Pain of Salvation / Panther
- アーティスト:Pain of Salvation
- 発売日: 2020/08/28
- メディア: CD
スウェーデンのプログレッシブメタル、Pain of Salvation / Pantherをレビュー。
1.作品を選んだ理由
私はこのバンドがトップクラスに好きだし天才だと思ってます。そんなバンドの新作が出るというのだから、買う以外の選択肢はございませんね。発売日に即買いました。まぁ、店頭に入荷するとも日本盤が出るとも思えなかったから、Amazonで買ったんだけど。
2.内容
2020年8月、いつものInside Out Recordsからリリース。ボーナスCD付きの2枚組輸入盤で購入しました。
正直最初にブックレットを見たときは、 一抹の不安があった。Johan Hallgren
全体的にはRoad Salt以降の集大成といった所だろうか。感覚的には、Be:Road Salt:In the Passing Light of Day=2:3:5くらいのかな。全体的にはエレクトロで冷ややかな印象が支配的でありながら、ノスタルジックな旋律にも富んだメロディアスな作品。ギターはリズムパートの一部を構成するにとどまっていてソロも殆どない。しかしだからと言ってヘヴィに感じないというわけではない。冒頭の#1 "Accelerator"から、理解できないDjent的な拍子と刻み、緊張感に満ちた演奏と、前作以上にメロウで情熱的なボーカルワークと、「あーこれはPoSですわ」と題納得。もちろん『the Perfect Element』『Remedy Lane』の頃のような悲哀に満ちたメロディーの洪水とは全然違う方向性ではあるんだけど、リズミックでメロディアスと言うしかない。説明しがたい感覚。このエレクトロ感が妙にいい雰囲気というか、サウンドが凄くよい。特にドラム…。#3 "Restless Boy"も大好き。ヘヴィ要素が削られた完全にエレクトロニカみたいな演奏に淡いコーラスで地味な楽曲なんだが、5連譜と7連譜が入り乱れる暴虐的なヘヴィパートは"I can see that you try to understand"の歌詞と共に非常に頭に残る。次の#4 "Wait"は個人的ハイライト。美しいピアノとスチールギターの分散和音をメインに構成されたメロウな1曲。これもボーカルワークが素晴らしいというのと、引っ掛かりのあるリズム(13/16拍子+11/16拍子?)がクセになる素晴らしい曲。ラストの#9 "Icon"は前作ラストを飾る"In the Passing Light of Day"的な静かで歌メインのノスタルジックな楽曲でこれも白眉。
歌詞も、Scarsickの時のようなラップ的詰めこみがなく、メロディーに合わせた無理のない言葉選びになっていて、嬉しい。おそらくこれまでのコンセプト作との繋がりはない独立した歌詞世界。ブックレットの冒頭”Normality has no cure(普遍性は何の癒しにもならない)と、#7”Panther"に象徴されるとおり、世界や他者とMisfitsな「私」がテーマなのかな?ちゃんと読めば理解できそうな気がするが、そこはお得意の「To Be Continued...」ですよ。ほんとに続編出るのか?
アルバム全体で54分と言うコンパクトさも好印象。冗長な部分がなく、気づけば後半…気づけば作品が終わっている。で、もう一周聞こうってなる。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
最高やろ…。
4.どのような人に推奨するか
『the Perfect Element』『Remedy Lane』の再現を待ち望む人や、プログレメタル的派手なギターテクニックを味わいたい人には全く向かないです。しかし、内省的で実験的でそれでも素晴らしいメロディーと起伏に富んだ楽曲は完全にPain of Salvationのそれです。自分もPoSの作品は初期作を聞くことが多いですが、それでもこのアルバムは超おススメできます。