めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Yattering / Human's Pain

 

Humans Pain

Humans Pain

 

ポーランドデスメタルバンドYattering / Human's Painをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

 だいぶ前から2ndは持っていたのだが、偶々1stのこれを見かけ、安かったので購入。

 

2.内容

    1998年リリースの1st。Seasons of Mistから2001年に再リリースされたもので、Brutal TruthやSlayerのカバー、後に2ndに収録される曲をボーナストラックに含む全14曲57分。

 曲展開が複雑なテクニカルデスメタルという方向性は2ndと同じなのだが、サウンドはこちらの方が好み。ギターの音色は、2ndが鋭い剃刀とするならこの1stは太い鉈とでもいうか、Cannibal Corpseとかのアメリカンデスメタルのようである。太いベースがベロンベロンと幅を利かせているのも、その印象を強めている。ドラムも演奏は精密で細かいフレーズをたたき出しているが、音はドラムの生っぽさがある。終始激速という感じではないです。ヴォーカルは普通の威厳ある低音デスヴォイスだが、やはり喚きや語りのような声などのバリエーションを見せてくる。

 総じて息苦しいような密度があり、2ndとは受ける感触が異なる。一般的にはたぶん2ndの方が「いい音」なのだと思うけど、こちらのジメジメとした暗さと圧力はアンダーグラウンドデスメタル感があって非常に良い。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★-

 個人的には2ndよりいいんじゃない?と思います。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 ベースがうるさく、複雑な曲を見せるブルータルデスメタル好きには結構おススメ。

三浦しをん / 格闘するものに〇

 

格闘する者に○ (新潮文庫)

格闘する者に○ (新潮文庫)

 

 三浦しをん / 格闘するものに〇 のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 作者名だけ知っていて読んだことはないが、敢えてデビュー作から読んでみるのもよかろうと思い。

 

2.あらすじ(内容)

 2000年の作品。主人公である女子大生可南子が自分の好きなこと「漫画」を仕事にしようと就職活動に苦戦しながら、書道家の老人との恋、家族との確執の様が描かれる。就職活動を結構を克明に描いていて、且つそこまで全力でもなかったりどこか呑気だったりする様がリアルである(面接をすっぽかしてしまうとか)。自分も似たような時期に就職活動をしたりしていたので、背景には共感できた。青春小説といってよいのではないか。弟や家族(父親)をめぐるドラマは、物語のスパイスといった感じ。

 

3.感想/評価

 ★★★ーー

 さくっと読めました。最新作も読んでみたい。

 

4.どのような人に推奨するか

 多分同時代に就職活動を経験した人の方が面白く読めるのではないかと思います。

 

Incantaion / Tribute to the Goat

 

TRIBUTE TO THE GOAT [12 inch Analog]

TRIBUTE TO THE GOAT [12 inch Analog]

 

 

アメリカのデスメタルバンドIncantationのTribute to the Goatをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    安定のIncantation集め。これはLPではなくCD版です。

 

2.内容

    1997年リリースの2016年再発版、スタジオライブ作品+デモ音源集。前半8曲がスタジオライブ、後半4曲が1990年のデモ。ライブは1stから3曲、2ndから1曲、後に出る3rdからも1曲。EPからの曲やカバーもあるみたいです。

 スタジオライブなので観客の声などはなく、演奏も非常にRAWでクリア。ライブ盤としてではなく、コンピレーションアルバム的に聞くのがよろしいかと。

 デモはさすがに初期のデモだけあって音質はアンダーグラウンド感があるが、演奏は非常にしっかりしてる。後に1stアルバムに収録される曲などがあり、リフのセンスはすでに素晴らしいものを発揮している。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

    ★★★--

  ライブもスタジオライブで超熱い!という感じではないので。ファン向けでしょう。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 1st~3rdあたりのIncantationを気に入って、さらに深く聞きたいという人へ。最初に買うアルバムではない。

 

 

Incantaion / Infernal Storm

 

Infernal Storm

Infernal Storm

 

 

アメリカのデスメタルバンドIncantationのInfernal Stormをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

 2ndの次に買ったのがこれ。この内容に結構感動してこのバンドを集め始めた。

 

2.内容

    2000年リリースの4th。メンバーは中心人物のJohn McEntee以外がまた変わっているらしいが、作品の方向性は前作と大きな変更はなく、つまりは安心して聞ける王道のデスメタル

 少なくとも4thまでの作品の中では一番聞きやすいのではなかろうか。要因と思われるのは、前作以上に音質がよくキレのあるサウンドと、ややキャッチーでわかりやすいリフ。緩急ある展開は相変わらずなのだが、邪悪なトレモロリフがよりメロディアスに聞こえるようになり、スローな低音リフも耳に残る感じがする。もちろんIncantationとして、という話であって、メロデス化したわけでは全然ないので、安心していただきたい。8曲40分とバランスもいい。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★★

 一番よく聞くわ。おススメ。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 聞きやすさを備えつつ、ハイクオリティです。Incantationの最初の1枚として。

Incantaion / Diabolical Conquest

 

Diabolical Conquest

Diabolical Conquest

 

  

アメリカのデスメタルバンドIncantationのDIabolical Conquestをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    Incantation集めの一環です。気に入ったので全部聞く所存。

 

2.内容

    1998年リリースの3rd。作風は同じだが、結構受ける印象は違う。いい意味でメジャー感が出てきていると思う。

 まず、音が全体的にソリッドになった。ギターは厚みがありよく歪みながらもリフの輪郭がよく伝わり、ドラムは硬質でタイトなサウンドになっている。だからかもしれないが、全体的に1st/2ndよりスピード感・疾走感が増しているように思える。実際なファストなパートは結構多め。といってもスローで邪悪なパートは健在であり、ラストを飾る#8では16分47秒のドゥーム曲が待ち構えている。

 ボーカルも変わっていて、初期の沈み込むような深さ・低さのデスヴォイススとはちょっと違うが、威厳あるグロウルを聞かせており、よくハマっている。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★★

 即効性が高くサウンドも良い。改めて聞き比べると、彼らのアルバムの中でも結構好きな方だなこれ。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 スローでドゥームなIncantationを期待する向きにはちょっと違うのかもしれないけど、サウンド・演奏・曲に優れた高品質なデスメタルなので、デスメタルファンは持っていて損はない。

矢野健太郎 / 数学物語

 

数学物語 (角川ソフィア文庫)

数学物語 (角川ソフィア文庫)

 

 矢野健太郎 / 数学物語のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 ブックオフで偶々見かけて、タイトルにひかれて購入。 

 

2.あらすじ(内容)

 1961年当時の本で、おそらく年少者向けに書かれた数学の歴史読本。ものを数えるという概念・手法から始まり、古代エジプト古代ローマでの数字や、ギリシア数学における各種定理の成立、1,500年代以降の近代数学史も一部語られる。どちらかというと歴史解説よりで、全体の8割は小学算数で説明できる内容。ニュートンオイラーも後半登場するが、オイラーの公式等は出てこず、一筆書きの問題(ケーニヒスベルクの橋)の紹介などで終わっているのは少し物足りない気もする。そして本はそのまま非常にあっさりと終ってしまう。 

 

3.感想/評価

 ★★★--

 優しく説くという意味ではこの上なく成功していると思う。数学を学ぶことに限らないが、「ある定理があって、なぜそうなるのか」を理解することは非常に大切だと思う。三角形の面積の求め方でもなんでも、公式を知っているだけではなく、なぜその公式が導かれるのか証明できる方が楽しいし応用が利くと思うのだ。

 

4.どのような人に推奨するか

 算数・数学にちょっと興味がある文系の人。数学ガチ勢は知っていることしかないのではないかと思うが、歴史部分の話には興味を持てるかも。小学児童にもいいんじゃないでしょうか。

Yattering / Murder's Concept

 

Murder's Concept

Murder's Concept

 

 ポーランドデスメタルバンドYattering / Murder's Conceptをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

 購入は相当前なので仔細は思い出せないのだが、#8 Anal Narcoticをどこかで聞いて、出だしの細かい不協和音でハモるリフに恐怖を感じたのがきっかけ。

 

2.内容

    2000年リリースの2nd。曲順からすると、手持ちのはSeasons of Mist盤。Relapseからのリリースもあったようだ。

 細かいドラミングと複雑な曲展開・テンポチェンジで魅せるテクニカルデスメタルと言える。ギターリフそのもののテクニカルさや細かさではなく、リズムや曲作りの方でテクニカルさを出している。基本的にはハイテンポで進む展開が多いが、徹頭徹尾ブルータルというわけではなく、空白を生かすような聞かせ方をしたり・変拍子で不気味なリフを刻んだりするパートもあり。ギターソロも結構決めてくる。ヴォーカルは輪郭のある低音デスヴォイスを中心に、エフェクトかかったダミ声・高音喚きなどの様々なサウンドを聞かせる(エフェクト声は好きではないが…)

 サウンドは高品質。ギターは、スラッシュメタル風とも感じられる、棘のある感じのディストーション。ドラムはカチカチと精密でややマシーナリーな印象も。同郷だからそう思うだけだと思うけど、VaderやDecapitatedに近しい音の感覚(と思って調べたら、これらのバンドのマスタリングを手掛けたこともある方のプロデュースだそうで)。あくまでサウンドの話で、音楽的にあまり似てるとは思っていないです。

 

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★--

 気に入っている曲はあるし高レベルでまとまっているとは思うが、個人的にあまりボーカルが好みでないのが惜しい。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 テクニカルかつ突進力・暴虐性のあるデスメタル好きにはおススメできます。ジャケ怖い。

阿久悠 / 歌謡曲の時代

 

歌謡曲の時代―歌もよう人もよう (新潮文庫)

歌謡曲の時代―歌もよう人もよう (新潮文庫)

 

阿久悠 / 歌謡曲の時代のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 間欠的に歌謡曲を聞きたくなる時がある。昨年末は山口百恵をよく聞いていたわけだが。偶々見かけ、阿久悠さんといえば数多くの歌謡曲の作詞担当をされている方ということで、面白そうで手に取ってみた。

 

2.あらすじ(内容)

 99作品の詩をテーマに、曲の背景や当時の出来事を軽妙に語る随筆集。作品は70~80年代の歌謡曲が中心であり、本作が書かれたのは2000年代のことなので、20年以上前のことを今の目線で語る。「今はもはや歌謡曲の時代ではない」「昔はいい時代だった」といった寂しさを文章からも感じるが、文体も相まって湿っぽさやいやらしさは感じない。

 リアルタイムでは全くない私でも知っている曲がたくさんあり、取り上げられている曲だけで楽しめる。レコード会社・作詞家・作曲者等が一体となって、ヒットを作ろうとする気概みたいなものが熱く感じられる。番組「スター誕生」でアイドルを産み出す際の「複数の作詞家が10台アイドルのデビュー曲を手掛けるとどうにも似たようなものができてしまう。それを避けるには一人の作詞家があえて違う志向を以て詩作をするしかないのである」という考え方など、非常に面白かった。

 自作自演するアーティスト(と呼ばれるようになった人たち)と比較すると、こういった歌謡曲は低く見られているような気もするが、どちらも全力でいいもの(あるいは売れるもの)を作ろうとしておりそこに貴賤はないと思うし、アート性が過剰に取り上げられる必要もないのである。 

 

3.感想/評価

 ★★★★★

 99作が納められた随筆ということで、どこから読んでもいいし、1編は短く読みやすい。歌謡曲を知る史料という意味でも興味深いし、読み物としても普通に面白い。

 

4.どのような人に推奨するか

 70~80年代の歌謡曲をリアルタイムに聞いていた方はもちろん、後追いで歌謡曲に興味がある方にも(歌謡曲に興味がなくても、現代でもCM等で再利用される曲が多いので、きっと既聴のものがある)。

 

Fallujah / Dreamless

 

DREAMLESS

DREAMLESS

 

 アメリカのテクニカルデスメタルバンドFallujah / Dreamlessをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    2ndと一緒に購入したので、これも初Fallujahである。

 

2.内容

    2016年リリースの3rd。Unique LeaderからNuclear Blastに移ったようです。

うーん、これは凄い。基本的には前作の方向性であるところの、Cynic的な浮遊感・オリエンタル感を纏ったメロディ・デスメタル調の刻みやドラミングデスヴォイスに大きな変わりはないのだが、それぞれのエッセンスがさらに強化されている。方向性としては暴虐性の方ではなく、より幽玄・壮大・メロディアスな方に振れた。

 クリーンギターやアンビエント風なパートの増加、効果的に使用されるエレクトロサウンド、女声によるメロディをなぞるボーカルパートの増加などが挙げられる。もちろんその裏に刻まれるリフやドラムフレーズはメチャクチャ細かくて技巧的であり時には高速ブラストビートも飛び出すのであるが、そんなパートであってもその上には大きなメロディが覆いかぶさっている。様々なアレンジと良質なメロディを伴った各曲はシームレスに接続され、エモーショナルな統一感がある。ジャケットの雰囲気にも合っている。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

    ★★★★★

 これは本当にすごい。久々に感動的な作品です。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 前作よりプログレッシブさやメロディ成分が増えた分、Dream Theaterなどのテクニカルメタルファンなどにも寄り訴求する音になったと思う(メタル聞き始めの頃にDream Theaterファンになったこともあり、こういう音楽は好み)。

 構成要素は項番2にて挙げた通りではあるのだが、そういった各要素の好悪を抜きにしても楽曲の魅力は素晴らしいものがある。是非聞いてみてほしい。

小川洋子 / 博士の愛した数式

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

小川洋子 / 博士の愛した数式のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 第一回(2004年)本屋大賞受賞作品とのことで。読書初心者なのでこういう賞をとりあえず指針にするのである。

 

2.あらすじ(内容)

 ある時から記憶が80分しか保たなくなった数学者、その家へ家政婦として派遣された私とその息子√(ルート)が織りなす物語。文面も世界観も優しい穏やかなもの。

 

3.感想/評価

 ★★★--

 なんとなく淡い色調を感じる描写はよかったが、お話は特に盛り上がるとかそういうたぐいのものではなく、あっさりとしたもの。個人的な志向としては、もっと数学に絡めたお話があってもよかったなあと思う。

 

4.どのような人に推奨するか

 ミステリーのような刺激やどんでん返しではなく、美しいあたたかな文学を求める方にかな。

 

Incantaion / Mortal Throne of Nazarene

 

Mortal Throne of Nazarene

Mortal Throne of Nazarene

 

 アメリカのデスメタルバンドIncantationのMortal Throne of Nazareneをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    10年以上前に買ったIncantation最初の1枚…なんだが当時全然ピンとこなかったので最近まで眠っていた。

 

2.内容

    1994年リリースの2nd。作風は特に大きな変化はなく、暗いリフにスローとファストを行き来する展開、ディープなデスヴォイスに彩られた純なデスメタル

 今聞くとそうでもないのだけど、ギターの音になんだか厚みを感じずパッとしない印象が強かった。実際聞き比べても1stやそれ以前のラフ(Blasphemous Cremation)の方が分厚くどす黒く聞こえるのだが(1st等はリマスター版なんだろうか?)。

 別途ラフミックス盤であるUpon The Throne of Apocalypseというアルバムもあるということで、そちらのサウンドはどうなのか気になる。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★--

 先述の音の関係で、どちらかといえば聞かない方かも。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 曲とリフは相変わらずなので、Incantationが好きな人は買ってよい。一般的には名盤とされているぞ。

Fallujah / The Flesh Prevails

 

The Flesh Prevails

The Flesh Prevails

 

 

アメリカのテクニカルデスメタルバンドFallujah / The Flesh Prevailsをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    名前だけは聞いたことはあって、ディスクユニオンのデスコアエリアにあったので買ってみました。Unique Leaderからのリリースなので超デスメタル的なのかと思いきや…

 

2.内容

    2014年リリースの2nd。演奏はデスメタル的な刻みとブラストビート、デスヴォイスが基調になっているが、浮遊感・オリエンタル感のあるゆったりしたメロディが全体を支配している全体的には暴虐性よりプログレッシブでエピックな雰囲気が勝る。刻みリフもメロディアスで複雑なものが多い。キーボードも荘厳で重厚な雰囲気づくりに一役買っている。

 ちょっとKeep of KalessinのEpistemologyを思い出した。あるいは、CynicのFocus(1st)を現代的且つよりデスメタル的に延伸させると、こうなるのかなという感じです。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

    ★★★★-

 なるほどなーという感じ。この手のジャンルは詳しくないのですが、これは良いですね。先日買ったThe Facelessよりこちらのほうが好み。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 高速・複雑なパートが大半で、キャッチーなメロディやフレーズも多いので、かったるいプログレ系が苦手な方でも素直に聞けると思います。即効性高し。

オスカーワイルド / サロメ

 

サロメ (岩波文庫)

サロメ (岩波文庫)

 

 

オスカーワイルド / サロメのレビューです。岩波文庫版です。

 

1.作品を選んだ理由

 CryptopsyのNone So Vileのジャケットが「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」そのものだからです。

https://www.metal-archives.com/images/1/9/9/199.jpg

 

2.あらすじ(内容)

 1890年代にリリースされた新約聖書をもとにしたオスカーワイルドの戯曲。あらすじはWikiを読んだほうが早い。非常に短いお話だが、内容とビアズレーの挿絵が相まって、非常に淫猥・背徳的な雰囲気がある。だが、それが惹かれる理由かと。

 役者は劇作家・演出家とのことで、翻訳は劇のセリフ本みたいになっていてテンポが大変よろしい。

 

3.感想/評価

 ★★★--

 中古で買ったので、1959年の本で旧字体が多く、読みやすいとは言い難い。今出ている岩波文庫は違うのだろうか?買いなおしてみたい。内容は面白い。わがまま少女サロメちゃん、萌えを連発する若きシリア人など、割とキャラクターが面白い。いろいろな人が題材にしたくなる理由もわかる。

 

4.どのような人に推奨するか

 ちょっと毒のある話が好きで、キリスト教的世界観に興味がある人、Cryptopsyのジャケでうんちくを語れるようになりたい人など。

Incantaion / Onward to Golgotha

 

Onward To Golgotha [Explicit]

Onward To Golgotha [Explicit]

 

 

 アメリカのデスメタルバンドIncantationのOnward to Golgothaをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    Incantation集めの一環。1stだけど買ったのは私は後のほうなんです。

 

2.内容

 1992年リリースの1st。先に紹介したBlasphemous Cremationからの6曲がすべて収録されており、音楽性に変化はない(というか、このバンドは最新作まで基本的に音楽性は一貫している)。

 1stで追加された5曲は比較的ファストなパートが多めで、アルバムトータルの印象としてはスピード感が上がっている。6曲32分だったのが、11曲46分だからね。それ以外の内容を説明すると全く同じになるので、割愛。聞いているのがリマスター盤だからかもしれないけど、やはり分厚くヘヴィで湿り気のあるサウンドは秀逸。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

    ★★★★-

  オールドスクールデスメタルの名盤。極めて純粋。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 あまり人気ないみたいだけど、80-90sの初期デスメタルオールドスクールデスメタルが好きな人は聞いたほうがいい。war/bestialブラックメタルの邪悪さとも通じるものがあると思うし、私もブラックメタルを通ってからこっちに来た。Incantationの最初の1枚としても申し分なし。

 

阿辻哲次 / タブーの漢字学

 

タブーの漢字学 (講談社学術文庫)

タブーの漢字学 (講談社学術文庫)

 

 

阿辻哲次 / タブーの漢字学 のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 京都の漢字ミュージアム行ったときにお土産で買いました。

  

2.あらすじ(内容)

 言い換え・性・死・名前に関するタブーの歴史を解説。

 女房言葉の言い換えで「しゃもじ」「ひもじい」の言い換え(伏せ言葉)は面白かった。食に関する言葉を恥ずかしいものとされ、「ひだるい⇒ひ〇〇い」と伏せ、そこが「文字(もじ)」という言葉に置き換わった結果が「ひもじい」である。同様に「杓子⇒しゃ〇〇⇒しゃもじ」。

 名前については、中国における名前の「避諱」の文化。皇帝など身分が高いものの漢字はあらゆる文書に使えないことから、辞書も含め欠筆されたり文字が置き換えられたりという話。

 こういった内容が各章で語られる。

 

3.感想/評価

 ★★★★-

 漢字・中国語のエキスパート(研究者)が書いた本で、学術文庫でありながらも、内容は卑近で親しみやすい内容が多い。表現も平易で、トリビア的に面白く読める。

 

4.どのような人に推奨するか

 雑学好き、言語・言葉が好きな人には結構刺さるのでは。