫氏のアイデアと創作意欲に圧倒される。パネルの説明にあった、「漫画に映画的手法を取り込み、ストーリー漫画を作った」のところなんて、本当に革命的だったんだなと感じさせる。また、各作品の原画等もただ展示するのではなく、ひとつひとつに付けられたキャプションや治虫氏の言葉(作品に込めたメッセージ)などから作品への思いを感じ取ることができ、非常に良い。自身が作品としてちゃんと読んだことがあるのは一部の短編と、長期連載作品では『ブラックジャック』くらいだったのだが、他の作品を読んでみたいと強く思った。まずは『火の鳥』かな。

 企画展のチケットで入れる常設展では、主に茨城県にゆかりのある日本画家の作品を展示していた。その他私でも名前を知っている画家として、横山大観菱田春草の作品、外国人画家では印象派ピサロやモネの作品があった。折よく解説員によるミニガイドもあり、短い時間ではあったが理解が深まった。
 あと、併設のレストランは、値段も味も結構良い!キーマカレーハンバーガー食べた。これもおススメ。近くに食事できるところもないしね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 よい美術館。980円でこれだけ見れるなら満足でしょう。

4.どのような人に推奨するか

 作品を大して読んだことがない私でも、治虫氏のキャラクター・人生・作品への思いを追うことで楽しめた。治虫氏のファンでなくても、漫画ファンならば行ってみよう。

Ex.ギャラリー

外観

撮影可能な展示品1

撮影可能な展示品2

レストラン!

体験記:『東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab』刊行記念 須貝駿貴さん&QuizKnockメンバーによるトーク+握手会(紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA)

体験記シリーズ。表題イベントに行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 最初チケット即売り切れって聞いてたから行く気なかったんだけど、当日昼頃になんとなくwebを見たら普通に残席ありだったので、急遽参陣することにした。かなーり長文だけど、ちゃんとしたレポだよ。

2.内容

 新宿高島屋の南館7Fにある紀伊國屋サザンシアターというところ。第二部(18:00~)での参加で、行ってみると早速看板には「満員御礼」との表記。入り口ではチケットと引き換えに書籍(サイン等などの特別仕様はない普通の本)と"QuizKnockLab"の円形シールを受領。チケット3,800円で、書籍が1,500円くらいなので、イベント代は2,000円くらい。会場入り口にはファンから彼ら宛の花輪があった…ファンからってところがスゴイ。
 会場内は当然の如く95%が女子。メンズいないなぁ。心なしかおめかししている女子が多かったような気もしたけど、推しに会えるイベントから欣喜雀躍も致し方ありませんな。さて、ここからは内容のレポ。

①プレゼンパート

 伊沢氏・山本氏・ふくら氏・須貝氏の4人が元気に御登壇。開幕伊沢氏、正体不明の棒(のちに金属パイプと判明)で↓こんな感じの『西遊記スタイル』を披露する。この西遊記は、峰倉かずや先生の、あの西遊記でいいんでしょうか?
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 あと、流れは忘れたけど、斎藤一から『盲剣の宇水』さんを出してくる伊沢氏のカバー力はすげぇな。第二部(2回目)というだけあって、最初から笑いに満ちた楽しい雰囲気でイベントはスタート。

 最初のテーマは「制作秘話:誰に向けてこの本を書いたのか?」。須貝氏の答えは「人類」。ALL HUMAN BEINGS=すべての人、ということであった。文系とか理系とか関係なく誰でも読める本を目指しているということであり、換言すれば誰もが科学者である、ということに期待した書籍。なお、全ページ美麗な写真の入ったフルカラーなので、人類だけでなく色覚のある鳥類さんにもおススメ。
 各記事の並び方は教科書的ではなく意図をつかみづらいかもしれないが、著者である須貝氏が「こう読みたい」と思う順に並べているという。その意図を感じて欲しい…つまり、内容や構成を通じて著者:須貝駿貴を感じて欲しい、と。これはもう考えるとかじゃなく、感じて欲しい、ということであった承久の乱かな?)

 次のテーマは、「科学者に向いているのはどんな人か?」。これは以下3つの設問から構成されていて、これに回答すれば自分が科学者に適性があるかどうかわかるという。

1.小説やファンタジー(fantasy)が好きである
2.大勢でいるより一人が好きである
3.自分はナイスガイだと思う

 …そうですね。さて、果たして科学者に向いている人とは、1,3がYESで2がNOの人を指す。
 1はもちろん、科学的な出来事や須貝(と書いて「ストーリー」と読みます)に興味を持って楽しめる人であるということ。まぁ、偶然にもQuizKnockさんの動画もファンタジーみたいなところがありますからね…。
 2はなぜNoであるかというと、研究してわかったことをシェア(共有)してハッピー(幸せ)になることが重要であるため。そうすることで、独力では辿り着けない世界にたどり着けるのである。先の記載でもあるが、みんな同じ船の旅人であり、誰もが科学者であるということ。そして、一人でいる方が好きという伊沢氏と須貝氏は適正ない説があったが、「別になっちゃいけないわけじゃない」のである。
 3はそのままギャグ…なのだが、自身の学説や研究を進める上で、根拠のない自信はあったほうがいい。この3つ目は意外と重要だと思うぞ。研究には根気と自信が必要。

 ということで、3つ当てはまる人は、今すぐ大学院の博士課程に進みましょう。「今すぐのスパンがなげぇよ!」

②実験パート

 実験は2つ。1つは「香りが温度を下げるのか?」。ミントを塗るとスッとするという体感効果を実験するもの。この仕組みに近い内容について、直近で記事が出ているので見るといいよ。
 汗をおさえる制汗剤、なぜ冷たい?【素朴な疑問】
 実験過程は言ってみればファンサービスの一種。段ボール空気砲とミントスプレーで香りをばらまくために会場中を奔走する4名。途中から大砲を使わず直接スプレーをばらまく山本氏に笑いが起こる。ミントの香りが仄かに鼻腔を擽る。涼しくなったかどうかは会場アンケートの結果、半々くらい。
 実験結果そのものはあまり重要ではなくて、ポイントは研究における課題設定と伝え方。「ミントの香りで4度下がる」という表現は嘘は言っていないが、何が4度下がったのか、何度から何度に下がったのかを正確に伝えておらず、ディスコミュニケーションが発生している状態。ステップを踏んで確認していく必要があり、1,000℃⇒996℃と-269℃⇒-273℃(絶対零度)では全然違うのだ、というお話し。

 もう1つは、動画でもおなじみのアレ。ネオジム磁石をパイプに通したとき、金属の場合は磁石とコイルで力場が出来るので落下速度が減衰するやつ。冒頭に登場した金属パイプはこの伏線だった。ネオジム磁石が金属にくっつくハプニング、パワーが足りずはがせないふくら氏と山本氏…。なお、この実験はお説教は何もなく「見せたかっただけ」のやつでした。

③質問パート

 まぁ優秀な質問が多かったね。記憶の限り記載すると以下の通り。

  • Q1.各人が好きな法則はあるか?
    A1(ふくら).フレミングの左手の法則。力の方向性は逆(=右手の法則)でもいいはずなのに、この方向であることに神の作為を感じるから。(⇒これ聞いて、地球の自転の向きが逆だったら法則の向きも逆になりそうだなぁと思った)
    A1(伊沢).バナッハ=タルスキーの法則だなァ…これでヤシの実を2つにして無人島で生き延びンだよ…。

  • Q2.物理のノートでカラーペンを使いすぎてノート点を減点された。どのようなノートの取り方が望ましいと考えるか?
    A2(伊沢).減点されるというのは個人的に納得はできないが、先生のやり方もある。ただ、自分が覚えやすいことが一番なので、ペンの色は何色だって構わない。ノートは手段なので、結果自分が覚えて理解できていればいい。先生には『勉強大全』という本を勧めてみて欲しい。そして、重要なところはホワイトで潰し、「続きは買って読んでね!」と伝えてほしい。

  • Q3.来年から物理の授業が始まる。どんな取り組みをしたらいいか?
    A3(ふくら).物理は英語や数学と違って、あとから教科書だけで理解するのが難しい科目。力の向きや実験結果などを教科書の図のみでは感覚をつかみづらい為。先生の板書を通じて「動画として」頭に残すことが凄く重要。

  • Q4.出来ないけどやってみたい実験はあるか?
    A4(山本).リチャードソンの夢。大人数で計算を行えば天気予報の演算が人力で行えるという思考実験。
    A4(ふくら).地球上の全人類が一斉に東に走ったらどうなるかってヤツ。まずブラジルの人を起こすところから始めないといけないね!

  • Q5.プレゼンテーションで気を付けていることはなにか?
    A5(須貝).学会発表では話したいことはいっぱいあるんだけど、10分しかないので敢えて削って焦点を絞ること。細かく突っ込んだ内容は個別の質疑応答で興味を持ってくれた人に伝えればいいので、まずは自分の主張したい要点に絞って他は削るくらいで。
    A5(ふくら).動画の編集でも同じように、わかりやすく要点を絞り削る(カットする)ということを心掛けている。

 他にもあったかな?こんなだったと思うが。自分は「なんで金属パイプにネオジム磁石くっつかないんや?」とか思ってたんだけど、全体的に「いーーィい質問だぁ~!」という感じだったね。

④握手会パート

 これは各人各人の思い出があるだろうから、特に言及しません。自分はアホなトークしかできませんでした。ということで握手会を以て、イベントは〆。お疲れ様でした。

 なお、会場出口には金属パイプ実験道具がお試しできたのでやってみた。なお、スマホ等の電子機器は近づけてはいけないのだ。HDDのデータ破壊手法として確立されているくらい、確実に電子機器を破壊するので。「これはフリじゃないよ!」

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 こんな感じ。みんな話が上手くて飽きることが無かった。

4.どのような人に推奨するか

 基本的に彼らのイベントはファンなら参加して損しないクオリティがあるので、行ける人は参加するといいよ。

 ご参考↓

Ex.ギャラリー

満員御礼

書籍とシール

花輪

体験記:世界報道写真展2019(東京都写真美術館)

体験記シリーズ。「世界報道写真展2019」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 カメラ・写真好きの妻推薦。渋谷bunkamuraから近いこともあり、梯子計画で参戦。

2.内容

 場所は恵比寿ガーデンプレイス内にある東京都写真美術館。散歩がてら渋谷から30分ほど歩いて行った!展示内容は公式から以下を引用する。

世界報道写真展」は1955年にオランダのアムステルダムで、世界報道写真財団が発足したことにより、翌年から始まったドキュメンタリー、報道写真の展覧会です。毎年、1月~2月にかけて主に前年に撮影された写真を対象にした「世界報道写真コンテスト」が開かれ、十数人からなる国際審査員団によって選ばれた入賞作品が「世界報道写真展」作品として、世界中の約100会場で展示されます。
第62回目を迎える今回は129の国と地域から4,738人のフォトグラファーが参加し、78,801点の応募がありました。大賞などを含め、受賞作品を紹介する「世界報道写真展2019」は6月8日から東京都写真美術館(恵比寿)で開催します

 会場はそんなに広くなく、ワンフロアのみ。受賞作品である写真がひとつひとつ、解説とともに大判で展示されている。単写真と連作(複数の写真で1つの作品としたもの)で分かれてている。
 大賞を取った写真もそうだけど、1枚のインパクトは単写真の方が大きいね。現代社会・一般ニュースでは、中南米やアフリカ地域での紛争状態などの現状を伝えるものが多く、写真の背景や「この写真が全体のほんの一部でしかない点」などを考えると、見ていて精神的にどんよりする。どこだかの中東ではサッカーの応援も男女別で隔離させられるんだね。 唯一心安らぐのは、日本の四季折々の風景写真を映像で繋げた短いビデオを上映している一角。
   ボリューム的には30分~1時間で回れるくらい。入場料も800円と安い。同館別フロアでやっていた写真展もセットで見ても良かったかもしれないが、この時はとにかく疲れていて無理だった。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 冬公募~春賞発表~夏展示というサイクルで毎年やっている。毎年見に行くようにしたいな。

4.どのような人に推奨するか

 写真好きや世界の時事問題に興味のある人向け、ということになるんだろうか。万人に推奨とは言えないなぁ。基本的にハッピーな写真はないので、その点は認識していくべし。

Ex.ギャラリー

チケット

Sarcófago / I.N.R.I

I.N.R.I.

I.N.R.I.

ブラジルのブラック/スラッシュ/デスメタルバンド SarcófagoのI.N.R.Iをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 ブラックスラッシュ・ベスチャルブラックを聞く流れで源流として到達。多分皆そうだと思いますが、私はこの1stから聞き始めた。

2.内容

 1987年1stフル。手持ちのはGreyhaze Recordsからリマスター再発リリース。I.N.R.Iとは一般的にキリスト架刑時の文章として添えられ『ナザレのイエスユダヤの王』を意味する。ジャケットの無頼ぶりがカッコよすぎ。手持ちのものは2012年再発版と思われる(デジパックではないやつ)。本編である#1-#9の他、1986年のデモ"Black Vomit"から3曲、ライブ音源から3曲が収録されている。
 楽曲の方は、初期Sodom風の低音刻みリフや高速トレモロパワーコードリフを中心に、D.D.Crazy[Dr]のブラストビートとWagner Antichrist[Vo]のデスヴォイスが冴え渡る、ほぼデスメタルな内容。1987年という時期からするとドラムは特にスゴく、一般的なツービート・スラッシュビートはほぼ顔を出さず、高速ブラストビートとフィルイン・テンポチェンジで構成されている。前のめりな演奏も相まって偶に拍子が判らなくなるが、リフや楽曲は聞きやすく聞かせ所がそこかしこに配備されているため楽曲の魅力度は高いといえるであろう。後期作品では楽曲がよりデスメタルっぽくなり複雑さを増すが、その萌芽がすでに見て取れる部分もある。
 デモよりもギターのサウンドがヘヴィかつ鋭くなっているのと、エフェクトも効かせた低音デスヴォイスが特徴。デモ版の"Satanas"はやっぱりハイトーンシャウトがばっちりキマっており、演奏も本編より性急でテンションが高い。やっぱこれだよ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 1987年にこんな音楽やっていて、アルバムリリースできている事実もスゴイ。ジャケットのメンバー写真や、コープスペイントの始祖となりMayhem等の北欧ブラック勢にも影響を与えたという伝説的な面も含めて、文句なしの名作。

4.どのような人に推奨するか

 スラッシュ・デスメタル等のエクストリームな音楽が好きな人は是非聞いていただきたい。今から入手するなら大体ボーナストラックはついてくると思うが、是非ボーナス付きを手に入れていただきたい。前述の通り、ボーナストラックの演奏も本編とは違った、本編以上の魅力があります。

体験記:ラファエル前派の軌跡展(三菱一号館美術館)

体験記シリーズ。三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 GW10連休の美術館目標の1つ。ル・コルビュジエ展を見た後にその場の勢いではしごした

2.内容

 ラファエルはルネサンス期(15世紀頃)に活躍した芸術家の一人。一方このラファエル前派という派閥は19世紀後半にイギリスで興ったもの。
 この活動は、端的に言ってブラックメタルの興りに近いものがあると勝手に捉えていて、当時流行しているものに対するカウンターカルチャーとして発生している。Tシャツ短パンでデスメタルを歌う連中に反旗し、Venom/Sodom等の初期スラッシュメタルに回帰しようとした2nd Wave ブラックメタルと同じように、彼らはずっと昔の自然をありのまま捉えるラファエル以前への回帰を標榜した。

 イギリスの画家はあまり取りざたされないイメージがあるが…。メインで展示されていたもので印象に残っているのは、やはりロセッティとミレイかな。
 ダンテ・ガブリエル・ロセッティはほんわかと柔らかく繊細な描写ながら、力強い(ゴツい)美女の絵が多い。あと、イニシャルであるD/G/Rを組み合わせたサインがセンスフルだと思った。
 ジョン・エヴァレットミレイは、とにかく女の子がカワイイ(キャッチコピーが「美しい、だけじゃない」なのにこんな感想で申し訳ないが)。離婚状を受け取った女子みたいな絵がなんとも良かった。有名なオフィーリア(シェイクスピアハムレットに登場する姫)も見たかったが、さすがになかった。ほとんどの作品で撮影OKだったのも嬉しい。

 東京駅すぐそばにあるジョサイア・コンドル設計による建物もロンドン風の豪奢な雰囲気で美しい。午前中に行った国立西洋美術館の無機質で合理性を追求した建築とは真逆の印象。常設展はなく企画展のみということだが、次の展示も行ってみたい。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 思い付きで行ったけどめちゃ良かった。ミレイとロセッティは収穫だな。

4.どのような人に推奨するか

 イギリスの画家が好きあるいは興味がある人かな。単純に美しい絵が好きでもいいと思う。

Ex.ギャラリー

記念撮影用のオブジェクト

外観

ロセッティの絵画とサイン

可愛いが悲しげなミレイの絵

Sarcófago / Die...Hard

Die Hard

Die Hard

ブラジルのブラック/スラッシュ/デスメタルバンド SarcófagoのDie...Hardをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 2016年位から所謂ベスチャルブラックを聞くようになっていたが、しばらくSarcófagoは聞いていなかった(後回しにしていた)。2017年初頭、ディスクユニオンで見かけたI.N.R.Iを買ったところ、えらくカッコよくて感動したのだが、折よくデモ集である本作が出ていたので喜々として購入したのだ…。

2.内容

 2015年Greyhaze Recordsからのリリースで、初期のデモ作品をまとめたコンピレーション盤。調べればわかる情報ではあるが、以下に出展をまとめておく。

  • #1~#8
     1985年に録音された未リリースのデモ。"Satanas"、"Nightmare"、"Third Slaughter(1stでは"Last Slaughter")"といった名曲を2バージョン収録。
  • #9-#12
     1986年にリリースされたデモ "Satanic Lust"から。曲目は前項と同様。
  • #13
     コンピレーション盤 "Warfare Noise I"の時のアウトテイク。
  • #14
     1st収録"I.N.R.I" のリハーサル音源。
  • #15-#17
     1987年リリースのデモ "Christ's Death"から。1stアルバム出た後なのに、なぜ収録曲のデモを?
  • #18
     後にEP "Rotting"に収録される"Alcoholic Coma"のリハーサル版。
  • #19
     後に2nd "The Laws of Scourge"に収録される"Secrets of a Widow"のリハーサル版。
  • #20
     4th "The Worst"時のアウトテイク。

 聴きどころは前半のデモ集。楽曲自体はほぼ完成していて構成上1stアルバムとの違いは余りないと思う。演奏も音圧も軽いのに、若々しさと前のめりなエネルギーがとても魅力的。1stアルバムの方が速さや安定感、ヴォーカルのドスの強さなど品質面で勝っているだろうが、何度も聞き返してしまうのはこっちのデモ盤だったりする。
 もっとも違うのはWagner Antichrist[Vo,Gt]氏のボーカルで、まだ深みの少ない吐き捨てヴォイスと、素っ頓狂なハイトーンシャウトが個人的にかなりツボにハマる。"Satanas"などは1stアルバムでは、イントロや楽曲ラストの『セイタ↑↑↑ナァーァーーーース!』でのハイトーンシャウトがないので物足りないのですよ。。。その他の楽曲もデモの方がハイトーンシャウトが聞けて嬉しい。
 装丁もデジパック仕様で綺麗。メンバーのコープスペイント・レザージャケット・ガンベルト3点セットがキマった写真も異様にカッコよく見えるから不思議だ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 音質はデモレベル。楽曲と演奏はテンション高くて最高です。

4.どのような人に推奨するか

 たいていの人は1st "I.N.R.I"から入ると思うのだが、気に入った人は是非これも聴いてみてほしい。私はむしろこのデモ集聞いてから更に1stを(というかSarcofago)を好きになったし、何ならこの作品を一番聞いている。