めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

チャック・パラニューク / ファイト・クラブ [新版]

チャック・パラニューク / ファイト・クラブ のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 本屋徘徊時に妻が興味を持ったので買った本。映画でタイトルは知ってたよ。喧嘩主眼なのかと思ってたが…

2.内容

 原作は1996年。こちらはハヤカワ文庫NVから2015年に出た新版。読むきっかけになるのでこういう再版は嬉しい。新版から追加されたらしい作者後書き(後書きも物語調で面白い)から、とにかくこの暴力的で退廃的な世界観は当時の若者に多大な影響を与えたらしいことが読み取れる。タイトルから勝手に暴力+アクションな内容なのかと思っていたんだが、思ったよりサスペンス的な要素が強い青春小説と言える。堕落した世界で生きることに辟易した若者たちが、充実した生を(あるいは死を?)求めて殴り殴られる痛みを体感する場所としてのファイトクラブ。人間の生き方とか生きる意味を考えさせる精神面の描写に注力されているように感じる。映画だと暴力的な要素が強調されているのかもしれないね。  意図的な書き方であるようだが、基本的には主人公の一人称視点でありながらも、時系列も場面転換もバラバラで飛び飛び、現実と空想の境目もあいまいなので最初はとにかく読みにくくて仕方なかった。これはいつの・誰の話なのか?ってなる。物語終盤、そのサスペンス要素の種明かしがされると、その点は腹落ちします。極めてアメリカンなんで理解しきれない部分もあるが、そのある種支離滅裂な表現も含めて、文章が上手いなぁと思った。これは訳者の妙かもしれんね。2周目読もうかな。また違った視点で読めること請け合いの、再読に耐える内容だと思います。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 内容は上記の通りだけど、表紙のデザインもかっこいいよなぁ。購入意欲が高まる。作者後書きも込みで高評価。

4.どのような人に推奨するか

 1990年代と最近の本ではあるが、古典的な普遍的な魅力があるのではないかしら。もちろん、内容は相当に俗悪且つ毒ではあるんだけれど、そういう「ワルイ」ものって魅力的だったりしますよね。