村田沙耶香 / コンビニ人間
1.作品を選んだ理由
府中市美術館でなぜか中古の本がワゴン売りされていたんだ。そこで著名なこの作品を買ってみたのだ。
2.内容
2018年、文春文庫から。元は2016年の作品で155回芥川賞を受賞している。
発表年代が最近だから当然といえば当然かもしれないが、極めて現代的なセンス・切り口の小説だなと。個人を形作るものは他者との影響・関係性なのか?だとすれば個とは何なのか。仕事という役割と関係性の中でしか生きられない・生きていると思えない人間。会社中心の人生を過ごしてきた挙句定年退職後に何をしていいのか、会社を出た個としての自分がどのようにあればいいのかが、わからなくなってしまう…なんていう話は(本当にあるかどうかわからんけど)聞く話である。縄文時代のムラ社会(=現代の現実社会)に適応できないものは排除されるしかないのか。適応したものたちは異物を自分たちに快い文脈で解釈してムラ社会の目指すべき姿を押し付けるのか。無自覚に悪意なく(むしろ好意で)主人公にムラ社会のありようを説く友人やバイト先の店長らは、喋る言葉は現代社会のどこででも取り交わされていそうなものだが、この世界観にあっては気持ち悪さを伴って響く。「常識」に取り囲まれた主人公が針の筵のようでツラくなってくる。
Misfits(環境にうまく適応できない人)を歌ったRushの名曲"Subdivision"を思い出した。『In the high-school hall, in the shopping mall, Conform or be cast out.』 望まれる人間の姿を体現(適応)しなければ、居場所はないのかのう。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
150ページ程度の中編で、一気に読み通してしまった。自分は主人公に共感する側。まあ白羽さんは毒が過ぎて好きでないけど。
4.どのような人に推奨するか
現代社会のMisfitsに読んでほしい。逆に、ムラ社会に何の疑問もなく適応できている人がどのような感想を抱くのか、そんな人がいるのかが気になる。