めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

高橋是清 / 随想録

随想録 (中公文庫プレミアム)

随想録 (中公文庫プレミアム)

高橋是清 / 随想録 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 半藤一利の『昭和史』と三島由紀夫の絡みで、二二六事件に興味を持つ。江戸東京たてもの園に遊びに行く。赤坂から移築された高橋是清邸があり、この家で暗殺されたことを知る。高橋是清について知りたい。という動機です。『高橋是清自伝』と迷っただけど、自伝は上下巻セットと長いので、単刊のこっちを選択したというわけ。

2.内容

 高橋是清の秘書官である上塚司が、高橋是清の様々な言葉(文章や講演、対談記録など)を随想録としてまとめていた者。高橋是清が二二六事件で凶弾に倒れてしまったので、死後の出版となった。前書きとして上塚司が刊行に対する痛切な想いが書かれている。昭和11年3月21日と、死後1か月も経っていないのでそりゃそうだろう…。仮名遣いなどを改め、2018年に中公文庫から刊行されたのが本作です。
 政治・経済の施策、かかわりのあった政治家たちの話、宗教観や家庭人のあり方などを語る高橋是清。晩年(大正~昭和)時期のものが大半です。いろんな媒体から引かれているので文体はフランクだったりやたらに硬かったりと様々です。フランクな方の会話文のような文章は、本当に現代令和の日本語と大差ないなぁ…と思う一方で、書面で書かれたものは読みづらさを感じる。二二六事件の音声をyoutubeで聞いたときにも感じたことだが、100年前の日本語も会話という観点では大差ないんだなぁという点と、文言は乖離しているなぁという点が印象的です。渾名されるとおりのダルマさんな見た目の是清が「とうとう死んじゃった」とか言っていると思うとなんかカワイイよなぁ。
 序盤の他の政治家との関わりについて語られるパートが面白い。懇意にしていた人物や評価が分かること、晩年だからということもあろうが総理も大臣もやりたくなかったということ、日本国のために働こうという強い意思を持った御仁だったのだなぁということなどが文章から伝わってくる(自伝なのでいいように書いている部分があるにしても、だよ)。
 経済施策についての章はお金のレートの違いや経済知らんこともあってまぁあまりピンとこないんだけど、「経済を回す」という発想が明確に書かれていたのはちょっと驚いた。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 ちょっと読むのが大変(というか読み飛ばした)ところもあるけど、首相や大蔵大臣などを歴任した高橋是清の人となりを知ることができて良かった。

4.どのような人に推奨するか

 多分こういう偉人・政治家を語る本はいっぱいあると思う。研究者が説明する本もいいと思うが、個人的には本人が語る言葉に価値を置きたい。ということで、高橋是清の思想や活動を本人の言葉で知りたい人にとってはおススメできる本でしょう。巻末解説や年表もあるので、時代背景もセットで抑えることができると思います。自伝読んでないから、比較はできないけれど…