めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Amorphis / Magic & Mayhem : Tales From the Early Years

フィンランドメロディックデスメタルバンド Amorphis / Magic & Mayhem : Tales From the Early Years をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 3rd "Elegy"は昔よく聞いてたんですよお。リレコーディングアルバムが出てたのだね。気になって買ってみた。

2.内容

 2010年リリース、Amorphisの結成20周年を記念して作成された初期作からのリレコーディングアルバム。元はNuclear Blastからだが、これはVictorからの日本盤。アルバムのブックレットにはエサ・ホロパイネンの解説しかないが、日本盤としてはその対訳と、各楽曲の歌詞・対訳が載っている。まぁいいんじゃないでしょうか。

 楽曲は初期Amorphisのそのままですので、違和感なく聞ける。土着的な中東風半音階メロディを孕んだギターリフと執拗なリフレイン、グロウルとクリーンボイスの対比。もちろん微妙にアレンジされているが、骨格に変更はない。一番のポイントは、現ボーカリストのトミ・ヨーツセンによるリレコーディングということだろう。ボーカルスキルは間違いなく高く、初期の楽曲を全く違和感なく歌い上げているどころか、より深みを与えている。アレンジ以上に曲を強力に響かせているのは、北欧っぽくややザラつきながらも芯があって太いディストーションサウンドと、それに絡むシンセサイザーのリード隊。特にシンセサイザーは、「こんなに目立ってたか?」と思わせるほど様々な場面で楽曲を引っ張り主張する。#5 "On Rich and Poor"の中間部の民謡チックなリフが何度も繰り返さえるパートではチェンバロで同様のメロディを弾いたり、シンセリードで引いたり、壮大なストリングスをかぶせたり(これは原曲でもあったが)、と大活躍していて、さらにドラマティックになっている。そのほかでも原曲とは結構音色を変えてきている。

 1stは聞いたことないから知らないのだが、2ndでアンダーグラウンド感漂う泥臭い音だったものがビッグ&ファットなサウンドで聞ける。3rdは一番変化が少ないかも。あれはもともと結構ビッグなスケールのサウンドだったと思うよ。全体的にレベルアップしていてリレコーディングにありがちな「初期の方が勢いがあって良かったな」感は殆ど感じられない良作。
 ボーナストラックはThe Doorsの"Light My Fire"で、とくにどうということはないかな。うにょうにょしたシンセリードと、あくまでグロウルで歌うスタイルはちょっと面白い。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 リレコーディングには稀な良作。初期の名曲を網羅したベスト盤・入門作としても聞ける。

4.どのような人に推奨するか

 近作のAmorphisが好きで過去の作品持ってない人は、これでまとめて知るのも手だね。逆に、昔のAmorphisしか知らない人はこれを聞くと、知っている楽曲を通してバンドの成長というか、プレイングスキルを体感できるのでいいと思いますよ。