めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

体験記:大浮世絵展-歌麿、北斎、写楽、広重、国芳(江戸東京博物館)

www.edo-tokyo-museum.or.jp

体験記シリーズ。大浮世絵展に行ってきた。

1.鑑賞のきっかけ

 何かの広告か、artscapeだったかで調べて出てきたので行こうと思ってたやつ。ようやく行けた。

2.内容

 場所は両国のすぐ近く。初めて行ったのだが、建物は「博物館」というだけあってかなり広く、カフェやレストラン含め7階まである一大テーマパークといった様相を呈している。本企画展はこの中でも1Fの特別展示室を使って行われていた。土曜の朝11:00くらいについたのだが、年配の方や外国人を中心に人は結構多く、チケット売り場では結構並んだが、コインロッカー(100円返還式)も空いててよかった。入り口で音声ガイドを借りたのだが、受付のお姉さんが円山応挙展で買ったトートバッグに突っ込んでくれたので嬉しかった(↓これね)。
 

 展示。タイトルに偽りなしで、表題5人の絵師にスポットを当てた作者単位の展示が5章に渡って続く。解説はキャプション・音声ともに非常に豊富で、音声ガイドを聞き終わらないうちに次のガイド番号にたどり着いてしまうくらい。
 歌麿さんは美人画やバストアップに定評があるが、「透け感」の表現に高い技術力とセンスを感じた。透け感を描きたくてデザインを決めていたのではないかと思った。まぁこの辺は彫師摺師の技量もあろうが、あまり表には出てこないよね。写楽は活動期間もで短く作品点数も多くないに関わらず、その絶大なインパクトは皆の知るところであるが、純粋に絵だけ見たらあまりテクニカルには見えない。ポイントは従来に比べてかなりディフォルメを利かせた絵柄なのだろうなと思った。北斎は言わずもがなの『富岳三十六景』シリーズ(46枚ある)をはじめとする数々の作品と、風景画というジャンルの確立。影響を受けて風景画に傾倒した次の広重と比べると、だまし絵的な遊び・機知が入っていたり想像で書いていたりする部分があるのが面白い(水面に映る富岳が全然実体とあってないとか)。『諸国滝周り』シリーズに見られる水の表現にこだわりもスゴイ。広重は構図の切り取り方と表現力が素晴らしい。『東海道五十三次』の蒲原の雪の静謐な美しさと言ったら。あとは、太い梅の木や橋の欄干をドンと手前に置いて、その合間から遠景を書く手法に驚く。国芳は、イマジネーションとエンターテインメント性の権化やなと。有名な『相馬の古内裏』…デカい骸骨が襲ってくるあれ…や、猫や金魚のスズメなどの動物を用いた絵の数々は、面白くもカワイイ。こちらは曽我蕭白長澤芦雪等に連なる奇想の系譜も感じた。

 もちろんこれらの作品背景には、浮世絵の性質…すなわち発行に幕府の検閲が入ることや、廉価で入手可能な大衆芸術であること、版元の発注ありきの商品であったこと…を前提にして語る必要がある。だが、そういった性質のものだったからこそ、これらの作品が工夫され産み出されたのだと思うし、当時の世相を反映しているという点でまさに文化的な遺産だと思う。浮世絵は大量に出回る作品であるため、一点モノの絵画と異なり基本的には重要文化財として指定されることがないらしいのだが、どうにか守っていってほしいものだね。

 常設展の方は省略。江戸から現代までの時代(中心は江戸~明治)をテーマとしたいろいろな展示があるよ。凌雲閣や神田の山車などでかいモニュメントや、再現された日本橋、江戸の長屋モデルルーム、野菜を運ぶカゴ、銀座の細かいジオラマなど、資料だけでなくやや体験型の博物館といった趣だったよ。絵画作品もいくつかあって、開化絵で活躍した3代目歌川広重の作品なんかが見れた。あとは、展示内の小企画展で『永井荷風と江戸東京の風景』という展示をやっていた。永井荷風って金持ちで海外留学とかしてたんだけど、その反動で日本的な生活に傾倒してたとかなんとか…日記文学の大家とのことで読んでみようと思う。

 昼ごはんを挟んで企画展と常設展合わせてみたが、相当のボリューム感で結構疲れた。1,600円でこれだけのものが見れるってスゴイ話ですよ。また来よう。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 一大絵師が揃った凄い展示だと思うし、いい絵がたくさん見れた。予習もしといてよかった。

4.どのような人に推奨するか

 日本画・浮世絵に興味ある方はマストかと。

Ex.ギャラリー

看板

おみやげ

昼ごはん(館内レストラン)