めたすらいむの舟

メタル(デス/ブラック/プログレ中心)と書評(SF/ミステリ寄り)を通じて、ものを書く練習を行っています。原則週次更新予定。

Obituary / Obituary

Obituary -Digi-

Obituary -Digi-

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  • アーティスト: Obituary
  • 発売日: 2017/03/17
  • レーベル: Relapse Records
  • メディア: CD

10作目にして無題、というバンドは意外と少ない。デビュー作ならまだしも、キャリア終盤に差し掛かったところでいきなり「Obituary」を名乗り直すのは、ちょっとした賭けだと思う。実際、当時の海外レビューでもこのタイトルの付け方は「原点回帰の宣言」とも「最後の一枚のつもりか」とも取れる、と両論併記気味に扱われていたらしい。結果的にバンドは今も続いているので後者ではなかったわけだが、聴く前からこの「賭け」の意味を考えさせられる回だった。

前作『Inked in Blood』のレビューで、Ralph Santollaの整いすぎたリードに戸惑ったと書いた。本作ではそのSantollaが脱退し、Kenny Andrewsがリードギターに入っている。ベースも長年支えたFrank WatkinsからTerry Butlerに交代した。フロリダのタンパにある自前のスタジオで録音、プロデュースはバンド自身。John Tardy(Vo)、Kenny Andrews(Lead Gt)、Trevor Peres(Rhythm Gt)、Terry Butler(Ba)、Donald Tardy(Dr)という編成が、この無題のアルバムを鳴らしている。

"Brave"の2分14秒

1曲目"Brave"がとにかく短い。2分14秒。イントロもアウトロもほぼ無く、いきなり全速力で始まっていきなり終わる。Donald Tardyのダブルキックが休みなく回り続けていて、その上でAndrewsのリードが短い距離を全力で駆け抜けるように鳴る。Santollaの回で感じていた「整いすぎ」がここには一切ない。粗さというより、勢いで押し切る若さのようなものがリードプレイに戻ってきている。

これが10作目のオープナーだというのが、正直ちょっと信じがたい。

音の分厚さと、削ぎ落とし

自前のスタジオで録ったことの効果なのか、全体の音の分厚さは過去作の中でも上位に入ると思う。ただし曲自体は逆にどんどん削ぎ落とされていて、10曲で33分。長尺の曲がほぼ無い。"Sentence Day"も"A Lesson in Vengeance"も3分そこそこで終わる。無駄な尺がない代わりに、余韻もほとんど残さない設計だ。

Trevor Peresのリフは相変わらず塊で降ってくるが、Butlerのベースが下から押し上げる感触は『World Demise』のときとはまた違う質感で鳴っている。太いというより、輪郭のはっきりした押し出し方をする。

タイトルの意味、聴き終えてから

聴き終えてから、あらためてタイトルのことを考えた。原点回帰と言えるほど初期のスタイルに戻っているわけではないし、最後の作品にする気配も感じない。むしろ「今のメンバーでもう一度、素の状態からObituaryを名乗り直す」という意味で無題にしたんじゃないか、というのが今のところの自分の解釈だ。新しいギタリストとベーシストを迎えて、変に飾らずバンド名だけを掲げる。そのくらいシンプルな理由だったのかもしれない。

評価

★★★★☆

前作で感じた違和感がきれいに解消されていて、聴いていて素直に気持ちいい。ただ短距離走が続く分、聴き応えという意味では『Frozen in Time』の方が上かもしれない。