三島由紀夫 / 金閣寺
- 作者:三島 由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
1.作品を選んだ理由
妻からのおススメ。
2.内容
1956年に『新潮』に連載されていた三島31歳の作品。新潮文庫。1950年に実際に起きた金閣寺への放火・消失事件を題材とした、フィクションストーリー。ノンフィクションではない、が舞台設定は事件そのまま。金閣寺が焼かれることは決まっていて、その犯人は京都出身の青年僧で、事件発生日も同じ。そこに至る過程と心の動きの描写がフィクションであり、本作で三島が表現しようとしているもの。作品は青年僧の主観による自叙伝的な体裁を成している。
物語の加速度を感じるのは、故郷舞鶴の海に対しながら『金閣を焼かねばならぬ』と決心してから。主人公は幼少時より吃音を抱え、家族も含めた人間関係に苦しみ、親の教育から金閣寺を不可触の美として捉えていた(金閣に支配されていたといってもいいのだろうか…)のだが、金閣寺を焼くと目的を定めてからの人生観の変わりようが凄い。作中後半、旧友柏木との会話に『この世界を変えるのは、ただ(己の)認識のみである』といった下りがある。金閣寺を焼くものとして認識し、そこに向かって計画を進める主人公の姿はある種の希望(破壊的な)に満ちている。一方、全ての準備が整い、さぁ後は着火のみという段になって主人公はそれを躊躇する…というよりそこまでの行為に満足しきってしまう。『私の永い周到な準備は、行為をしなくても良いという最後の認識のためではなかったか』と。史実の事件を知らずに読んでいたので、まさか焼くのをやめるのか?と思ったが、最終的には火を付けて燃え広がるところで物語は終了する。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
幅広い知識と豊かな語彙力による、美しい文章表現と哲学性。なんというか、頭いいんだなと思う。
4.どのような人に推奨するか
史実や時代背景もあるので、金閣寺放火事件のWikiなどもセットで読むことを推奨。独自性が強いので、何が好きな人に…とかはないが、純文学好きは読むと良いです。