めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

ウィリアム・ゴールディング / 蠅の王 [新訳版]

ウィリアム・ゴールディング / 蠅の王 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 作品の名前だけは聞いたことあったので、世界の名作を読んでみようという試みです。

2.内容

 2017年、ハヤカワepi文庫からの新訳版。訳者は黒原敏行さん。原作は1954年で、作者は1983年にノーベル文学賞を受賞…と。なるほど。
 舞台説明が一切なくイキナリ無人島から始まる(後書きによると意図的に削られたらしいが、飛行機事故によるもの)、少年たちによるサバイバル生活。最初の頃は仲良く楽しく…でもないが…な生活が続くが、あくまで帰還を目的としてとにかく火(=狼煙)を絶やしたくないラルフと、無人島生活の質向上のため狩りと食事(+ラルフへの反発心)に熱を上げるジャックの対立が深まっていき、やがて決定的な決裂が生まれる。そして、異常な集団心理の中で発生する暴力と殺人。物語が後半に進むにしたがって、どんどん描写も黒く苛烈なものになっていく。前半の和やかで太陽燦燦な雰囲気はどこへやら。そこから唐突に、夢から覚めるかのような虚しい終劇。このエンディングがいいと思いますね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 これは名作。

4.どのような人に推奨するか

 究極状態に置かれたときに人間の思考と相互不信。そこから解放されて振り返った時の空虚さと後悔。そんな気持ちを体感できる作品。そんな感じのものを読んでみたければお勧めします。