めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

体験記:日本金融博物研究所 貨幣博物館 常設展(2019.11)

体験記シリーズ。日銀の貨幣博物館に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 別記事で書くが、目的は『辰野金吾日本銀行』展の方だった。

2.内容

 半蔵門線 三越前駅から徒歩でしばし歩いたところにある日銀本社、その別館が「貨幣博物館」として公開されている。最初日銀本店の方に行ってしまって、入口にしばし迷ってしまった。案内の看板は地味で堅苦しく入り口がわかりづらい。エントランスは警備員が常に立番をしており、さらに入館には手荷物検査・金属探知ゲートを通過する必要があるというセキュリティの高さ。博物館とは言え流石に銀行といったところ。入場料は無料。
 階段を上るとビデオによるイントロダクションがあったので折角なのでしばし鑑賞。貨幣の興りと日銀が出来る近代までの歩みを寸劇風に伝える短いもの。これをインプットとして、展示室内へ。なお室内は全て撮影禁止である。音声ガイドは展示室内を飛んでいるフリーWi-Fiに接続することで手持ちのスマートフォン等で申請なしに聞くことが可能。

 日本を中心とした貨幣の歴史を、現状最古の富本銭に始まり、鎌倉~室町~江戸を経て日本銀行が創設される現代までをかなり詳細なディスプレイで展示している。この貨幣の展示だけで30を超える展示台があり、それぞれに展示品(複製含む)とキャプションがついていてかなりのボリューム。平安時期に銅の不作からくる品質・信頼性の低下により貨幣が使われなくなり、その後中国(宋)からの渡来銭により再び貨幣経済が活性化していったというのは面白い。中国では材料となる鉱物が多く、特に宋は他の王朝と比べても群を抜いて貨幣を鋳造していたらしい(その数50億枚!明や清ではその1/10くらい)。
 その後も、貨幣は常に揺れ動く信頼性の中で活躍している。江戸幕府で貨幣の統一が図られたが、金の含有量(品位)の多寡で貨幣そのものの価値が変わる(低いものは嫌われ使われない)ということ、日本史で習った江戸幕府の財政改革(享保・寛政etc...)では貨幣の安定を図ろうと改鋳をしては失敗して…いった努力をしていたらしい。今での通用する日本語の語源が、この時期にあるというのも面白かった。「ツケ払い」は問屋が良くやっていた「掛け売り」で売り上げはいったん帳簿に付けておくだけにして、月末・年末にまとめて費用を回収するのでツケという。また、「びた一文」のびたは「鐚」と書き、簡単に言えば価値の低い悪貨のことを指す(必ずしもそうでない、というキャプションもあったが…)。うーん勉強になる&楽しい。
 その他にも貨幣を題材としたトピックスは沢山。当時の貨幣価値において1文・1両で何を買えたか?(物価の推移)や、一貫の貨幣がどれほどの重さであるか、外国紙幣に書かれた有名人、超インフレした外国紙幣(20世紀前半のドイツマルクや最近のジンバブエは有名だけど、WW2後もハンガリーもトンデモなインフレ紙幣作ってたの知らなった)、日本紙幣の肖像画変遷など。
 日本紙幣の肖像画1984年から夏目漱石新渡戸稲造福沢諭吉になった。自分はその前のお札(聖徳太子伊藤博文など)は殆ど見たことが無い。近くにいた年配の方々は「伊藤博文の1000円札が一番馴染み深い」と言っていた。2004年に野口英世樋口一葉が登場し(1万円は福沢のままだがデザインは変わっている)、2024年頃には北里柴三郎・津田梅子・渋沢栄一になるわけだ。ジェネレーションによって「自分の貨幣」って違うんだな。なお、2000円札は…。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 1フロアでそんなに広いわけではないのだが、展示品の数と解説のボリュームはスゴイ。

4.どのような人に推奨するか

 お金が好きな人、歴史が好きな人は是非。常設展+企画展が無料なので、吝嗇家の方も…。実際、お金がかからずにこういった歴史に触れることができるというのは教育観点で重要なことではないか。中学高校の課外授業などで訪れるのもいいと思います。

Ex.ギャラリー

展示室前

看板(わかりづらい)