めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

須貝 駿貴 / 東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab

須貝 駿貴 / 東大流! 本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 ↓このイベントでもらったよ~。

2.内容

 2019年にKADOKAWAから出版された、インテリジェントな東大生YouTuber集団"QuizKnock"のメンバー、須貝駿貴氏の書籍。本品は「実験を通じて科学を楽しむ書籍」であり、且つ「QuizKnockのファンブック」であるという2つの性格を持っているため、この観点から感想を述べる。

①科学本として

 極めて真っ当に科学を解説しており、且つハイレベルな内容を含んでいる(この書籍の内容を諳んじて完全に説明できる人がいるなら、相当物理/化学に長けた人だと思う)。
 しかしながら、1つ1つの実験そのものは感覚的に理解できるもの・身近なものを用いて平易に再現可能なものが多く、三段論法的に「なぜ?」と「~~だから」を丁寧に重ねていく解説は、フルカラーの長所を生かした数多くのカラー図/写真も相まって、非常にわかりやすい。各章の実験は氏が巻末で解説する「レポート術」のフォーマットを踏襲したものになっており、導入・方法・結果・考察・要約の5パートから成り立っているため、読み味も均一で流れが理解しやすい。一方で、考察パート(特に[解説]や[もっと知りたい])は先に書いたように高度な内容を含むため、物理/化学が苦手だったり未履修の人は、最初は考察部分を飛ばして通読するのもアリかと思う。
 また、クイズプレイヤーが作成に絡んでいるからか、科学からは少し外れたトリビア的知識も入っていて、これがまた知的好奇心を満足させる。ルービックキューブの由来、魚の形をした醤油さしの名前、尊敬する科学者紹介コラム等で得られる内容も確かな満足。
   ちなみに、「科学(Science)」とは物理・生物・化学・地学等を総合した自然科学という広い概念を指すのだが、「化学(Chemistry)」は物質の結びつきや反応を研究する自然科学の一領域でありより狭い概念。本書が扱うのは前者だよ。

②ファンブックとして

 扱われる実験は、YouTube動画で既出のものがほとんど。所謂LABシリーズではない個別ネタも含まれており、元素でお買い物・一段ルービックキューブなんかはこれに相当する。ただ、それはマイナスポイントにはなっておらず、より深い解説に加えて、それぞれの実験が本書作成のために再度実施されていて、その過程写真はすべて新規撮りおろしと思われる。メインは須貝・山本・こう・ふくら・伊沢の5名(敬称略)。メンバーの写真は相当な分量になっていて、ほぼ全ページに1枚以上の表情豊かなメンバーの姿が映っていると言っていい。元素でお買い物はもう1回やったのだろうか…?動画でも参加していた三守くんも再登場。
 巻末にはメンバ5人での座談会もあり。写真量やその魅せ方といった点から、ファンブックとしての目的も大いに果たす内容になっている。その他ライター陣も参加しているが、個別コラム等はないので少し残念。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 科学書籍としての面白さもあると思うが、個人的に「レポートとしてまとめる方法」にまで追求し、その方法を踏襲した構成になっていることを評価したい。

4.どのような人に推奨するか

 メインターゲットは中高大の学生層と思われ、まさしくそのターゲットに向けておススメ可能な本。もちろん科学に興味がある人、単なるファンで科学はあんまり…な人も買ってよいでしょう。
 推しポイントであるレポート術については、「人に何かを説明するうえでの守るべき基本的な仕組み」といってもいい内容。巷にあるレポートや報告書の指南書と類似する内容とも言えるが、それだけに、科学に限らずきっと役に立つことになるはず。(会社の報告書とかでも、こういう流れを意識して書けない人なんかいっぱいいるんだから…)