V.A / 2010年代SF傑作選 2
2010年代SF傑作選 2 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
なんかハヤカワでプッシュされていたのと、日本SF小説家の近代作品を読んでみたかった。ナンバリングの2冊のうちでは、2の方が比較的若いというか、2010年代デビューの作家が取り上げられているということで、こっちを買いました。
自分はSF初心者です。本作で読んでみたかったのは柴田勝家、三方行成。既に読んだことがあったのは小川哲。
2.内容
2020年に早川文庫からリリースされた、先に書いた通り2010年代にデビューしたSF小説家の短編作品から選抜されたコンピレーション。作品の前に作者略歴と代表的な作品が紹介されているのがとても嬉しい。次に手にとる作品の指標になります。作風は非常に幅が広い。普通の青春小説っぽい読み味の作品もあるし、歴史や民俗がテーマのものも あり、あぁSFっていろんな形があるんだなと再認識しますね。三方行成『流れよわが涙、と孔明は言った』のおちゃらけた雰囲気の後に、重苦しく不気味な酉島伝法『環刑錮』が来るあたりの落差はスゴイ。以下個別の作品についてのインプレッション(一部のみ)。
- 三方行成
ギャグだった。いやタイトルですでにおちゃらけているのは分かっていたんだが。とにかくギャグ作品だった。 - 柴田勝家
生まれたときからVRのみの世界に生きる人種。小説じゃなくて研究論文のような読み味だが、理屈で構成された緻密な非現実が好き。これで私は作者の『アメリカンブッダ』を買った。 - 酉島伝法
芋虫のような姿になって禁錮刑を受ける虜囚。鬱々としていて不気味。やたら単語が難しい。『皆勤の徒』に手を出すかどうかは迷ってる。 - 野崎まど
あれ、『know』とどっちを先に読んだんだったかな。こちらはモンゴル帝国の草原を超次元に拡張させた訳が分からないが壮大で野心的な話で、映像的に面白かった。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
こういうコンピレーションは入口としてありがたいです。
4.どのような人に推奨するか
解説にある通り、「何か面白い最近のSF作品を教えて」と言われた時の布教用として使えるという側面がある。そのまま購入層に当てはまると思いますので、初心者で「何か面白い日本のSF作品がないかな…」と探す人におススメ。1つ2つ気に入るものがあれば儲けものだと思います。