めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

吉本ばなな / TSUGUMI

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

吉本ばなな / TSUGUMI のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻の推薦による。

2.内容

 原作は1989年…平成元年ですね。中公文庫でのリリース。当時の山本周五郎賞を受賞している。青春小説と言っていいのだろうが、「郷愁」と「死」が大きなテーマとして存在しているように感じた。タイトルにもなっているツグミは「歯に衣着せぬ乱暴な物言いをするいたずら好きで病弱な美少女」といった描写で、なんともモリモリな設定であるが、このツグミのキャラクターがカワイイ!と言うのが最初の感想。一方でその病弱さからどこか自分の生をあきらめているような節がある。自分は比較的健康体で生きてきた人間なのだが、特に幼少期病弱だった妻にはわかり味があるようである。都会に出て暮らしながらもかつて住んでいた田舎町への憧憬が常にある私(まりあ)と、一方でその病弱さゆえに島から出たこともないつぐみの対比。キャラクターのよさと軽やかな筆致、そして所謂青春小説とはやや異なるほの暗い雰囲気がとても良かった。漫画だけど『こどものおもちゃ』の小花美穂さんのダークな側面をほうふつとさせるというか…。作者はカポーティが好きで、自身の作品のテーマには常に「死」がある、というようなことを解説で読んで、得心した。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 これはよかった。ちゃんと記憶に残る読書だった。

4.どのような人に推奨するか

 ばなな氏と言えば『キッチン』が有名だが、こっちのが好きかな。少女漫画的にライトにも読めます。