めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

三島由紀夫 / 英霊の聲 オリジナル版

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

三島由紀夫 / 英霊の聲 オリジナル版 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 『憂国』を読んでいたく感動した私は、二二六事件三部作と呼ばれる作品があると知りました。三島由紀夫って新潮文庫からいっぱい出てるけど、これは河出文庫から出てるんだよね…しばらく見つからなかった。(最近、新潮文庫からも英霊の聲の文庫が出ましたがね)

2.内容

 『英霊の聲』『憂国』『十日の菊』に加え、当時単行本化にあたっての自著解説として『二二六事件と私』が収録されている。当初1966年に河出書房からこの二二六事件三部作という企画で単行本化されたものが、2005年に本文庫でリリースされた。いずれも1960年以降に書かれたわりかし後期の作品と言える。
 『英霊の聲』は二二六時に参加した青年将校らや太平洋戦争の神風特攻隊の青年兵の死後の世界の視点を、『憂国』は二二六事件に参加できなかった青年将校が自刃する際の死に向かう輝きを、『十日の菊』は生き延びた重臣側(将校連中が言うところの「君側の奸」側の人たち)の人生を、と、一つの事件を3つの異なる視点から書いている形。『十日の菊』は喜劇的な戯曲であり、自分に戯曲を読んだ経験が全然ないこともあり、文章で読むとちょっと分かりづらい気がした。『憂国』『英霊の聲』は力強く美しい文に圧倒されます。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 関連する短編を集めた、いい企画本だと思う。タイトルはなんで「英霊の聲」にしたんだろね。

4.どのような人に推奨するか

 新潮文庫の短編集『花盛りの森・憂国』で読むよりこっちのほうがおススメ。解説も含めて読んでほしい。