阿久悠 / 歌謡曲の時代
1.作品を選んだ理由
間欠的に歌謡曲を聞きたくなる時がある。昨年末は山口百恵をよく聞いていたわけだが。偶々見かけ、阿久悠さんといえば数多くの歌謡曲の作詞担当をされている方ということで、面白そうで手に取ってみた。
2.あらすじ(内容)
99作品の詩をテーマに、曲の背景や当時の出来事を軽妙に語る随筆集。作品は70~80年代の歌謡曲が中心であり、本作が書かれたのは2000年代のことなので、20年以上前のことを今の目線で語る。「今はもはや歌謡曲の時代ではない」「昔はいい時代だった」といった寂しさを文章からも感じるが、文体も相まって湿っぽさやいやらしさは感じない。
リアルタイムでは全くない私でも知っている曲がたくさんあり、取り上げられている曲だけで楽しめる。レコード会社・作詞家・作曲者等が一体となって、ヒットを作ろうとする気概みたいなものが熱く感じられる。番組「スター誕生」でアイドルを産み出す際の「複数の作詞家が10台アイドルのデビュー曲を手掛けるとどうにも似たようなものができてしまう。それを避けるには一人の作詞家があえて違う志向を以て詩作をするしかないのである」という考え方など、非常に面白かった。
自作自演するアーティスト(と呼ばれるようになった人たち)と比較すると、こういった歌謡曲は低く見られているような気もするが、どちらも全力でいいもの(あるいは売れるもの)を作ろうとしておりそこに貴賤はないと思うし、アート性が過剰に取り上げられる必要もないのである。
3.感想/評価
★★★★★
99作が納められた随筆ということで、どこから読んでもいいし、1編は短く読みやすい。歌謡曲を知る史料という意味でも興味深いし、読み物としても普通に面白い。
4.どのような人に推奨するか
70~80年代の歌謡曲をリアルタイムに聞いていた方はもちろん、後追いで歌謡曲に興味がある方にも(歌謡曲に興味がなくても、現代でもCM等で再利用される曲が多いので、きっと既聴のものがある)。