めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

半藤一利 / 世界史のなかの昭和史

半藤一利 / 世界史のなかの昭和史 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 『昭和史』を読んだ後に、本作の存在を知った(妻が買ってきた)ので読了。半藤一利さんが近々で逝去されたこともきっかけではあったかな。

2.内容

 ベストセラー『昭和史』は2009年の本だっけ?こちらは『昭和史』を受けて世界史に目を向けた書籍となっています。平凡社ライブラリーより2020年に発刊されました。元は2016年の雑誌連載だったようです。
 世界(=外国)が日本をどのようにとらえていたか、またあるいは当時の日本(主に軍部)が外国をどのように認識して政策・戦争を推進したか。いや、全然外国の動きを認識できていなかったのではないか、軍部は世界のことをまるで分かっていなかったのではない。とまぁ、そんな論調の本です。
 結局は日本の昭和史がテーマであるため、自然と内容は『昭和史』と重複する部分も出てくるのだが、それはまぁ良いかと。ただ、本作に関してはそれ以外も問題点の方が目についていささか読み進めるのが億劫だった。以下列挙。

  • 本書冒頭付近の『ヒトラーは信仰など全くまったくもたず、道義や義理人情にも関心がない。~人をおしのけて権力を獲得する、そのことに生きがいを見出している人物である。』との記載。思い切ったこと書くなこの人と思うと同時に、そういう観点で書かれた本であるという意識が本書を読んでいる間ずっとチラついた。悪い意味で印象に残った。
  • 本書で言及されるのは9割がナチスドイツ(ヒトラー)と共産党ソビエトスターリン)。それ以外の国に対する描写は少ない。
  • 巻末の対談含め、当時の出来事を教訓とした現代への警鐘(というか政治批判)が良く出てくる。歴史から学ばなければいけないという主張は理解するが、『昭和史』よりも批判要素が目について仕方なかった。

 まとめると、ちょっと残念な読後感でしたな。『昭和史』は作者が当時を体験しているため、本人の感想も含めて史料的な価値も感じることができたけれど、世界史に関してはそれはないしね。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★---
 『昭和史』はよかったんだけどこちらはイマイチ。歴史読み物・知識として面白い部分もあるんだけれどね。

4.どのような人に推奨するか

 『昭和史』『B面昭和史』が凄く面白かったという人は読んでもいいかもしれません。Amazon レビュー見ると、巻末対談や現代への政治批判部分を評価している方もいらっしゃるようなので、そういう点を長所と感じられる人にも。歴史書として読みたい人にはおススメしません。