めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

アイザック・アシモフ / われはロボット [決定版]

アイザック・アシモフ / われはロボット [決定版] のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 アジモフ(ホントは「ジ」らしい)も読んだことなかったんだよね。本当は長編を読みたかったんだけど、好評な本作を最初に手に取ってみたのでした。 

2.内容

 1940~50年頃に書かれた連作的な短編小説を『I, Robot』としてまとめて1950年に発表された作品です。小尾芙佐さんの翻訳です。1983年にハヤカワ文庫からリリースされたものに手を加えて2004年に再版された決定版ということです。
 ロボット工学三原則の提示、それに反するロボットの行動とその謎を解き明かす、1編1編がちょっとしたミステリー的な要素を持つ短編集。そのロボット工学三原則がこれです。

  • ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
  • ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第一条に反する場合はこの限りではない。
  • ロボットは前掲第一条及び第二条に反する恐れのない限り、自己を守らなければならない。

-ロボット工学ハンドブック 第56版 西暦2056年。

…どうでしょう。というかそもそもの話として、この三原則ってアシモフがフィクションの世界で掲げたものだったんですね。てっきり現実的なロボット開発の話かと思ってた。それくらい納得感のある三原則であるし、実際のロボット開発でも須らく当てはまる内容なんだろーなーと本作を読むと思わされる。
 作中を通じてロボット開発はどんどん進化していき、「人間性」のようなものを獲得していくのだが、そこでもロボット工学三原則に絡んだ危険性が示唆される。というか危険性と呼ぶべきなのかどうかも分からないが…人前で食事や睡眠を取らない政治家がいたとして、それがロボットだと見分ける方法があるのだろうか。ロボットは第一条により人を傷つけることができないために、「私を殴れ」と命令されてもこれを遂行できない。しかし、人を殴れないことは、その者がロボットであることを証明しない。ロボット三原則は広く解釈すれば結局人間の倫理規範そのものであり、これを守ることが望ましくこそあれ、ロボットである(あるいは人間である)ことを規定するものではないのだ。
 …みたいな。いやーイイですね。思索が楽しい。
 一方で、 エンターテインメントとしてもしっかりと面白い。名作たる所以かと思います。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 分かりやすくも示唆に富み、知的好奇心を満たす。それでいて読んでいて面白いという名著。

4.どのような人に推奨するか

 ロボット工学三原則に興味を惹かれる人。あるいはゲーム等のSF世界におけるロボットの位置づけから本作に入るのもありですね。例えば『ロックマン』シリーズと照らし合わせて考えてみるのも面白いと思います。まあSF古典の本当に名作なので、皆読もう。