めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

生田哲 / 脳と心をあやつる物質 微量物質のはたらきを探る

脳と心をあやつる物質―微量物質のはたらきをさぐる (ブルーバックス)

脳と心をあやつる物質―微量物質のはたらきをさぐる (ブルーバックス)

生田哲 / 脳と心をあやつる物質 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 最近お気に入りブルーバックスで、目について面白そうだったものを購入。

2.内容

 1999年に講談社ブルーバックスからのリリース。薬学博士による最新研究に基づいた本ということだが、現在からすると20年前。最新の研究も調べてみたい。
   人間の心は、神経細胞の間を流れる化学物質の種類と量によって決まる。その心の動きを物質の観点から語るのがこの本の試み。世間でもよく聞く脳内物質としてはアドレナリンやセロトニン、身近な物質としてはカフェインやミネラル等が代表的に登場するが、痛みを伝達するプロスタグランジンや快眠物質メラトニンなど、聞いたこともないような物質も多数登場する。
 全体的に横文字・カタカナ語がものすごく多く、化学式・構造式も頻出するので、拒否反応がある人もいるかもしれない。自分はベンゼン環(作中では「亀」と表現される)とか基とかさっぱり忘れていたので、この本を読み返しながら学習した!ベンゼン環というのはC6H6で示される芳香族化合物のことらしいですね。2個くっつくとナフタレンになったりするとか。脳と心に影響を及ぼすノルアドレナリンドーパミン等は、亀-C-C-N(ベンゼン環-炭素-炭素-窒素)を含む構造式である共通点があるなどといった、まさに化学の話が出てくる。個人的にはこういうパートこそ勉強になり面白く読める。薬物の受容と耐性、うつ病・不安障害等のメカニズムが化学的に書かれているので、なんだか納得感がある。
 この辺が面倒くさい人は、第4章の「身近な食べ物で脳と心に影響する物質」あたりを読むといい。朝食をなぜ食べる方がイイか、カフェインの効果や摂取量はどのようなものか、などが書いてあるよ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★★
 化学的で私は凄く好き。

4.どのような人に推奨するか

 薬学化学に興味のある人に。うつ病や不安障害等はテーマとしてあるものの、精神ケアや心理面に述べた本ではなく化学物質の観点から語るものなので、中学~高校レベルの化学知識が土台にあったほうが方が良いのだと思いますです。なくても読めます。