めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

松本敏治 / 自閉症は津軽弁を話さない 自閉症スペクトラム症のことばの謎を読み解く

松本敏治 / 自閉症津軽弁を話さない 自閉症スペクトラム症のことばの謎を読み解くのレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻が最近の話題書として本屋で買ったものを読ませてもらったものです。自分は知りませんでした。

2.内容

 なぜ自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)の子は津軽弁を…乃至放言を喋らないのか、ということに関する研究過程と説明。2017年に単行本として出ていたものが、2020年に角川ソフィア文庫から文庫リリースされた形。文庫化に伴う作者の後書きが付与されている。
 折り返しにある作者の経歴を見て思ったこと。教育支援や心理に関する専門領域で様々な機関で経験を積んでおられるが、著作としてはこれが初めてなのかしら、という感じ。研究過程だからと言えば仕方ないが、序盤は講演会でのアンケート記録などが多くてやや退屈した。
 エッセンスは後半13章~終わりまであたりにあると思う。言語習得の2つの手法。他者のやり取りの中で相手と意思のやり取りをしながら言葉や表現方法を学ぶやり方と、機械的・反復学習的に言葉を学んでいくやり方があるという。ASDの子は他者の意図を推し量ることが苦手であるために、後者による言語習得のケースが増えること。そして、方言はかなり社会的な関係性を求める前者の意図で使われることが多いために、ASDの子は方言を話さないのではないか、という示唆。後者の手法で方言を習得すれば(日常的にテレビ等で触れる言語や文章が方言のみであれば)、機械的学習の元に方言を話すこともあるだろう、ということ。ふむふむ。納得した。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★--
 重要なことは重ねて説明してくれるし、平易な説明ではある。なんとなく読みづらかったけど。

4.どのような人に推奨するか

 内容は面白く納得。読物として見たら、まぁ部分部分をつまみ読みでもいいかな…とか思わなくもない。