めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

矢部 嵩 / 少女庭国

〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)

〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:矢部 嵩
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: 文庫

矢部 嵩 / 少女庭国 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 本屋で見かけた『ハヤカワ文庫の百合SFフェア』買い。作者も作品も知らんけど買ってみた。

2.内容

 2019年、ハヤカワ文庫JAから。卒業式会場に向かう卒業生の羊歯(シダ)子が壁に囲まれた小部屋で目を覚ます。小部屋には2つのドアがあり、「ドアの開けられた部屋の数 - 卒業生の数 = 1」となった時に卒業できると貼り紙によって知らされる。隣室に続くドアを開けると、全く同じつくりの部屋の中で別の卒業生が目を覚まし…という脱出モノのデスゲームを思わせる導入。実際のところ、本編はその調子で続いていくが、本当の本編は「補遺」の方と言ってもいい。本編と思っていたストーリーは1つのケースに過ぎず、無数に分岐するシナリオと、閉鎖空間で発達する文化の興亡が見られる。思考実験的な小説。面白いよ。殺人/食人に対する躊躇いが無さすぎる気がするが、卒業生が本来の在校生の数を超えて増殖し続ける世界なので、あるいは人間ではないのかもしれないが…。「庭国」にふさわしいある意味壮大な小説。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 途中ちょっとダレますが、大変面白かったです。百合かどうかは分からんが、作劇上、本当に女の子しか出てこない。

4.どのような人に推奨するか

 デスゲーム部分はイントロダクションに過ぎない。思考実験のような分岐を楽しめる方にお勧めします。