めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

芥川龍之介 / 羅生門・鼻・芋粥・偸盗

芥川龍之介 / 羅生門・鼻・芋粥・偸盗 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 昔買って読んでなかったやつを実家から持ってきたシリーズです。

2.内容

 1915年~1917年にかけて発表された短編のコンピレーション(芥川は基本短編しかないみたいだけど)。王朝物と言われる、平安時代を題材として書かれたものの、比較的初期にあたる作品群。

  • 羅生門
     国語の教科書でおなじみ。

  •  15cmくらいの大きな鼻を持つ坊さん禅智内供が、人々に笑われるその鼻を疎ましく思って取り去るものの、やっぱり笑われるので、鼻を元に戻そうという話。
  • 芋粥
     芋粥を飽きるほど食べたいという芋粥好きの五位が、実際に芋粥をいくらでも食べられるという敦賀まで旅をしてみたものの、いざ大量の芋粥が出てきてそれが実現してしまったら、食べたくもなくなってしまったという話。
  • 偸盗
     盗人集団。放蕩美女 沙金と、それに恋慕する太郎・次郎、沙金の義理の親となる爺と婆など、人目に隠れて生きている。太郎・次郎はお互いに恋敵なので、いざとなれば相手を殺してしまおうなどと考えている。
     さて、役人 籐判官の屋敷に盗みに入る計画が進む中、沙金は判官にその計画をバラしてしまい、さらには沙金は次郎に太郎以下の全員を死に追いやってしまおうと提案する。次郎はその提案を呑み、屋敷の混乱の中それは果たされそうになるのだが、自身も多勢の犬に襲われ死に瀕する。一方太郎は屋敷から逃げようとする中そんな次郎の姿を見つけ、逡巡の後「弟」を助けなければという気持ちに突き動かされるまま次郎を救助。最終的には兄弟で仲良く暮らすという、兄弟ENDを迎える。

 特に羅生門と偸盗に顕著だが、非常に生死に関する描写が生々しく、平安の下層階級はこのような生活をしていたのか…などと錯覚する一方、心理描写は現代人でも非常にシンパシーを感じるものとなっている。描写力が素晴らしいです。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 芥川の文体はカッコいいね。作者は駄作扱いしているというが、「偸盗」面白いじゃないか…。各キャラクターの関係性なんかは現代的という気もするし、兄弟ENDにもびっくり。

4.どのような人に推奨するか

 学校で習った「羅生門」で芥川の知識が止まっている人、あるいは、そういえば羅生門面白かったなー、となんとなく思っている人。読んでみてはいかがか。