めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

池井戸潤 / 民王

民王 (文春文庫)

民王 (文春文庫)

池井戸潤 / 民王 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 池井戸潤は面白い。息詰まる長編もいいが、ちょっとライトなものを読みたくてこれをチョイス。

2.内容

 原作は2010年発表で、手持ちの文春文庫は2013年刊行。総理大臣とその息子が「俺たち…入れ替わってるーっ!?」ってなる政治エンターテインメント。ほんとにそれだけ。その入れ替わり方は完全にSF的だが、それ以外の描写やキャラクターの心情は真に迫るリアリティがあって大変良い。いや政治家になったことはないのだけれど。総理大臣in息子が国会の場で誰もが思うような正論をぶちまけ、一方では息子in総理大臣は就職活動の面接で居丈高な面接官にこれまた強気な大言壮語を吐き、入れ替わっているにも関わらず相手をやりこめる様は大変に痛快。理想のない現実論はつまらない思考停止。もっと理想論を追求した方がイイよね。テーマは政治だけど、政権批判や政治風刺の色は強くない。むしろこれを読んで反省すべきは一市民側である参政者やマスコミだと思える。そこがイイ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 これは面白いですよ。

4.どのような人に推奨するか

 先述の通り政権批判や政治風刺は少ないので、楽しく読める、しかし心に残る政治エンターテインメントになっていると思います。