ウィリアム・ゴールディング / 蠅の王 [新訳版]
- 作者:ウィリアム ゴールディング,William Golding
- 発売日: 2017/04/20
- メディア: 文庫
ウィリアム・ゴールディング / 蠅の王 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
作品の名前だけは聞いたことあったので、世界の名作を読んでみようという試みです。
2.内容
2017年、ハヤカワepi文庫からの新訳版。訳者は黒原敏行さん。原作は1954年で、作者は1983年にノーベル文学賞を受賞…と。なるほど。
舞台説明が一切なくイキナリ無人島から始まる(後書きによると意図的に削られたらしいが、飛行機事故によるもの)、少年たちによるサバイバル生活。最初の頃は仲良く楽しく…でもないが…な生活が続くが、あくまで帰還を目的としてとにかく火(=狼煙)を絶やしたくないラルフと、無人島生活の質向上のため狩りと食事(+ラルフへの反発心)に熱を上げるジャックの対立が深まっていき、やがて決定的な決裂が生まれる。そして、異常な集団心理の中で発生する暴力と殺人。物語が後半に進むにしたがって、どんどん描写も黒く苛烈なものになっていく。前半の和やかで太陽燦燦な雰囲気はどこへやら。そこから唐突に、夢から覚めるかのような虚しい終劇。このエンディングがいいと思いますね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
これは名作。
4.どのような人に推奨するか
究極状態に置かれたときに人間の思考と相互不信。そこから解放されて振り返った時の空虚さと後悔。そんな気持ちを体感できる作品。そんな感じのものを読んでみたければお勧めします。