めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

ドストエフスキー / 貧しき人々

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

ドストエフスキー / 貧しき人々 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 『地下室の手記』で感動したのでドストエフスキーを読もうと思った。長編はしんどいかと思い、短い本作を2作目に手に取った。

2.内容

 2010年光文社文庫からリリース、訳者は安岡治子さん。古典新訳文庫シリーズの1つで、柔らかい雰囲気の想定が特徴。字も大き目で読みやすい。
 24歳の若きドストエフスキーが書き発表した1846年の処女作。低い地位の官吏を務めるしがないおっさんのマカールと、近所に暮らす若い少女ワーレンカの貧窮とこれにまつわる二人のストーリーが往復書簡の形で繰り広げられる。往復書簡形式の小説というのは当時すでに使い古した手法だったようだが、ドストエフスキーは敢えてこの手法を採用したらしい。2名の主観でのみ話が進められるため、「何が起きているのか」はややわかりづらいが、その分感情に溢れている。
 マカールとワーレンカは親子ほども年が離れている。貧しいとは言っても、彼らは字の読み書きができ、借家とはいえちゃんとした家に住み、召使いまで付いている。所謂「農奴」と異なる(ロシアの農奴解放はもう少し後の1861年)。ある意味、このお話は農奴は主人公になれないと思う。日々の労役をこなしそれいがいのことを考えることがない(考える余裕がない)階級の人々ではなく、そこそこの知識階級にありながら金がなくどうにも身動きがとれない二人の話なのだから。
 お互いの孤独感を手紙で埋めているが、ご近所の彼らはそう頻繁に会ったりはしないようで、そこはなんでだろうと思う。最終的には生活上の理由でワーレンカは町を離れてしまい(一応ネタバレはしないのでこう書く)、そこで物語が終わる。突如として終焉が訪れる感じがする。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 マカールさんはワーレンカのことが大好き。

4.どのような人に推奨するか

 ストーリーやキャラクターではなくて、彼らの語る人生観や人間観がポイント。まぁ、マカールさんはキャラ立ってると思うけど。