乃南アサ / ビジュアル年表 台湾統治五十年
ビジュアル年表 台湾統治五十年 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
台湾旅行に行って、台湾総統府や博物館で歴史に興味を持った。ちゃんと知らなかったし。
2.内容
2016年に講談社から刊行。A5版かな?結構な大判の本で、カラーの図・写真資料がふんだんに使われている中で、野中アサさんが台湾と日本の歴史を描いていく。元は「小説現代」にて月刊連載されていたものをまとめた作品。1章あたりのボリュームが凄まじいので、全13章を一気に読み通すのは相当なパワーがいる。
当然の如く本書の対象範囲は、日清戦争の講和条約で台湾を領土とし、太平洋戦争でこれを手放すまでの統治の50年である。日本人目線の感想だから当時を知る人には怒られるかもしれないけど、児玉源太郎と後藤新平の両名は、日本の国益にも現地民にも資する政治を行っていたように思う。これは単に他の植民地政策のような奴隷搾取があまり見られず、衛星や設備・教育の観点で近代化がもたらされた点をそのように思うだけで、占領下にあって差別と同化の双方が図られる中でのアイデンティティの喪失はよろしくない事態だと思う(まぁ近代化も本島民が望んだ話ではなかっろうがね)。野球が台湾でも人気になって、台湾野球チームが実力で台頭して日本の甲子園大会で準優勝するに至るなんて話もあったんだなぁと。甲子園に台湾が出場していたことも知らなかった。でもあくまで台湾が「日本の延長としての国土」という状況下にあっては当然の感覚なのかもしれないね。
日本が去った後の台湾の様子も最終章では少しだけ触れられる。台湾で記念碑を見た二・二八事件。日本が去った後にやってきた蔣介石率いる中華民国軍がショボくてみすぼらしいわ、支配のやり方も汚職もヒドいわで市民反乱が起きたというものだが、中華民国軍はこれを鉄の弾で迎え、無差別的な攻撃により3万人弱の犠牲者が出たらしい。そして日本語を強制されたいた台湾人は今度は北京語を強制されるようになるわけだ(統治50年も経って、寧ろ日本語しか話さない者もいたのではなかろうか…)。翻弄されている。
小説家らしく、セリフ混じりに語られる歴史は、ただの事実の羅列にはなっておらず感情に溢れている。創作や作者の想像による言もあるし、戦争期における軍部の行動には批判的。もちろんそういった点は良し悪しあると思うが、個人的には良い点だと感じられた。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
とても良くできた歴史資料集。日本人が台湾を知るための一冊として非常に有益。
4.どのような人に推奨するか
台湾の歴史を知りたい人向け。だが、歴史家が扱う「歴史書」だと思って読むのはやめてね。