めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Pain of Salvation / The Perfect Element Part 1 -Anniversary Mix 2020-

The Perfect Element Pt. 1 (Anniversary Mix 2020)

The Perfect Element Pt. 1 (Anniversary Mix 2020)

スウェーデンプログレッシブメタルPain of Salvation / The Perfect Element Part 1 -Anniversary Mix 2020-をレビュー。

1.作品を選んだ理由

 全然知らなかった。偶々新宿ディスクユニオンに行ったら新入荷エリアに陳列されていてその存在を知った。本バンド及び本作の大ファンとしては買わないはずがないので、その場で即購入。出会えてよかった…。

2.内容

 2020年11月下旬にInside Out Recordsからリリースされた2000年リリースの大名盤『The Perfect Element Part 1(tPE)』の20周年記念リミックス・リマスターリイシューで、ボーナスCD付きの2枚組輸入盤。どうせ日本盤出ないでしょ。こんなに素晴らしい音楽やってるのに、なんでやろなぁ…
 リミックスとリマスターの違いを少し。本作はよくあるリマスターではなく、リミックスを含みます。従って、出来上がった音源を最新技術で綺麗にしただけではなく、構成要素であるパーツの1つ1つの音像や定位、バランスなどを改めて見直して再定義するところまでやるのがリミックスです。端的に言えば、リマスターは綺麗になるが、リミックスは別物になると言っていいわけです。
 で、本作はリミックス。どうも2017年に『Remedy Lane:Remix』と同じ、且つtPEの時にも当時新人エンジニアとして関わっていたPontus Lindmarkさんが全面的にリミックスを担当している。Remedy Laneは最高に素晴らしいリミックスになっていたので本作にも期待が掛かったわけだが、本編は果たして素晴らしいサウンドになっていると思う。
 大前提として『原盤の延長線上にある、原盤のよさをリスペクトしたリミックスである』ということを強調しておきたい。原盤も別に悪い音だったわけではないので、敢えてリミックス買う必要があるか?とお考えの諸兄もいらっしゃるかもしれないので、主な変更箇所を2点ほど挙げておく。

  • 1つ1つのサウンドが独立(isolate)した
     もともと本作は音の壁のように様々なサウンドのレイヤードによって成り立ってるアルバムだが、原盤ではそれぞれの音が渾然一体となっている印象であった。一方本作では、それぞれの音がかなり独立し、際立って、近くに聞こえるようになった。音の各層が明確に見えるようになった。おかげで、「あぁ、ここってこんなフレーズだったんだ」「ここってこんな音も鳴ってたんだ?」と言ったような発見が結構多い。例えば#1 『Used』のエンディングで聞こえるヘヴィリフ、#12 『the Perfect Element』冒頭のシンセサイザーなんかは顕著な発見だった。

  • 音がアップデートされた
     原盤にも内包されたデジタルな音・パートがよりエレクトロに強調された点と、ギターのサウンドに生々しさと荒さが付加された点。原盤が作りこまれたクリアでマシーナリーなサウンドからすると、本作では『Panther』や『In the Passing Light of Day』に通じる要素が多少加わったと言えるのではないでしょうか。これは賛否あるかもしれないが、ちょっと聞く分には大して気にならないと思います。わかりやすいのは#5 『Idioglossia』のイントロ。ギターの歪みが強調されていてが完全に別物に聞こえます。後は#7 『Dedication』や#12 『the Perfect Element』のOnce...パートで、原盤ではアコースティックギターのようなサウンドだったものが、本作ではやや歪んだエレキギターのクリーンサウンドになってたりする。この辺は結構違いが感じられるもんです。

 音楽的な素晴らしさは、ここで敢えて触れる必要性を感じないためスキップ。あ、確か当時は日本盤ボーナストラックだった#13 『Epilogue』も収録されています。

 ここからはボーナスCDへの言及。ライブ音源4曲と、オマケ音源3曲を含む約30分の内容となっています。Remedy Lane:ReLivedは演奏もミックスも最高だったが、こちらのライブ音源はあくまでオマケに近いです。演奏は2017年以降のJohan Hallgren復帰後のメンバーによるもので、ミックスはドラム担当のLeo Margaritが手掛けている。別に悪いミックスではないけど、その辺もオマケ感が漂っている。演奏は素晴らしいので十分聞ける内容です。オマケの3曲は、#6 "Her Voices"のエンディングからストリングスとコーラスのみ独立して取り出したものと、30秒ほどのパーカッションの小品と、#3 "Ashes"のカラオケバージョンです。[your language here]って何だろうと思ったけど、要は「あなたの言語で歌ってね」ってことね…まぁPoS流のお遊びです。ライナーノーツとして、Danielとミックス担当Pontusのコメントが載っている。こちらは別途翻訳を記事にしようかなと思います。  

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 原盤とはまた違う解釈を含みつつも魅力を損ねない現代的なアップデート。満点です。出してくれてありがとうと言うしかない。

4.どのような人に推奨するか

 PoSファンは絶対買ってOK。このバンドがプログレメタルとはあまり思えない(Danielも本作のライナーで否定している)が、とにかく美しいメロディ力強いボーカルコーラス、テクニカルな演奏のバランスが取れたソングオリエンテッドな作品なので、いい音楽として単純に推奨いたします。