小川哲 / ユートロニカのこちら側
- 作者:小川 哲
- 発売日: 2017/12/06
- メディア: 文庫
小川哲 / ユートロニカのこちら側 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
本屋で『ゲームの王国』がプッシュされているのを見かけた。上下巻に怯んだのと、面陳列のせいで表紙が曲がってたのがイヤで、こちらを購入。
2.内容
2015年に早川書房より刊行され、2017年にハヤカワ文庫JAから発刊。作者の小川哲さんは1986年生まれ…ワイと同い年じゃないか。はーすご。
連作小説というかオムニバスと言うか。五感を含む人間のあらゆる個人情報を提供する代わりに、豊かな生活が保障される未来都市アガスティアリゾート。この都市を巡る6つのストーリーが展開される。こう書くと所謂「ディストピアモノ」という印象を受けるが、あんまりそういう読み味はしない。こういった都市があるとしたら、こんなことがある(あった)だろうと言ったストーリーが淡々と語られる。設定の作りこみはよく出来ている(←偉そう)が、巻末解説にもある通りキャラクターの描写が弱く感情移入はしづらいかな?という感じ。なお次作『ゲームの王国』ではこのキャラクター描写が大幅に改善されていて、あちらは一大傑作になっていました。文章自体は小難しいことを分かりやすく描いてくれており素人にも優しい。
『2010年代SF傑作選2』(ハヤカワ文庫JA)に、本作の第2章 バック・イン・ザ・デイズがそのまま収録されており、内容は同じなので同作を買う方はご認識ください。逆に言えば、1作だけ取り出しても読めるようになっているということです。でも、連作を連作として順番に読むのと、1作だけ取り出して読むのは、また違った感じですね。適当な順番で再読しようかね。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
なかなか。あ、表紙の真っ白さと非人間的な感じも好きです。カッコイイ表紙はそれだけで価値がありますね。
4.どのような人に推奨するか
キャラ重視の人には非推奨だが、作りこまれた近未来都市設定とそこでの生活描写そのものに面白みを感じる人に推奨。