三田一郎 / 科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで
三田一郎 / 科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで のレビューです。
1.作品を選んだ理由
国立の書店で、ブルーバックス売り上げトップテンみたいなディスプレイがあったんすよ。その1位がこれだった。タイトルも興味を引いたので購入。
2.内容
2018年、講談社ブルーバックスからの刊行です。著者は素粒子物理学が専門であり、且つカトリックの聖職者(助祭…司祭の次くらいの職位だそうだ)を務めておられる。ご自身の2つの強みを存分に活かして書かれた、著者だからこそ書ける本なのではなかろうか。
内容は主に宇宙に関する物理学の発見・発展の歴史と、発見者たる学者たちの神への信仰の在り方についてです。どれだけこの世界の仕組みを解き明かしていったとしても、学者たちが神の存在そのものを疑わないのは「その根源的な要因、あるいは法則をデザインしたもの」がいるという発想に基づいているようなのですね。偶像的だったり、教義を垂れたりするような存在ではなく、そのような根源的存在を認めているということです。
本書のもう一つの視点として、キリスト教がどのようにこれらの物理学上の発見を受け止めたか、というのがあります。ガリレオガリレイに対する異端裁判などが有名ですが、キリスト教が天動説を支持する立場は「聖書の記載にあるかどうか(記載と矛盾しないかどうか)」という点にあったんんですね。逆に矛盾しない内容であれば科学的な発見とは仲良く共存できるようで、宇宙の始まりを示すビッグバン理論については、「ビッグバンが神の御業であり、神が宇宙が作ったと言えるからOKです」ということになるらしい。そして宇宙が始まるビッグバン以前の出来事については研究してはいけない(認められない)ということらしいです。
そんな感じ。難しい数式は出てこず極めて読みやすいと思います。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
面白い。単純に物理学の概略的な歴史の勉強にもなります。
4.どのような人に推奨するか
タイトルそのまんまなので、物理学・キリスト教・宗教と科学と相克などのキーワードに心魅かれる人は是非読んでよろしいかと思います。