めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

中曾根康弘 / 自省録-歴史法廷の被告として-

中曾根康弘 / 自省録-歴史法廷の被告として- のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 高橋是清『随想録』を読んで、政治家個人が語る歴史は面白いと思っていたところで、本屋を徘徊していたら見つけたのがこの『自省録』。先日までご存命だった方ではあるが、氏が首相を務めた頃にはまだ自分は生まれてないし…十分「歴史」の範囲なんだよなぁ。

2.内容

 底本は2004年に刊行された同名の書籍で、2017年の本文庫化にあたり新潮45の記事と解説が追加されている模様。氏は結構な数の書籍を書いてきたようだが、本作はコンパクトに政治と歴史がまとまった読みやすいボリューム感になっている。
 読んでいて、政治家としての軸がご本人にしっかりある感じがしました。政治家は自分の信じる政策をやるものであって、国民の希望をポピュリズム的にやるものではないと。それはその通りだと思うのです。政治家は国民の代表ではあるけれど、国民の総意(そんなものが現実にあるかどうかは置いといて)を反映するということを意味しない。それだったら直接民主制でやればいいわけで…間接民主制を取る限り、我々は政策そのものではなく、それを立案・実行できる人を推すことになる。そして本書は、そういった推された側・選ばれた側がどういった指導者であるべきか、という点に多く触れた本になっているわけです。
 同世代の他の政治家を語る場面も結構多いんだけど、好悪がハッキリしているというか、評価するところは評価するが、ダメなところはボロクソです。手心がなくて面白い。あと、防衛や憲法改正に対する意識って、戦争経験者(中曾根氏は海軍で太平洋戦争を経験している)は全然違うんだね。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 面白い。刊行当時のホットな話題であるイラク戦争(2003年)などにも言及されている。2021年現在でご存命であればどんなことを語ってくれただろうか、と思ったりもした。

4.どのような人に推奨するか

 別の記事でも書いたけど、自分は本人が語る言葉に価値を置きたい。ということで、中曾根氏の思想や活動を本人の言葉で知りたい人におススメ。値段もボリュームもお手頃で、手に取りやすいというメリットもあるよ。