東山彰良 / 流
- 作者: 東山彰良
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/07/14
- メディア: 文庫
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東山彰良 / 流 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
2015年に153回直木賞受賞とのことで、手に取ってみたよ。
2.内容
ということで2015年の作品。手持ちは2017年発売の講談社文庫版。作者の東山氏は台湾生まれ。本作の舞台設定は戦後(日中戦争及び第二次世界大戦後)から1980年頃の台湾となっており、作者の背景が作品に生かされていると感じた。
主人公は戦後生まれの台湾の若者、葉秋生(イエチョウシュン)。戦争経験者である祖父が1975年に何者かに雑害された事件とその真相を追う、というストーリーを主軸に据えつつ、主人公の交友関係・成長・人生を主人公視点から過去を振り返るような形で精彩に描いていく。
登場人物が見慣れない名前と読みのため、最初は登場人物がとにかく頭に入ってこなかった。ようやく人間関係をちゃんと理解できて来たのは作品が半分くらい進んでから。本筋のストーリーは偶に顔を出すが、多くは主人公の人生そのものや考え方に焦点が当てられていて、友人との交友・幼馴染:毛毛(マオマオ)との恋愛(これはこれでストーリーがある)、やくざ者との紛争、軍隊生活など様々な場面が結構な分量で描かれる。青春小説といわれるのも納得。
個人的には終盤、主人公が中国山東省(祖父ゆかりの地)へ往訪するシーンあたりは、ミステリー的にテンションが上昇したかな。プロローグとの関連性も含め、ここは作品の1つのピークなのだと思う。全体的には、平坦に感じた。文体はシンプルで淡々としていながら正鵠を射た表現をしていて、読みやすい。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
最終盤だけは一気に読み通したが、中盤はだれてしまって中断しつつ読了に長時間かかった。台湾の歴史に触れられるのは良い。
4.どのような人に推奨するか
トータルでは青春小説といって差し支えない。故に私にはフィットしなかったが、青春小説が好きな人、台湾の歴史に興味がある人には、良いのではないか。