めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

ルイス・キャロル / 少女への手紙

少女への手紙 (平凡社ライブラリー)

少女への手紙 (平凡社ライブラリー)

ルイス・キャロル / 少女への手紙 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 図書館の面陳列特集で見かけたのと、先日『アリス展』に行ったところだったので。

2.内容

 2014年に平凡社から刊行。まず、本作は小説の類ではない。生涯で大小含め累計10万枚近い手紙を書いたというルイス・キャロル…本名:チャールズ・ラトウィジ・ドジソン、が憧憬の対象である少女たちに宛てた手紙の数々。高橋康也高橋迪(ユズルさんです)の訳。遊び心に溢れたドジソン氏の手紙を雰囲気も含めて翻訳したこと、ぱっと読んだだけでは分からない冗句の元ネタを逐一解説していることの2点について、訳者の2名には特に拍手を贈りたい。一番ガンバッテるなと思ったのが逆文節つづりの手紙で、これは[It was so nice that you give...]が[give you that nice so was it.]と言った調子で書かれているのだが、このヘンテコな文章をヘンテコなまま意味が通るように翻訳していた。これは大変だなぁ。
 キャロルは少女を愛していた。そこに性的なものがあったかどうかはさておき、少女とのコミュニケーションを楽しんでいた。後書きにもある通り、基本的に「少女への手紙」は目的がない、というか手紙のやり取りそのものが目的という節がある。それ故に手紙の内容は少女に向けたほぼ100%のエンターテインメントであり、ユーモアとジョークの塊。なお、手紙だけ見れば微笑ましいが、片や50~60の爺さん、片や10代の少女ということで、両親や教師から関係性を咎められることも少なくなかったようである。
 ルイス・キャロルではなく、チャールズ・ラトウィジ・ドジソンの人となりに迫れる作品となっている。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 手紙そのもののエンターテインメント性に加え、翻訳と解説で加点。いい訳本だよ。

4.どのような人に推奨するか

 『アリス』好きで、作者ルイス・キャロルに顔により迫りたい人に。