めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

原田マハ / サロメ

サロメ (文春文庫)

サロメ (文春文庫)

原田マハ / サロメ のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 ジャケ買い原田マハさんは名前は知ってたが読んだことはなかった。美術テーマの小説がおおいのかな?と思ってた。

2.内容

 オール読物で2015年~2016年に連載されていた作品で、2020年に文春文庫から発刊。イエローの装丁(イエローブックになぞらえたか)とモノクロームの絵が目を引く。オール読物って文春だったんか。
 単行本化された作品を読む上で、当時の発表媒体は結構重要だと思うんですよね。この作品も連載らしく、「前回のあらすじ」とまでは行かんが、「以前こんな記載ありましたよ」的なrepriseが多く見受けられ、よく言えば親切。単行本で読むと、ちょっと前に読んだから知ってるよ!と思わなくもない。
 内容は、現代において『サロメ』の未発表の絵が出てきたところからスタートするが、物語の大半は過去編…すなわち画家オーブリービアズリーとその姉・女優のメイベル、作家オスカーワイルドをめぐる退廃的で暗い雰囲気の漂いまくるミステリ調の物語となっている。フィクションではあるものの、下地やキャラクターの背景は史実に基づくものであり、リアリティがある。まぁ司馬遼太郎の時代小説だと思って読むのがいいと思う。薄命の天才オーブリーは魔性の男ワイルドに魅せられていくが、芸術的な感性が高みに上る一方で本人はどんどんん不幸せになっていくような…あとお姉ちゃんのメイベルが弟のために枕営業も辞さない・弟がいちいちどこで何をするか気にする(昔はお姉ちゃんになんでも話してくれたのに…)などメンヘラ感が強く漂う。ワイルドとの出会いとは無関係にその気質がありそうな感じはするが、人間関係を通じてより深まってしまっている感はある。最終的に困窮して死ぬことが最初に示されていて、あとはどう堕ちていくのかを追う形になっているので、自然と暗くはなりますわね。
 最終盤、絵と共に出てくる物語とこのエンディングはどういうことなのだろう?事実として書かれているのか、(作中内における)物語なのか??お蔵入りになった英訳を読んだメイベルがこれを再現したということなんだろうか…。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 史実ベースで知ってる画家や作家が登場するので、キャラクター面は強いし読んでて楽しい。でも、それは内容とキャラクターを魅力的に描写出来ているからこそである。

4.どのような人に推奨するか

 19世紀イギリス好き、絵画好き、退廃的なミステリー好き。ワイルドの『サロメ』と間違って買う人がいるらしいが、ちゃんと中身と作者を見て買おうね…。