伊藤計劃 / ハーモニー [新版]
伊藤計劃 / ハーモニー [新版] のレビューです。
1.作品を選んだ理由
1作目の『虐殺器官』が大変に面白く、これは2作目も読むしかないと思った。
2.内容
2010年の2作目で、2014年にハヤカワ文庫(JA)から出版された新版。作者は2009年に亡くなっているので、没後に発刊されて殊になるね。表紙は赤いロングヘアの女の子。これがトァンちゃんだろうか。
福祉/医療が高度に発達した近未来。あらゆる人間がWatchMeにより健康状態(というか恒常性と言うべきか)を監視され、平均的で健康的な・模範的で倫理的な大人になっている。画一化された世界。一方、恒常性が当てはまらない成長期の子供たちは、そんな社会に疎ましく思い、不健全さを目指し餓死を試みるわけだが…。
まぁあらすじはいいんだ。とにかくこの作品はめちゃくちゃに面白かった。特徴の一つは全編にetml(Emotion in Text Markup Languageというマークアップ言語が使用されていること。
『虐殺器官』にも通じるある種の荒廃した世界観。実際に作中の時間軸は、『虐殺器官』と地続きになっているようである(前作を読んでいなくても問題にならない程度の繋がりなので、こっちから読んでも全然OK)。
『虐殺器官』よりもキャラクターが明確で、よりエモーショナルである。作者インタビューによれば、とにかく綿密な世界観ありきでキャラ(人間)や感情はその後…とのことだが、全然そうは思えない。世界観がしっかりしているからこそ、そこに生きる人間にリアリティを持たせられているのではないだろうか。あと、中心となる3名(トァンちゃん・ミァハ ちゃん・キアンちゃん)名前が特徴的でカワイいので、単純に覚えやすく親しみやすい。
物語の終局まで読んで、改めてタイトルを見直す。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
今まで読んだSFの中でも最上位レベルで面白かったです。
4.どのような人に推奨するか
前作同様、テクノロジー・政治性・生死と意識といった要素が哲学的なテーマと絡み合ったエンターテインメント性の高い作品。ハヤカワの「百合SFフェア」にラインナップされるくらいには女の子が主役を張っているので、女の子が主人公の作品がいいなぁという人にも推奨。