めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

リチャード・ブレストン / ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々

リチャード・ブレストン / ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 コロナ騒ぎで読む1冊。殺傷力は全然違うが…

2.内容

 原著は1994年発表で、こちらは高見浩さん訳による訳で2020年にハヤカワNF文庫から発刊された。刊行時期より扱っている事件は1980年代後半から1993年頃までのもの。直近では2014年頃に西アフリカでエボラ熱の再流行(アウトブレーク)があったというが、それに寄せた作者本人の追記と、岩田健太郎さんの解説付き。
 全4章からなるが、特に1章がウイルスの恐ろしさを雄弁に語る。正体も分からない中、衛生観念の低いエリアで広がる強烈な伝染病。ノンフィクションではあるものの、綿密な取材に基づくというその描写は非常に細部にわたっており小説的で恐怖を煽る。まぁ実際この病気は死にますからね…得体のしれない病魔に蝕まれていく様子が一番怖いのはこの章。2~3章は高セキュリティな検疫所で発生した輸入サル群での集団感染とその駆除を巡る物語。こちらはエボラウイルスのことがある程度分かってきている中で、細心の注意を払いながらウイルスと相対している様子がわかる。三重の防護服(手袋)が割けてしまい、あわやサルの血液を浴びたかと手袋を剥がしながら確認していくシーンの緊張感などはなかなか。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 語り口が小説なので読みやすく、且つ勉強になる。読み物として見た場合、第一章の勢いが後半までは続かない感じではあるが。

4.どのような人に推奨するか

 未知のウイルス、感染リスクとの闘いに興味がある人は読んで見るといいよ。医療は大変だ。