めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

三島由紀夫 / 女神

女神 (新潮文庫)

女神 (新潮文庫)

三島由紀夫 / 女神 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻の本棚から持ち出したシリーズです。

2.内容

 昭和53年だから…1976年か。1976年に新潮文庫から文庫リリースされた短編集。おおよそ著者の初期の活動に属する昭和20年代の作品が収録されている。三島由紀夫の年齢は基本的に昭和の年号と一致するからね。
 全体的に様々な形での愛が表現されている。本作のページ数の半分を占める中編『女神』は、美人の妻が火傷によってその美貌を失い、関心を失った夫は娘を代償品として美しく育てることに腐心し、その娘にふさわしき名家の男を引き合わせるも娘は奇矯な画家の男に魅かれ、一方で画家の男は妻と関係を持ち…。美と愛と、あと嫉妬を中心に広がっていく作品でございました。
 その他は数ページから数十ページの短編が10編。印象に残ったものとしては、夫を亡くした未亡人と青年の出会いを描く『侍童』は、この未亡人の奥さんがいい感じ。三島の書く美人はなんと影があっていいね、好きやね…。ちょっとホラー味のある『鴛鴦(エンオウ)』も印象的。仲良し夫婦の例えに用いられるオシドリのことです。そして1つだけ書かれた時代が異なりアラフィフの美しき情欲を描く『朝の純愛』は、円熟した生々しい人間表現に後期っぽさを感じる。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 基本的にはLoveの話だな。好きな話は好きだが。テーマ的にも『朝の純愛』が強烈で、後期の方が私は好きなのかもしれないなあ。

4.どのような人に推奨するか

 確かになんとなく、初期の作品集だなって感じがします。三島作品を読むとして、まぁ割と後回しでもいいような気がしました。