めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

Rush / Permanent Waves

Permanent Waves

Permanent Waves

  • アーティスト:Rush
  • 出版社/メーカー: Island / Mercury
  • 発売日: 1997/05/06
  • メディア: CD

カナダのロックバンド Rushの Permanent Wavesをレビュー。

1.作品を選んだ理由

 Rush全作シリーズだよ。

2.内容

 1979年リリースの7th。Mercuryからのデジタルリマスター盤。ジャケットは波(Wave)と、波打ったパーマ(Permanent)とがタイトルに掛かっている。  マイケル・シェンカーに甲高い歌い方はやめた方がいいよ、と言われたって本当か?行き過ぎた大曲主義からの揺り戻しがやや行われ、10分未満の楽曲が並ぶ。ただ、ここで聞ける楽曲はテクニックとポップさ、ロックとしてのエキサイトメントが高度に融合した素晴らしい楽曲だらけで、最高傑作とも言える大名盤。

1. The Spirit of Radio

 プリングを駆使した高速リフと複雑なタイミングでのリズム隊のユニゾン、そこからなだれ込むヘヴィリフを経て広がるどこまでも明るい空間とポップなメロディ。カンカカカンと鳴らされるライドシンバルはNeil Peartだなあととても思う。Rushの曲はラジオで流されないので5分以内の曲を作ったって本当だろうか?極めてポップなメロディを持ちながら、マリンバの活用や間奏の5拍子~ヘヴィリフへのリプライズからレゲエ風のパートと目まぐるしく変わる展開が素敵。最後のフレーズ『預言者の言葉はコンサートホールに書かれている…』の下りはSimon & Gerfunkelの『Sound of Silence』を捩ったもの。6曲目"Natural Science"にも現れる人間の高潔さ・勤勉さ(Integrity)がテーマだが、この歌詞ではラジオフレンドリーであることを皮肉っぽく歌っている。

2. Freewill

 6+7拍子を自然に聞かせるセンス、ポップなメロディ、間奏で行われる三者三様の激しいプレイ、からのややマイナー感のある哀愁のブリッジ…といいところしかない。どんなに不利な状況でも『自由意志』による選択は残っている。If you choose not to decide, but you still have made a choice...

3. Jacob's Laddder

 雨上がりの雲から差し込む陽光をヤコブの梯子と言うらしい。その様子を歌った半分以上がインストゥルメンタルの楽曲。変拍子で重厚な雰囲気のメロディを備えたイントロはまさに『Clouds prepare for battle in a dark and gloomying silence』と言った感じで、歌詞と音楽のとても共鳴している。中間のギターソロもAlexのエキゾチック趣味が感じられて最高。雲間から光が指して終わるかのようなエンディングも素晴らしい。 

4. Entre Nous

 フランス語でbetween usを意味するこのラインナップの中ではやや地味だが、複雑な拍子とポップさを持った佳曲。

5. Defferent Strings

 バラード的な雰囲気を湛えた静かな1曲。ギターのアルペジオに哀愁を感じる。この#4と#5はライブで全然やってなかったこともあり、やや存在感が薄い(他の曲が強すぎる説もある)

5.Natural Science

 3パートから成る組曲。前作までのファンタジーな世界観ではなく、タイトル通り自然と科学を通じた生物の営みを歌っている。この曲は大好きです。美しいギターコードに乗る幽玄なメロディ、歌詞『Wheels in Wheels in spiral array...』と歌われる通りの螺旋的な雰囲気を感じるアルペジオによるメインテーマによるpart1。7/8拍子を基調としたメタリックなPart2では疾走感のある演奏とストリングスがいい味を出している。ナチュラハーモニクスで構成されたギターソロが頭に残る。そして歌詞の面でも主題となるPart3では縦に揃ったリズムが展開され、最初のテーマでもあったNatureとScienceを通した人間のIntegrityを語る。ここの歌詞スゴイ好きなんだよな。『Art as Expression, not as maeket campaign will still capure our imigination』の下りなんて、きっと彼らが言いたかったことなのだろうなぁと。そしてメインテーマのコード進行に戻り、歌詞通り潮が引いていくようなエンディング。9分が短く感じる素晴らしい楽曲デス。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 うーんこれが最高傑作かもしれん。

4.どのような人に推奨するか

 Rushを聞こうと思った人なら必ずこのアルバムは聞いてくれ。変拍子・テクニカルといったキーワードが好きなプログレメタル民もきっと気に入ると思う。聞いて下さい。