東野圭吾 / 秘密
東野圭吾 / 秘密 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
自分にとっての東野圭吾第一作目。理由は…ミステリーっぽい長編であること、安いこと(ブックオフで買いました。ごめんね)の両方を満たしていたこと。
2.内容
第52回日本推理作家協会賞を1999年に受賞したという作品。作者のデビューが1985年ということなので、キャリアを重ねてからの著作である。文春文庫からのリリースで、独立した長編。
冒頭から主人公が妻と娘をいっぺんに亡くすところからスタート。即物語に引き込む手腕はお見事。娘はその肉体に妻の精神が乗り移る形で(=娘の精神は死んだまま)に再び生を得、妻の精神のまま小学五年生としての生活を送る。それが一過性に終わらず、大人になるまで精緻に描かれる。娘の体に最大限のことをしてやりたい、且つ、ある意味人生のやり直しとも言えるこの状況を少しでも楽しもうとする妻と、あくまでも妻は妻であると考える夫のギャップと衝突、そして折り合いを付けていく過程が悲しい。
終盤、死んだと思われていた娘の精神が復活してくるシーンがあるが…果たして本当に娘の精神だったのか?は分からないまま。秘密にはダブルミーニングが為されている…というか、意味は1つだが、当初の秘密と終盤の秘密で内容が異なるといった方がイイか。なるほどよく出来ている。人間をドラマティックに描くのが上手い人なんだなぁ。
気になったのは時代背景上仕方ないのかもしれないが、主人公がマジで家事の類を何もしない典型的な昔のお父さんという描写が目立つところかな…そこはキャラクターとしてどうにも気に食わなかったかな。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
面白い。好きかって言われると、ちょっと違うかもしれない。
4.どのような人に推奨するか
フィクション的設定を土台に描かれる人間ドラマ。所謂推理小説とは全然違う(別に殺人が起きたりはしない)けど、夫の一人称視点から描かれる(=妻の心情が分からない)ことによるミステリアスな雰囲気は、確かに推理小説の趣は感じるね。